帯状疱疹
帯状疱疹ワクチンと認知症について②
2026年6月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
前回は「帯状疱疹と2種類の予防接種」についての概要をまとめたので、表にしてみたいと思います。
項目
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生ワクチン (Zostavax®)
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組換え不活化ワクチン (Shingrix®)
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ワクチンの中身
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弱くした生きたウイルス
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ウイルスの一部のみ(不活化)
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接種回数
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1回
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2回(2〜6か月間隔)
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接種対象
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健康で免疫力が十分な方
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高齢者でも安全
免疫力が弱くてもOK
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予防効果
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約50%
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約90%
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効果の持続
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約5年
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約10年以上
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認知症予防の可能性
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不明
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あり(Nature Medicine, 2024)
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副反応の目安
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軽い発熱・注射部位の赤みなどまれ
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注射部位の痛みや腫れ、発熱などあり、数日で治まることが多い
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自己負担
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2,500円(1回)
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6,500円×2回(合計約13,000円)
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※助成なし
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9500円(1回)
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22,000円×2回(合計約44,000円)
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※助成の対象外の方はこちらの価格です。対象年齢は4ページ目に記載あり。
生ワクチン
(Zostavax®)は、注射が1回で済む、自己負担は少ない。
組換え不活化ワクチン
(Shingrix®)は、予防効果や持続力が高く、
認知症予防効果が期待されているというメリットがそれぞれあります。
今回はその
「帯状疱疹ワクチンと認知症」について解説していきたいと思います。
【帯状疱疹ワクチンと認知症予防の関係性】
帯状疱疹の予防ワクチンとして知られる
組換え不活化ワクチン(Shingrix®)が、最近注目されているのは
認知症予防の可能性 です。
「帯状疱疹のワクチンで、どうして認知症?」と驚かれる方もいるかもしれません。ここでは最新の研究成果をわかりやすくまとめます。
2024年にイギリスの国際的に権威ある学術誌
『Nature Medicine』 に、
英オックスフォード大学などによる研究が掲載されました。
この研究では、米国の医療データをもとに「
新しい組換え不活化帯状疱疹ワクチン(Shingrix®)と認知症の関係」を調べています。
研究の結果、Shingrix®を接種した高齢者では、接種していない方に比べて
認知症の発症を遅らせられる可能性 があることが示されました。
【研究の概要】
対象:米国の
65歳以上、約20万人以上 の健康記録
期間:約
6年間 の追跡
比較:
Shingrix®を接種した人 vs. 古い生ワクチン(
Zostavax®)を接種した人
インフルエンザや破傷風などの他の高齢者向けワクチンとも比較
【研究結果】
