コロナウイルスの後遺症でわかっていること
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
新型コロナウイルスに感染した後、1ヶ月以上症状が続くことがあり「後遺症」と呼ばれています。
現時点で後遺症について分かっていることについてご紹介します。
【新型コロナの「後遺症」とは】
新型コロナに感染した人の中には、数週〜数ヶ月間に渡って様々な症状が続く方がいます。
これらは海外では「LONG COVID」「Post COVID」などと呼ばれていますが、日本国内では
「後遺症」と呼ばれることが多いです。
新型コロナ後遺症の定義は国内では定まったものはありませんが、
海外では
「発症から4週間たっても続く症状」を後遺症と定義しているものもあります。
【新型コロナ後遺症の原因は?】
新型コロナ後遺症が起こる原因についてはまだ多くが未解明です。
単一の病態ではなく、次に示す4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないかと考えられています。
(1) 肺、心臓への恒久的障害
(2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)
(3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome)
(4) 持続する新型コロナの症状
【新型コロナ後遺症の症状】
<画像引用>
新型コロナ後遺症の症状には、
発熱や咳などのある急性期から続く症状と、
経過の途中から出現する症状とがあります。
*呼吸器症状:咳、痰、息苦しさ、胸の痛み
*全身症状:倦怠感、関節痛、筋肉痛、しびれ
*精神・神経症状:記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ
*消化器症状:下痢、腹痛
*脱毛
*動悸
*味覚障害・嗅覚障害
などがあります。
その他、発症後から
6か月後まで脳梗塞、脳出血のリスクが高くなるともいわれています。
【新型コロナ後遺症の頻度】
診断後から退院時まで、3ヶ月後、6ヶ月後にみられた症状の頻度
(厚生労働科学研究より)
画像引用

新型コロナ後遺症の頻度は報告によってはばらつきがありますが、
慶応大学の報告によると、診断から
3ヶ月経過した後も1割以上の人にみられた症状は、
疲労感・倦怠感、息苦しさ、脱毛、嗅覚障害、筋力低下、睡眠障害、思考力・集中力の低下でした。
このうち
疲労感・倦怠感、息苦しさ、脱毛、睡眠障害、思考力・集中力の低下は6ヶ月後も1割以上の人に残っていました。
後遺症の持続期間については、
時間とともに少しづつ消失していくと考えられています。
中国の武漢市での1年調査は、
後遺症の症状が少なくとも1つのある人の割合は、6ヵ月後の68%から12ヵ月後の49%に減少していました。
一方で、
呼吸困難や不安・抑うつといった症状は6ヶ月後よりも12ヶ月後の方がわずかに増加しており、
症状によっては長期に続くものもあるようです。
後遺症の症状は、急性期に重症度が高かった人ほど長期に続くようです。
【後遺症はどんな人にみられやすいか】
イギリスの調査では、新型コロナに感染した4182人のうち558人
(13.3%)が28日以上、189人
(4.5%)が8週間以上、95人
(2.3%)が12週間以上にわたる症状が続いていました。
この調査では、後遺症は
・高齢者
・肥満
・女性
・発症時の症状が5つ以上ある
といった人で起こりやすいということが分かりました。
高齢者や肥満は新型コロナの重症化リスクでもありますが、
性別については男性の方が重症化しやすい一方で、女性では後遺症がみられやすいということになります。
【小児での新型コロナ後遺症】
小児でも新型コロナ後遺症が起こることはありますが、その頻度は大人と比べると低く、持続期間も短いと考えられています。
同じくイギリスの調査では、発症から28日後に症状が持続していたのはわずか4%、56日後では2%でした。
28日時点で最も多かった症状は、頭痛、疲労感、嗅覚障害で、長期化した症例の多くは小児の中でも年長児にみられました。
【おわりに】
新型コロナワクチンを2回接種して抗体獲得後、コロナに感染してしまう
いわゆる
“ブレイクスルー感染”では、発症から28日時点でも症状が続いている人の割合が減少していたと海外から報告されています。
新型コロナワクチンを接種しても感染してしまうことはありますが、後遺症が起こるリスクを下げることができるかもしれません。
長期戦になってきており、お顔の知らない友人が増えてきたこの頃ですが、みなさま引き続き、感染対策していきましょう。
、
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策をより一層遵守するようにしましょう。
2021-10-06 10:51:08
コロナウイルス