熱中症について 8月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
暑い日が続きますね。
今年は熱中症の救急搬送がとても多い印象です。
6/27~7/3日までの熱中症の救急搬送者数は、昨年は1300人、今年は14353人でした。
今年は梅雨明けが早く、6月末より猛暑が続いているため
昨年と比較して約10倍の方々が救急搬送されており、これは過去最多の記録のようです。
今年の7月のある暑い日に実際に宇都宮市で起きた出来事です。
37.9度の熱があり、全身がしびれていて、手足にこむら返りのような硬直する感覚があった10代の女性は両親に付き添われて来院しました。
医師が診察した時には、全身がけいれんしており目はとろんとして、あまり意思疎通ができない状態でした。
この日は暑い日でしたが、10代の女性は、室内でエアコンを使わずに過ごしており、のどが渇いていなかったために水分をとらずに過ごしていました。
手足に若干しびれている感覚があると思いながらもあまり気にせずにいたら、徐々に悪化して両親が病院に連れてきたということです。
両親もぐったりしている娘をみで驚いてしまい、とっさの判断で水分を取らせることに気が回らなかったと話していました。
患者さんの症状のほかに「水分をとらずにいた」「暑い日にエアコンを使わずにいた」ということから、医師は、Ⅱ度~Ⅲ度の熱中症であることも考えました。
このような場合には、大至急点滴で水分や電解質や糖分の補給を行いますが、
脱水で血管が細くなっており、全身がけいれんしている状態で、一刻も早く点滴の針を入れなければならない、そして今の時代は発熱している患者さんに対しては防護服を着て接することが必須で、不自由な中で処置をするには熟練した医療技術が必要とされます。
今月は熱中症の実際と、水分補給について特集していきたいと思います。
【熱中症の起こる場所】
熱中症は屋外の熱い場所で起こるようなイメージがありますが、実
際に44%は住居で起こっています。
屋内でも部屋の温度や湿度の高さ、風通しの良さを適度に保つことは熱中症を予防するうえでとても大切です。

家の中での熱中症発症のリスクとなるものは、
エアコンを使わずにおり部屋の温度が上がってしまうこと、入浴や睡眠中に汗をかいて水分が失われてしまい、水分補給を忘れてしまう事などが考えられます。
失われる水分の量について。
・入浴により800mlの水分が失われます。(41度のお風呂に15分入浴後30分安静時)
入浴の前後に最低でもコップ1杯ずつ水分を補給しましょう。
・呼気や皮膚から失われる水分の量(不感蒸泄)は、体重60kgの人が平熱、室温28℃の環境で1日に約900mlで、体温が1度上昇すると約15%増加すると言われています。
【水分補給で気を付けるポイント】
普段の水分補給と運動などをして汗をかいているときでは摂取するドリンクの種類を変えましょう。
〇日常生活時
のどが渇いていなくても定期的に水分をとるように心がけましょう。
一日の水分補給量は体重や年齢によって違いますので厚生労働省より出ている以下の計算式を参考にしてみてください。

例えば
60歳 50kgの方→60×30=1800ml 水分摂取量は1800mlです。
25歳70kgの方 70×40=2800ml 水分摂取量は2800mlです。
これらの水分を3回の食事や水分摂取からとることを目安にしましょう。
体が一度の吸収できる水分量は
200-250mlと言われています。
コップ1杯程度の水分を1日に6-8回に分けてこまめに補給しましょう。
日常生活での水分補給に適している飲み物はお水や麦茶などです。
緑茶やビールには利尿作用があるため、水分補給には適していないため、冷たいお水や麦茶、ルイボスティーなどがおすすめです。
〇運動をして汗をかいた時
汗をかいた肌をなめると塩辛い味がすることからわかるように、汗にはナトリウムが含まれています。
大量に汗をかいてナトリウムが失われたとき、水だけを飲むと血液のナトリウム濃度が薄まり、これ以上ナトリウム濃度を下げないために
水を飲みたい気持ちではなくなります。
同時に余分な水分を尿として排泄します。これが自発的脱水症と呼ばれるもので、この状態になる前に塩分を含んだ水分をとることで防ぐことができます。
熱中症予防の水分補給として、日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだ飲料を推奨しています。特に1時間以上運動をする時は4~8%の糖質を含んだものを摂取しましょう。
スーパーに売っているイオン飲料や経口補水液の利用が手軽ですが、
自分で作ることもできます。

*飲みすぎ注意*糖尿病・高血圧
糖を含んだ飲料が推奨される理由としては、腸管での水分吸収を促進することが挙げられます。主要な糖であるブドウ糖は、腸管内でナトリウムが同時にあると速やかに吸収されます。そしてそれらに引っ張られ水分も吸収されるというのがそのメカニズムです。
高血圧や糖尿病の方は、普段はお水や麦茶を飲んで、「汗をかく運動をするときだけ」と決めてスポーツドリンクの補給をしましょう。
適時水分補給をして暑い夏を乗り切りましょう。
2022-08-09 11:36:41
熱中症