糖尿病学会より日本人における2型糖尿病のアルゴリズム⑦
~欧米での糖尿病の治療方針~
糖尿病療養指導士
2023年12月
猪岡内科中村郁恵
いままでの欧米での糖尿病治療と今回改定された点についてまとめていきます。
【欧米での糖尿病治療方針】
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いままでの欧米での一般的な治療法としては、欧米人の肥満2 型糖尿病の多くはインスリン抵抗性が主な病態であったため、糖尿病特有の合併症の予防や、動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞、体重への影響や低血糖のリスク、安価であることを踏まえて、インスリン抵抗性改善薬である
“メトホルミン”が第一選択薬として強く推奨されてきました。
2022年の米国糖尿病学会(ADA)Standards of Medical Care in Diabetesの改定では、
「第一選択となる治療は基本的にはメトホルミンと生活習慣の改善が含まれますが、動脈硬化の進行例や、心不全、慢性腎臓病を合併して患っている例ではメトホルミンに加えて、またはメトホルミンの代わりにGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害剤を使用することが推奨されている」と改定がありました。
今回の改定では下の図のようにメトホルミン一押しの治療法から、個人個人の動脈硬化や心不全、慢性腎不全の合併症の状態を見て
GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害剤を併用するような治療に変化しつつあります。
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第一選択薬は一般にはメトホルミンでかわりありませんが、SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬の合併症抑制のエビデンスの急増に伴い、推奨順位・条件が変わっています。
今回は、動脈硬化性疾患(ASCVD)/心不全(HF)/慢性腎臓病(CKD)を合併している患者さんではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬が第一選択薬のオプションとして投与推奨されるようになました。
メトホルミンは第一選択から外されたわけではなく、糖尿病診断時から生活スタイルの改善とともに、一般に投与することが推奨さています。
第一選択薬候補がメトホルミン単独から3剤になり、患者中心アプローチがいっそう重視されています。
動脈硬化性疾患、心不全、慢性腎臓病の合併症をあわせ持つ患者さん以外では、低血糖リスク・体重管理・医療費の重要性を主軸に適切な選択をすることが今回も推奨されています。
当院で扱っているGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害剤を表にしました。
【まとめ】
今回、ADAの報告を見ると、しっかりと患者さんの合併症や様々な要因を把握しての治療がさらに重要であることがわかります。
今までは、安価であり、血糖効果作用の他にがんや認知症の予防などに有用なメトホルミン製剤の使用が第一選択とされていました。
今回の表を見ると、「FIRST-LINE THERAPY」の次に来るものは,動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)合併あるいは高リスク状態、心不全(HF)、慢性腎臓病(CKD)の有無になっています。
これらがあれば,GLP-1受容体作動薬あるいはSGLT2阻害薬が,HbA1cやメトホルミン使用の有無にかかわらず推奨されています。
ここで、わかるようにしっかりと初期においても患者さんの評価を行うことが大切です。
次に注射薬についてです。
注射薬についての選択順位は変わりありません。
注射薬を導入する場合は、心血管疾患エビデンス・体重減少作用・低血糖小リスクを基に、前回と同様に
インスリンよりもGLP-1受容体作動薬を優先することが推奨されています。
また、基礎インスリン過剰使用への注意も引き続き促されています。
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運動習慣の見直しや食生活の改善などの生活習慣の改善を行ったうえで、GLP-1製剤を使用していてもHbA1cが目標値以上になったしまう場合は、基礎インスリンを追加することを検討します。
それでもHbA1cが目標以上になってしまう場合は即効型インスリンの導入を検討してHbA1cが目標クリアできるように目指していきます。
2023-12-16 16:19:43