新しい糖尿病薬 マンジャロ
2025年10月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
糖尿病の治療は、この10年ほどで大きく進歩してきました。
たとえば、飲み薬の種類が増えたり、週に1回の注射薬(GLP-1製剤)が登場して、血糖値だけでなく体重や心臓・腎臓にも良い影響があることがわかってきています。
生活習慣の工夫は治療の基本ですが、それだけでは血糖値のコントロールがむずかしいこともあります。
そんなときに役立つ薬の選択肢が広がっており、その中でも最近「マンジャロ」という新しい薬が登場して注目されています。
今回は、このマンジャロについて、従来の薬との違いや働き方を、わかりやすくご紹介していきます。
【マンジャロとは】
マンジャロとは新しく発売された糖尿病の治療薬で、
週に1回、皮下に自己注射を行います。
インスリンの「ヒューマログ」でもおなじみのアメリカにあるイーライリリー社によって開発された「
インクレチン」といわれる
GIPとGLP-1が両方含まれている薬です。
日本国内では2型糖尿病に対する治療薬として2023年に承認された新しい薬剤ですが、特に肥満傾向があり、従来の薬で血糖管理が思わしくない方に適しています。

【従来の糖尿病薬との違い】
従来のGLP-1製剤といわれる糖尿病治療薬は「
GLP-1」のみに働きかけていました。
GLP-1受容体作動薬である「ビクトーザ」「オゼンピック」「リベルサス」は
血糖値を下げる薬としてスタートしましたが、今では血糖改善に加えて
心臓・腎臓の保護もあることから[
additional benefits 追加効果] が期待できる薬としての地位を確立しています。
そのため、2型糖尿病の患者さんの
長期的な健康にも役に立っています。

そして、新薬である「マンジャロ」は「
GLP-1」のみでなく「
GIP」にも作用することが特徴です。この2つの作用により、
より強力な体重減少と
血糖値の改善を見せて驚くほどの効果を見せています。
GLP-1と
GIPは合わせて
インクレチンと呼ばれています。
【インクレチンとは】
インクレチンは、
食べ物を消化する腸から出るホルモンです。
食事をしたり、糖分のある飲み物を口にすると腸からインクレチンが分泌されて、血糖値を下げる働きのあるインスリンを出す膵臓のβ細胞に「そろそろインスリン出して」と伝えます。
食べるサインによって体が自然に血糖をコントロールできるように助けてくれるような仕組みです。

インクレチンとして今認められているのは
「
GLP-1=グルカゴン様ペプチド
」と
「
GIP=グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
」の2つです。
【GLP-1とGIPって、なにが違うの?】
GLP-1とGIPは、どちらも「インクレチン」と呼ばれるホルモンです。
インクレチンは
食事をとったときに小腸から分泌されるホルモンで、膵臓に「インスリンを出して!」と伝え、食後の血糖値の上昇を抑える大切な役割を持っています。
● GLP-1の特徴
・膵臓のβ細胞に働き、
インスリン分泌を促す
・膵臓のα細胞に作用し、
グルカゴン(血糖を上げるホルモン)を抑える
・胃の動きをゆっくりにして、食後の血糖上昇を抑える
・脳の食欲中枢に働き、
食欲を抑える
そのため、ビクトーザ、オゼンピック、リベルサスなどのGLP-1製剤は、
血糖値を下げるだけでなく、体重減少効果も期待されています。
多くの臨床試験で、HbA1cを1〜1.5%ほど下げ、体重も3〜5kg減ることが確認されています。
●GIPの特徴
・同じく膵臓のβ細胞に作用して
インスリン分泌を促進
・脂肪細胞に働き、脂肪をためこむ
・骨や脳にも作用し、エネルギー代謝を調節する働きの可能性
・GIP
単体だと食欲を増進させるがGLPと合わさると食欲減退に働きかける
ただし、過去の研究では、2型糖尿病の人ではGIPのインスリン分泌促進効果が
かなり低下していることが分かっており、
「効果が弱い」「肥満を助長する可能性がある」として、長い間、
GLP-1ほどは研究されてきませんでした。
(参考:Nauck et al., Diabetologia. 1993; 36(8): 741–744)
【なぜGIPが今になって見直されているのか?】
近年の研究で、
GLP-1とGIPを組み合わせると、それぞれの効果が補い合い、より大きな効果が出ることがわかってきました。
GIP単体だと食欲増進させる働きがありますが、GLP1製剤と合わせることで食欲が抑えられます。
とくに、マンジャロの研究(SURPASSシリーズ)では、以下のような結果が報告されています
項目
|
GLP-1製剤
|
GLP-1+GIP薬
|
HbA1cの平均改善値
|
約 -1.9%
|
約 -2.6%
|
体重の平均減少量
|
約 -6kg
|
約 -11kg
|
吐き気などの副作用
|
ややあり
|
GIPの影響で軽減される傾向
|
・血糖値の改善
GLP-1製剤でもHbA1cは下がりますが、GLP-1+GIP薬ではさらに大きく、平均
約2.6%低下しました。(GLP-1製剤は
約1.9%)。
・体重減少効果
GLP-1製剤で
約6kg減少、GLP-1+GIP薬では
約11kg減少と効果が大きく示されました。
・副作用の違い
GLP-1製剤で多い吐き気は、GLP-1+GIP薬では GIPの作用で軽くなる傾向です。
このように、GIPはGLP-1と組み合わせることで、血糖値・体重・副作用の面でより良い効果を示すことがわかってきました。
かつてGIPは「効きにくい」「太りやすい」と思われていましたが、マンジャロの成果により “GLP-1と一緒なら有効” という新しい評価が広がっています。
【まとめ】
マンジャロは、GLP-1とGIPという2つのホルモンの働きを活かした新しい糖尿病治療薬で週1回の注射で、血糖値の改善と体重減少の両方に効果が期待できます。治療法は一人ひとりに合わせて選ぶことが大切ですので、気になる方は主治医にご相談ください。
2025-10-29 11:24:16
糖尿病の薬