体にいい油をとろう
~オメガ3系の相関~
2024年11月猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
前回は「体にいいあぶら」といわれているオメガ3系の中の「EPA・DHA」について、それらの含有量が多い魚を選ぶ時の共通点で
“青魚”がキーポイントになること、料理する過程でEPA・DHAがこぼれ落ちてしまうので、
調理法によって摂取できる割合が違うことついてまとめました。
今回は同じくオメガ3系に含まれる
「α-リノレン酸」についてEPA・DHAとの違いやその特徴について解説していきます。
【オメガ3系それぞれの特徴】
α-リノレン酸(ALA)
- 由来: 植物由来(亜麻仁油、えごま油などにふくまれる)
- 体内での役割:α-リノレン酸は体内でEPAやDHAに変換されますが、その変換率は低いです。
一般的に、ALAから
EPAへの変換率は約5-10%、DHAへの変換率はさらに低く、1-5%程度とされています。
エイコサペンタエン酸(EPA)
- 由来: 魚油(青魚に多く含まれる)
- 体内での役割:血液をサラサラにし、血栓を予防する効果が高いです。
- 効果:心血管系の健康維持、抗炎症作用が期待できます。
ドコサヘキサエン酸(DHA)
- 由来: 魚油(青魚に多く含まれる)
- 体内での役割:脳神経系の健康維持に重要で、脳の発育や認知機能の向上に寄与します。
- 効果:記憶力向上、認知症予防に効果が期待できます。
【EPA DHAの特徴】
脳への働きはDHAが、血小板凝集効果はEPAがそれぞれ得意としています。EPAは、脳血液関門といわれる、脳への入り口を通り抜ける事ができません。しかしDHAにはそれが可能で、
神経細胞の膜の材料になり、脳神経を活性化し、記憶力の向上などの効果が期待できます。
そのため、幼児期の脳の発達を促す段階や、更年期以降では脳の衰えを予防するために積極的に摂取することが望ましいです。
EPAは、血小板凝集抑制効果が非常に高く、心筋梗塞や、虚血性心疾患の予防効果が非常に高いといえます。DHAも効果は持っていますが、EPAほど高くはありません。
また、EPAは脳の血流を改善し、脳梗塞の発生を予防する効果があると期待されています。
【αリノレン酸の働き】
DHA・EPAは血液サラサラ効果のような似ている働きもある一方で、それぞれ得意とする部分が違っていましたが、同じオメガ3のαリノレン酸はどうなのでしょうか?
α-リノレン酸(ALA)がEPAやDHAに変換されない場合でも、体内でいくつかの重要な役割を果たしています。
・細胞膜の構成成分
・抗酸化作用
・抗炎症作用
【オメガ3とオメガ6の相関】
オメガ3の脂肪酸とオメガ6の脂肪酸の比較で有名な図があります。
印刷で不鮮明になってしまう部分もありますが、
こちらの表のキーワードはオメガ3ファミリー(αリノレン酸、EPA、DHA)
オメガ6ファミリー(リノール酸、アラキドン酸)です。
こちらの図での要点は2つあります。
・α‐リノレン酸は体内で5つの反応をしながら、その中の1割くらいがEPA DHAとなる。
図の左側、オメガ3の場合α-リノレン酸からスタート、オメガ6の場合はリノール酸からスタートし一番下のDHA、どこサペンタエン酸まで5つの反応があります。
・α-リノレン酸とリノール酸からスタートする5つの反応は、全過程で同じ酵素が関与する。
図の真ん中にあるように、α-リノレン酸とリノール酸は、同じ酵素によって炭素数と二重結合の数を増やします。
5つの反応は、炭素の二重結合をつくる
デサチュラーゼ(desaturase)と、炭素数を2個伸ばす
エロンガーゼ(elongase)という酵素によって進みます。
desaturaseは、不飽和化するという意味です。
二重結合を作る→炭素を2個増やす→二重結合を作る→炭素数を2個増やす→二重結合を作る
炭素数18のα-リノレン酸は5つの酵素反応によって、二重結合を3つ増やし、炭素数を4個増やします。この反応で最終的にEPAとDHAができます。
【あぶらのバランスは大切】
現代の食生活は、
リノール酸ばかりとっているといわれます。すると一番上の図で右側の反応ばかり進んでしまいます。
しかし、もし、
α-リノレン酸があれば、同じ反応に使われることになり、バランスを取ることができるでしょう。
リノール酸をとり過ぎると、炭素数20の
アラキドン酸がたくさんできることになり、
アラキドン酸から炎症に関係があるプロスタグランジンがたくさんできることが問題だといわれています。
α-リノレン酸からの変換でアラキドン酸に対応しているのは、上の図を見ていただくとよく分かりますが、炭素数20の
EPAです。
プロスタグランジンは、アラキドン酸からだけでなく、EPAからも同じようにできます。
アラキドン酸から作られるプロスタグランジンが問題になるのは、炎症をひどくする働きをするからです。一方、EPAからできるプロスタグランジンは、逆に炎症を抑える働きがあります。
当院では、年に一度の動脈硬化時に行う血液検査でも
「EPA/AA比」というEPAとアラキドン酸(AA)の比をチェックしてバランスを見ています。
2024-11-15 13:34:31