インフルエンザのお話 10月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
2020年2021年、わが国ではインフルエンザの流行は驚くほどに落ち着いていました。
しかし、今年に入り、珍しく6月に東京の小学校でインフルエンザが流行し学級閉鎖が起きたことがありました。
一般的にインフルエンザウイルスは南半球と北半球の
寒くて乾燥している地域を中心に飛び回って流行します。

そのため、今年の冬、日本でのインフルエンザの流行を予測する上で南半球の流行状況はとても参考になります。
現在のオーストラリアの流行状況を見てみましょう。
【インフルエンザの流行状況】
オーストラリアでも2020年および2021年は、日本と同様にインフルエンザ患者は極めて少数でした。
しかし、今年は4月後半より報告数が増加し、例年を超えるレベルの患者数となっており、インフルエンザ+コロナウイルスによる医療の逼迫が問題となっているようです。
オーストラリアのインフルエンザの感染状況(2017-2022)について次ページにグラフを参照します。

上のグラフはオーストラリアのインフルエンザの感染者数を時系列で年度別に見たものです。
過去5年間の平均を表すグラフは
黄色で示されており、2021年、2020年は
水色、黄緑で南半球においてもインフルエンザは流行しなかったため平坦なグラフで示されています。
今年の感染状況を表す色は
赤色です。
2022年の感染状況を示す
赤色のグラフは
過去数年間よりも感染がはるかに早く始まり、勢いよくピークに達しました。
オーストラリアでは4月下旬に増加し始めて、その後、5月下旬にピークに達します。これを北半球の流行で示すと
10月下旬に増加し、11月下旬にピークに達するイメージです。
そして7月下旬までに、オーストラリアのインフルエンザシーズンはほとんど終わっていました。(これは北半球の1月下旬頃です。)
したがって、これらのデータに基づいて、インフルエンザの症例は2022年10月に増加し始め、2022年11月と12月にピークに達すると予想されます。
次ページからは、インフルエンザの流行に備えたワクチンの接種について変更になった点をお知らせします。
【ワクチンの同時接種が可能となりました】
日本では今までは予防接種の前後に2週間の間隔が必要でしたが、
令和4年7月22日開催より
新型コロナワクチンと
インフルエンザワクチンとの
同時接種が可能になりました。(下の図参照)

厚労省よりワクチン接種については、諸外国からの報告より単独で接種した場合と比較して、有効性や安全性が劣らない等の理由より可能となるようです。
以下に諸外国の結果を抜粋して記載します。
・イギリスからの報告では、新型コロナワクチンの追加接種(ファイザー、アストラゼネカ)
ワクチン単独接種と比べ、インフルエンザワクチンとの同時接種では、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価の有意差はありませんでした。
さらにファイザー社ワクチンとの同時接種においてインフルエンザの一部の株に対するHI抗体価の上昇が見られた。
・すべてのグループにおいて、ワクチン接種21日後の抗s IgG抗体価及び、
インフルエンザHI抗体価は単独接種群、混合接種群それぞれのグループと比較して同様であった。
・米国からのモデルナ+インフルエンザワクチンでも同様な結果となりました。
・副反応の発生状況について
接種後7日間に報告された局所副反応
同時接種群: 86.0% モデルナ単独: 91.3% インフルエンザ単独:61.8%
接種後7日間に報告された全身副反応
同時接種群: 80.0% モデルナ単独: 83.7% インフルエンザ単独:49.4%
新型コロナウイルスワクチン単独群とインフル+コロナ同時接種群では大きく差のないような副反応の報告でした。
・諸外国でのワクチン同時接種の推奨状況について
アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツでは新型コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が可能となっており、
国連でも両方のワクチンの接種率向上のため同時接種を可能とする基本方針が示されています。

また、日本ではインフルエンザワクチン以外の予防接種については、これまでと同様に片方のワクチンを受けてから2週間後に接種することが可能ですが、医師の判断により同時接種が可能です。
なお、緊急性のある創傷時の破傷風トキソイド等のワクチンは、例外として2週間を空けずに接種することが可能です。
当院でもインフルエンザワクチンの準備が整い次第、同時接種が可能となります。また、接種可能となる日時についてはホームページや院内掲示にてご案内いたします。
これから寒くなってきますので暖かくしてお過ごしください☕
2022-10-17 12:11:51
インフルエンザワクチンについて