“痩せ菌”は本当にいる?
~最新研究で見えてきた腸内細菌のヒミツ~
2026年7月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
先日、糖尿病学会に参加してきました。
学会では「なるほど!」と思う内容がたくさんありましたので、これから少しずつ皆さんにもご紹介していきたいと思います。
第1弾のテーマは
「腸内細菌」 です。
みなさんは、
「同じような食事をしているのに、どうしてあの人は太りにくいんだろう?」
と思ったことはありませんか?
もちろん、体重には食事だけでなく、運動習慣や睡眠、ストレス、体温、お薬などさまざまな要因が関係しています。
しかし最近の研究では、それらに加えて
「腸内細菌」 も太りやすさや血糖値に関わっている可能性があることがわかってきました。
“腸の中にいる細菌の種類やバランスによって、太りやすさや血糖値の上がりやすさが変わるかもしれない”そんな研究が世界中で進んでいます。
【世界と日本の肥満率】
まずは世界の肥満率を見てみましょう。
アメリカでは約4割、イギリスやオーストラリアでは約3割の人が肥満とされています。
一方、日本の肥満率は約1割です。
近年は食生活の欧米化によって「日本人も太りやすくなった」と言われていますが、それでも世界的に見ると日本は肥満の少ない国に分類されます。
下の図は色の濃さと肥満度が比例している世界地図です。

国によって肥満率に大きな違いがある理由として、栄養や運動習慣、睡眠、文化的要素が知られています。
そして近年では、それらに加えて
「腸内細菌の違い」 も関係しているのではないかと考えられるようになってきました。
【海外で注目されている腸内細菌】
海外で特に注目されているのが、
「Akkermansia(アッカーマンシア)」という腸内細菌です。
オランダで発見された菌ですが、その後ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界中で研究が進められています。
ベルギーで行われた研究では、肥満やインスリン抵抗性のある人に
アッカーマンシアを投与したところ、インスリンの働きやコレステロール値に改善がみられ、体重にも変化がみられました。(-2.3㎏)
また2026年に報告された研究では、減量後にアッカーマンシアを摂取した人で体重のリバウンドが少なく、インスリン感受性も良好な傾向がみられました。
ただし、効果はなだらかで「飲めば痩せる」というほどの大きな減量効果が確認されているわけではありません。
現在は、代謝改善への可能性が期待され、欧米では健康食品やサプリメントとして実用化されています。
【アッカーマンシアが注目される理由】
アッカーマンシアは、肥満や糖尿病、脂肪肝、慢性炎症などとの関連が研究されている
「次世代の腸内細菌」のひとつです。
この菌の特徴は、腸の粘膜を守るバリアの
「ムチン」 と深く関わりながら生きていることです。

アッカーマンシアはこのムチンを利用しながら生きることで、腸内環境のバランス維持に関わっている可能性があります。
その結果として、
腸のバリア機能の維持、炎症の調節、代謝機能への関与
などが期待されています。
単に「腸の粘液を食べる菌」ではなく、
腸と共生しながら健康維持に関わる菌として注目されているのです。
ただ、
日本人でこの菌を多く持つ人は少なく、約10人に1人程度といわれています。
【日本人で注目されている腸内細菌】
日本人で注目されているのは
「Blautia(ブラウティア)」という腸内細菌です。
ブラウティアは
日本人の約9割が持っているとされ、健康な人の腸内によく見られる菌として知られています。
研究では、ブラウティアが多い人ほど肥満が少ない傾向が報告されています。
具体的には、腸内細菌全体に占めるブラウティアの割合は平均約3%とされています。食生活が乱れている人では1%以下まで減少することもありますが、健康的な人では約6%、食生活の改善によって7.5%程度まで増加したという報告もあります。
【ブラウディア菌が注目される理由】
注目されている理由は、食物繊維を利用して
短鎖脂肪酸 を作り出す働きにあります。
ブラウティアは、もち麦や大麦、野菜などの食物繊維を利用して増殖しますが、その際に作られるのが
酢酸などの短鎖脂肪酸 です。
以前は単なる代謝産物と考えられていた短鎖脂肪酸ですが、現在は
「腸の粘膜細胞のエネルギー源になる」「腸のバリア機能を保ち炎症を抑える」
「インスリン感受性や脂質代謝に関わる可能性がある」といった働きで、
健康維持に欠かせない物質として注目されています。
さらに、腸の神経やホルモンにも作用し、腸の動きを整える役割も期待されています。
【まとめ】
「この菌がいるだけで痩せる」という夢のようなお話ではありませんが、毎日の食事や運動の積み重ねによって少しずつ腸内環境が良くなる事がわかりました。
「腸内細菌で自分の健康のバロメータがわかる」という将来も近いかもしれません。
次回は腸内環境を整える食事についてまとめていきます。
2026-07-14 09:44:56
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