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イヌイットに学ぶオメガ3

イヌイットに学ぶオメガ3

 

イヌイットに学ぶオメガ3
2024年9月 
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
先月号では「体にいい油」=オメガ3があり、その中には魚の油の成分であるEPA,DHAとアマニ油やえごま油に含まれるαリノレン酸があるという内容でした。
今回はオメガ3のルーツについて深堀していきましょう。
 
【オメガ3の歴史】
オメガ3の重要性がわかってきたのは、寒い地方に住むイヌイットの食生活からでした。
 
以前、オランダやイギリスの研究者JørnDyerbergたちは、イヌイットは
「世界一脂肪の多い食事をしているのに、なぜ心臓病にならないのか」
首をひねっていました。
そこで1976年、研究者たちは、グリーンランドの僻地に住むイヌイットの調査に出かけました。
すると、彼らは依然として脂肪の多い伝統的な食事をしていました。
 
1年のほとんどが氷に覆われている北極地方では、
現代のように交通機関が発達する前の食事は“冷たい海の魚、アザラシ、セイウチ、シロクマの生肉”でした。

 
氷の世界ですから、穀物や野菜はありませんでした。
このような脂の多い食生活をしているイヌイットの人々は、なぜか現代の生活習慣病と言われる糖尿病、高脂血症、動脈硬化などはほとんどなく、心筋梗塞や脳梗塞にかかることはあまりなかったようです。
 
【イヌイットの血液中にはオメガ3(EPA/DHA)が多かった】
その後の研究で、
「グリーンランドに住むイヌイットは心臓のトラブルが非常に少ない」けれど
「デンマークに移住したイヌイットでは、心臓系の病気がデンマーク人と同じくらいに増加していた」ことがわかりました。
 
動脈硬化の指標の一つに、「 EPA/AA比 」 というのがあります。
EPAは動脈硬化を抑制しますが、アラキドン酸(AA)は炎症を引き起こし、動脈硬化を促進するように働きます。
 
そこで両者の血液を調べてみると、グリーンランドの先住民では、EPAがアラキドン酸とほとんど同じ比率(0.94)であったのに対し、デンマークに移住した先住民ではEPAの割合が極端に少なくなっており(0.1)、このことが原因で、心臓のトラブルが激増していたことが確認されました。

 
この違いは、グリーンランドではアザラシやセイウチなどの海獣の肉を食べているのに対し、デンマークでは豚肉や牛肉などの欧米型の食事をしているということだったのです。
 
イヌイットが食べていた“冷たい海にすむ魚” “アザラシ” “セイウチ”は多価不飽和脂肪酸オメガ3の脂肪(EPAやDHA)が豊富でした。
これらの脂肪は海の生物、魚や海獣の細胞膜を透過性の高くして、体の組織を柔軟にし、さらに体温調節機能のために役立っています。
これはグリーンランドのような冷たい海では海の生物に必須の要素なのです。
【日本では】
日本でのEPA/AA比 の平均は次に示す表のようになっています。

比較的魚を食べている年代ではEPA/AA比の平均値は0.61となっていますが、食生活の欧米化が気になる30代ではEPA/AA比の平均は0.27と低く出ています。
当院では年に一度の動脈硬化の検査の時に、動脈硬化が進行している方は脂肪酸を測定しています。


動脈硬化の治療で処方される薬剤の“EPA製剤”ですが、
その薬の効きがいいとされるEPA/AA比は0.62以上といわれています。
 
J-STAGEの頸動脈にプラークのある患者さんを対象にした研究では、EPA/AAが0.4以下になると血種優位な不安定プラークとなり、EPA内服するとこの血種が改善されたという結果から、EPAはプラーク内出血に有効といわれています
また、他の研究でもスタチン系のコレステロール製剤を内服していてLDLコレステロール値は十分下がったけれど、それでも心疾患にかかってしまった患者さんはEPA製剤にによるEPA/AA比の介入を推奨されています。
今とても注目されているEPA/AA比なので、一度ご自身の結果を確認してみましょう。
 
【日本でいい油をとるには】
オメガ3の脂肪酸は、民族や年齢に関係なくすぐに身体の組織の中に取り込まれることが研究でわかっています。


厚生労働省によるDHA・EPAの1日の摂取量目安は「1000mg」と記されています。
国民栄養・健康調査をもとに「EPA・DHAの男女・世代別の平均摂取量」をグラフ化にしてみました。
 
【日本人のEPA DHA平均摂取量】
その結果は、どの世代も“1000㎎”未満で目標達成しておりませんでした。

男女比で比べてみると、どの世代においても男性の方が女性よりも摂取できていました。
どの世代が多く摂取できているか?については、前のページの図で示した「EPA/AA比」の結果に比例するように、70歳以上の平均摂取量が高いという結果でした。
「高齢者のほうが魚を多く食べている」世間のイメージはそのまま数字で反映されていすことがわかります。
 
どの世代においても、意識的に体にいい油を摂取することが大切ですが、
日本でオメガ3系の体にいい油をとるにはどの方な方法があるのでしょうか。
 
  • 青魚をたべること
  • いい油をとること
  • サプリで補充すること が考えられます。
具体的な食事からの摂取方法については次回詳しくまとめます。
 
 

2024-08-15 10:45:55

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