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猪岡内科コラム

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週に150分! ~運動のすすめ~

週に150分! ~運動のすすめ~

週に150分! ~運動のすすめ~
 
2025年6月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
みなさんは毎日の運動習慣はありますか?
糖尿病治療の3本柱」は、「お薬・運動・食事」ですが、その中でもっとも実行されにくいといわれているのが運動です。
 
日本糖尿病学会のガイドラインでは「週150分以上の中等度の有酸素運動」が推奨されていますが、ほかの国ではどのような運動基準なのでしょうか?
アメリカ(ADA)を含む主要国・機関の糖尿病患者向けのガイドラインを比較して、「週に150分の有酸素運動」が進められている理由について考えてみました。
 
【2型糖尿病への各国の運動療法のガイドライン】
アメリカ:ADA(American Diabetes Association:アメリカ糖尿病学会)
  • 150分/週 以上の中等度〜高強度の心拍数が上がる有酸素運動で、その間隔は最低でも週3日以上、やらない日を2日以上空けない
  • 筋トレは2〜3日/週 程度を推奨
  • 長時間の座りっぱなしを避けて、30分に一度は軽い運動を挟む
 
 カナダ:Diabetes Canada(カナダ糖尿病協会)
  • 150分/週以上の中強度の有酸素運動
→理想は30分を週に5回だが、10分以上の運動にわけて積み重ねてもOK
  • 筋トレは2~3日以上/週 程度を推奨
  • 長時間の座りっぱなしを避けて、30分に一度は軽い運動を挟む
 
オーストラリア:Diabetes Australia(糖尿病協会)
  • 150〜300分/週の中等度の有酸素運動(速歩、サイクリング水泳)、または75〜150分/週の高強度運動(ジョギング、エアロビクス、早いサイクリング)
  • 筋トレは2~3日以上/週 程度を推奨
  • 長時間の座りっぱなしを避け、30分に一度は軽い運動を挟む
 
 WHO(世界保健機関)
  • 中等度運動150〜300分/週 または、高強度運動75〜150分/週
  • 筋トレは2日以上/週
 
表にまとめてみます。
各国の糖尿病への運動療法のガイドライン
国・機関
 
有酸素運動
 
筋トレ
 
日本(JDS)
 
150分/週以上(中強度)
 
週2~3回
 
アメリカ(ADA)
 
150分/週(中強度)
 
週2〜3回
 
カナダ
 
150分/週(中強度)
 
週2〜3回
 
オーストラリア
 
150〜300分/週(中強度)
または
75〜150分/週(高強度)
 
週2~3回
 
WHO
 
150〜300分/週(中等度)
 
週2回以上
 
 
 
このように主要な国ではほぼ共通して、「週に150分の運動」と「筋肉トレーニング」が推奨されていますが、「週に150分の有酸素運動」が推奨されている理由には以下のような科学的・実証的な理由があります。
 
【アメリカの糖尿病予防プログラム】
2002年のDPP試験 (U.S Diabetes Prevention Program 糖尿病予防プログラム)は「150分/週の有酸素運動」の有効性を初めて明確に示したランダム比較試験です。
●試験の概要
糖尿病の遺伝がありBMI平均34、糖尿病予備軍の参加者が
1. 生活習慣改善グループ(食事・150分の有酸素運動)
2. メトホルミン投与グループ(薬物治療)
3. プラセボグループ  
の3つのグループに分けられてそれぞれ、1のグループには運動食事の生活指導(内容は後述します)、2のグループにはメトホルミンの薬物治療をしたときに、プラセボ群と比較してどの程度2糖尿病の発症を予防できるかを比較した試験です。
                                                                                          
●試験結果
糖尿病発症率の比較結果を表にします。
 
 
糖尿病発症率
 
生活習慣改善グループ
 
4.8%
 
薬物治療投与グループ
 
7.8
 
プラセボグループ
 
11.0%
 
「150分の有酸素運動を取り入れたり食事を改善した生活習慣改善グループ」が最も糖尿病予防に効果的であることが判明しました。
 
●結果の考察
  • 生活習慣改善グループは、プラセボ群と比較して糖尿病発症率を58%低下させて優れた予防効果を示しました。
  • メトホルミン投与グループは比較して糖尿病発症率が31%低下し、生活習慣病改善グループには及ばなかったものの、「若年層、BMIが高い人」ではより顕著な効果が見られたことから、個別に合わせた治療という面で一定の価値が期待されます。
 
また、その後「生活習慣の改善は長期的な効果があるのか」を調べたDPPの延長試験のDPPOS(DPP Outcomes Study)では
「生活習慣改善を持続している群」では糖尿病の発症予防のみならず、糖尿病の合併症のリスクも減っていることが確認されました。
(15年にわたり追跡されて現在も追跡中です)
 
【生活習慣改善群での介入内容】
実際の介入内容では「6か月で体重の7%減らす」
「週に150分以上の中強度の運動をする」という現実的な目標を基準に、食事指導、行動変容についての学習、個別サポートが行われ、平均 5.6kgの体重減少が達成されました
 
【それから】
ここから、複数の試験、メタ解析によっても裏付けされて、アメリカ糖尿病学会(ADA)が2006年の糖尿病のガイドライン(Standard of Medical Care in Diabetes)より「週に150分の中等度以上の有酸素運動」が推奨されました。
その後、研究が重ねられて各国のガイドラインの基礎となり、2019年より日本の糖尿病ガイドラインのでも「週に150分の有酸素運動」が推奨されています。
 
【中強度の運動とは?】
中強度の運動(moderate intensity exercise)とは「少し息が弾むけれど、会話はできる程度の運動」のことを指します。
 
歩く  → 普段よりやや早めのウォーキング
自転車 → 平地でのサイクリング、エアロバイク
家事  → 掃除機かけ、床拭きなどのやや息の上がる作業
軽登山 → なだらかなハイキング
ダンス → エアロビクス、リズム体操など
水中  → 水中ウォーキング、アクアビクス
 

【最後に】
長期的な生活習慣の改善はすごく効果的なことがわかりましたね。
糖尿病の治療は「薬物療法・運動療法・食事療法」の3本柱です。
「6か月で体重の7%減」 「週に150分以上の中強度の運動をする」を目標にまずは、1か月で2%の減量でも良いので小さな成功体験を大切にして
無理なく、楽しく、継続していけるようなペースをつかんでいきましょう。
 
 

2025-06-26 09:49:06

運動療法

 
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