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糖尿病学会より日本人における2型糖尿病のアルゴリズム②

糖尿病学会より日本人における2型糖尿病のアルゴリズム②

糖尿病学会より日本人における2型糖尿病のアルゴリズム②
2023年7月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
前回はアルゴリズム作成の背景や、日本の糖尿病研究の結果について熊本スタディやJ-DOIT3についてお話ししました。
日本人向けに糖尿病のアルゴリズムが作られた背景について欧米人と日本人の違いについても述べられていたので、今月はそれを解説するうえで必要な基礎的な糖の流れとインスリンの働きについて説明します。
 
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンでその分泌には基礎分泌追加分泌の2種類あります。
【インスリンの基礎分泌】
基礎分泌とは下の図参照のように、空腹時の血糖値を正常域(おおよそ70-110㎎/dlの範囲)に保つために常に分泌されているものです。
●空腹時寝ているときのインスリンの働き


肝臓からのブドウ糖の供給と脳や全身の細胞での消費がつり合い血糖値は70-110㎎/dlの範囲に保たれています。膵臓からは常に少量のインスリン基礎分泌がされています。
【インスリンの追加分泌】
追加分泌とは食事により上昇した血糖値を低下させるために分泌されるものです。ブドウ糖が細胞の中に取り込まれるのはインスリンの作用によります。
 食事をすると小腸から栄養素が取り込まれ門脈という血管に流れ込みます。栄養素の中でもごはん、パン、うどんなどに多く含まれる炭水化物がブドウ糖に分解されて血糖値が上がります。
血中のブドウ糖が増加すると、それを感知した膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞からただちにインスリンの追加分泌が起こります。そして門脈中のインスリン量がふえて肝臓のブドウ糖の取り込みが増加し、肝臓の中でグリコーゲンに変化して蓄えられます。
●食事をした時のインスリンの働き

食事をして炭水化物がブドウ糖に分解されると小腸で吸収されて血液に入り血糖値が上がります。そうするとインスリンの追加分泌が起こります。
インスリンの作用で肝臓にブドウ糖が取り込まれ、グリコーゲンとして蓄えられます。
肝臓に取り込み切れないブドウ糖は肝臓を通り抜けて血液中に流れます。それにより血糖値が上がり、さらにインスリンの追加分泌が起こります。
 
血液中のブドウ糖は、インスリンの働きで筋肉に入りエネルギーとして利用されたり、グリコーゲンとして貯蔵されたりします。同じくインスリンの働きで脂肪細胞に入り中性脂肪として貯蔵されたりします。
このようなことがスムーズに行われると血糖値は速やかに食前の値に戻ります。
 
すべてのブドウ糖が肝臓に取り込まれるわけではなく、一部のブドウ糖は肝臓を通り抜けて全身の血液中に流れて、インスリンの作用により筋肉や脂肪組織に取り込まれて、最終的に食事前の血糖値に戻ります。
 

このような糖の流れとインスリンの働きにより通常では血糖値は一定に保たれています。これらの過程でうまくインスリンが働かずに糖の取り込みができなくて高血糖になってしまった状態が糖尿病ですが、主な原因はインスリン分泌の低下や、インスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)の2つあります。
 
 
【インスリン分泌不全】
1型糖尿病の場合は、主に自己免疫(自分自身の細胞を異物として排除しようとしてしまう事)が原因で、インスリンを産生する膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が破壊され、インスリンの基礎分泌と追加分泌の両方が低下・消失しています。
 

 2型糖尿病の初期では、インスリンの基礎分泌は正常人と同様か、インスリン抵抗性のため軽度に増加しています。
そして、追加分泌の遅延や低下のために食後高血糖を生じています。
上がってしまった血糖値を正常域に戻そうとしてインスリンの分泌細胞に負担がかかります。それが、長く続くと膵臓のβ細胞が疲弊してしまい機能が落ちてきます。

そしてグラフに示すようにβ細胞機能が約50%程度に落ちた時点で2型糖尿病を発症します。その後、経過年数とともにインスリン分泌不全が進行していく過程をたどります。
 
【インスリン抵抗性】
インスリン抵抗性とは血液中にあるインスリンの濃度に見合ったインスリンの働きが得られない状態と定義されています。この原因としては、インスリンの作用を弱めるインスリン拮抗物質の存在や、インスリンを受け取る受容体の減少、インスリン受容体を介する細胞内への情報伝達能力が低下した状態などが考えられます。
インスリン抵抗性を引き起こしてしまう主な原因は、生活習慣です。肥満による内臓脂肪の増加や高脂肪食などによる筋肉・肝臓・脂肪組織でのインスリン感受性の低下、運動不足などがあります。インスリン抵抗性があるとインスリンを大量に分泌しないと血糖値が正常域まで低下しなくなります。

 
このようにインスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に過食、運動不足などの生活習慣、その結果としての肥満が環境因子 として加わりインスリン作用不足を生じて2 型糖尿病が発症します。
 
 
 

2023-11-10 12:46:05

 
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