アメリカの動脈硬化の基準について
~血圧のコントロール②編~
2024年7月 猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
先月は「
Cardiovascular Disease and Risk Management: Standards of Care in Diabetes—2024」「
糖尿病患者における心血管疾患(ASCVD)のリスク管理」
の高血圧の部分の定義や治療目標についてお話ししました。
今月はこちらの表に示すように
高血圧薬のコントロールの方針や血圧を下げる働きが認められている食事療法の
DASH食について紹介します。
当院の薬剤
ACE阻害薬:タナトリル、チバセン、コバシル、レニベース
ARB:イルベサルタン、アジルサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン
CCBカルシウム拮抗薬:アムロジピン、アテレック、ヘルベッサーR,
利尿剤:ラシックス、ナトリックス、アルダクトンA、アゾセミド
β遮断薬:アロチノロール、カルベジロール、セレクトール、テノーミン、
ARNI:エンレスト
配合薬 アムバロ、アテディオ、カムシア、テラムロ、バルヒディオ、レザルタス
前のページの表をもとに療の過程について説明していきます。
【治療開始】
●
血圧が ≥120 / 80 mmHg以上の方
まずは、生活習慣の見直しをします。
塩分摂取量の見直し、定期的な運動の取り組み、必要な方は禁煙しましょう。
定期的に自宅血圧を測定して日々の血圧の変化をみてみましょう。
●血圧が ≥130 / 80 mmHg以上の方
上記の生活習慣の改善に加えてまずは
1つの薬から薬物療法がすすめられます。
●血圧が ≥150/90 mmHg以上の方
生活習慣の改善に加えて
薬の種類を組み合わせた治療法がすすめられます。
Multiple-Drug Therapy=多剤併用療法と呼ばれるものですが、
特に血圧が高い方、糖尿病性腎症の方は血圧目標を達成するために2剤以上の薬を組み合わせて治療することがよくあります。
次に薬の選び方についてです。
●糖尿病の方、冠動脈疾患、尿微量アルブミンのある方
糖尿病や冠動脈疾患がある方、微量アルブミン尿が出ている方は、
第一選択治療薬として
ACE阻害薬、ARBが推奨されています。
当院で取り扱いの薬剤は上記青色に示しているので参照してください。
ACE阻害薬、ARB製剤は心筋梗塞などの心臓のイベントリスクを減らすことが実証され、進行性の腎臓病を抑えることが期待されています。
●定期的な血圧の評価と副作用の確認。
血圧が治療目標の ≥130 / 80 mmHgに到達した方は今の治療を続けましょう。
目標に到達しない方は、カルシウム拮抗薬や利尿剤などほかの薬剤の追加を考えます。
めまい、ふらつきなどの副作用のある場合には薬を変更することを考えます。
【DASH食】
DASH食(
Dietary Approaches to Stop Hypertension =高血圧を防ぐ食事療法)
の略語でアメリカで行われた調査・研究からまとめられた
血圧の改善に効果のある食事療法です。この食事療法で収縮期血圧10mmHg、拡張期血圧5mmHg下がったという効果が確認されています。
DASH食のポイント
脂肪の多い肉類、全脂肪乳製品、砂糖、お菓子、ナトリウム
具体的には
肉類から魚類に切り替えて「不飽和脂肪酸」を増やし、
低脂肪の肉と低脂肪の乳製品をとることにより「飽和脂肪酸」の脂肪摂取を減らします。不飽和脂肪酸のEPAやDHAはマグロ、サンマ、サバなどに多く含まれます。
- 意識して摂取する食べ物
- 、果物、全粒穀物、低脂肪の乳製品、魚、鶏肉、豆、ナッツ、種子、植物油
ナトリウムを排出する働きのある「カリウム」をはじめ、カルシウム、マグネシウムのミネラルを含む果物、食物繊維を多くとることで血圧を下げる効果が期待できます。
これらのミネラルにはそれぞれ異なった血圧を下げる働きがあります。
油についてはオメガ3系が多く含まれるえごま油、アマニ油がお勧めです。
血圧を下げる効果のある“α-リノレン酸”が多く含まれています。過熱に弱く、酸化しやすいため小さいものを選ぶと良いです。
血圧を下げる働きがあるといわれている食品を1つではなく、組み合わせることにより効果的に血圧を下げると考えられています。
「DASH食」は日本高血圧学会の治療ガイドにも掲載されています。
アメリカと日本では体質や食文化の違いはありますが、血圧に良い食品は共通した面が多くありDASH食は日本人でも応用できます。
血圧が気になる方は、DASH食で紹介した食材を意識してみましょう。
2024-08-15 09:56:22
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017