- Shingrix®を接種したグループは、接種していない人に比べて「認知症になるまでの期間が長くなる傾向」がありました。
- 数値で表すと、 診断されるまでの時間が平均17%延びたと報告されており、「約半年ほど認知症の症状が出るのが遅れた」と報告されています。
- 男女とも傾向は見られましたが、特に女性の方が効果的でした。
- 他に比較したインフルエンザ、破傷風などの一般的なワクチンと比べても、Shingrix®の方が認知症発症リスク低下の傾向が強く出ていました。
さらに、その後の2026年、
幅広い科学分野を扱う国際ジャーナル
「Nature Communications」より新しい論文が発表されました。
【研究概要と結果】
米国の65歳以上の高齢者を対象に、
2回接種したShingrix®接種者約65,800人と、非接種者263,200人を比較した結果、
- 『Shingrix®を2回接種したグループは、非接種群に比べて認知症リスクが統計的に有意に約51%低かった』という結果が示されています。
- このリスク低下は性別・年齢・人種・民族の各グループで一貫して観察されましたが、前回と同じく特に女性でやや強い傾向がみられました。
- さらに、他のワクチンとの比較でも(破傷風・ジフテリア・百日咳混合ワクチン)、Shingrix®の方が認知症リスク低下の傾向が強いことが確認されています。
この研究は、
Shingrix®接種が認知症発症のリスク低下と関連している可能性を示していますが、まだ
因果関係の証明には至っていません。
【
Shingrix®の2つの研究をまとめ】
① 2024年では
認知症発症までの時間が延びる傾向(約17%延長)にある
② 2026年の大規模研究では、
Shingrix®接種者は非接種者と比べて認知症
リスクが約50%低いという別の形の有意な関連が見られました。
【注意点】
この研究では
「認知症発症を遅らせる可能性がある」 と示唆された段階であり「ワクチンを打ったから必ず認知症を防げる」という確定的な予防効果はありません。
研究者も、因果関係を確認するために 今後さらなる研究が必要だと指摘していますが、今の段階で「
どうしてこのような結果になるのか?」と考えられていることがあります。
【なぜShingrix®が認知症のリスク低下につながると考えられているか?】
帯状疱疹の原因である
水痘・帯状疱疹ウイルスは、一度感染すると体の神経に潜んで長く眠ったままになります。
しかし、加齢や病気などで
免疫力が低下すると再び活動を始めることがあります。このとき神経や脳に炎症を起こす可能性があり、これが認知機能の低下に関係しているのではないかと考えられています。
Shingrix®を接種することは、まず帯状疱疹を防ぐことにつながります。
それによって神経や脳への負担が減り、炎症が起こるリスクも下げられると考えられています。
さらに
Shingrix®にはアジュバントとよばれる
免疫反応を強める成分が含まれています。この成分は体の免疫を活性化し、神経系の健康や脳の健康にもプラスの影響を与える可能性が議論されています。
まとめると、
Shingrix®は
Shingrix®は帯状疱疹を予防するためのワクチンですが、神経や脳への影響を抑えることで、
認知症のリスクや発症を遅らせる可能性があると考えられています。
帯状疱疹ワクチン接種を検討する際に、こうした追加のメリットもお役に立てればと思います。
【宇都宮市の助成について】
宇都宮市で
65歳以上の市民を対象に帯状疱疹ワクチンの助成を行っています。
今年、
65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳…と節目の年齢の方を対象に
5月に市よりお知らせのハガキが届いたかと思います。
対象の方の自己負担額(宇都宮市の場合)
①生ワクチン(Zostavax®) → 自己負担:約
2,500円(1回のみ)
②不活化ワクチン(Shingrix®)→ 自己負担:約
13,000円(6,500円×2回)
不活化ワクチンは2回接種が必要なので、
1回目を年度内の1月までに受けないと、3月末までに完了できないことがある点に注意してください。
66歳、69歳などの方は対象の年齢になったら助成を受けられて上記の負担額で接種できますが、お急ぎの方は
全額自費接種(生ワクチン9500円、不活化ワクチン22,000円)でも受けることができます。
詳しいワクチンの助成についての窓口は「
宇都宮市の保健所・保健センター」にお問い合わせください。
【まとめ】
帯状疱疹を予防するためには2種類のワクチンがあります。
生ワクチン
Zostavax®は1回接種で費用が比較的安く、手軽に受けられます。
不活化ワクチン
Shingrix®は2回接種で費用は高めですが、予防効果が高く持続期間も長いことが特徴です。認知症リスク低下との関連も報告されています。
市からハガキが届いた方は助成対象として自己負担を抑えて接種できます。
迷われている方はお気軽に医師へ相談してくださいね。
2026-07-14 09:40:43
帯状疱疹とワクチンについて①
2026年5月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
季節の変わり目は、風邪などで体調を崩し、免疫力が低下しやすくなります。そんな時に注意したい病気の1つに、
帯状疱疹(たいじょうほうしん)があります。
高齢者向け(対象年齢あり)に
帯状疱疹の定期予防接種が始まり、
自治体より助成を受けられるようになりました。
今月は「帯状疱疹とワクチン」について、来月では「帯状疱疹ワクチンの研究でわかってきていること」を解説していきます。
【帯状疱疹とは?】
帯状疱疹とは小さいころにかかる
「水ぼうそう」と同じウイルスが原因で起こります。初めて感染した時には水ぼうそうとして発症します。
多くの人が子供のころにかかり、感染して熱がでると発疹が出て水ぶくれになりますが、1週間程度で治ります。
しかし、ウイルスは治った後も体の神経節といわれる部分に潜んでいます。
健康で免疫力が強い間はウイルスの活動が抑えられていますが、高齢になり、病気などによって免疫力が下がった時に、再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し「
帯状疱疹」として発症します。

【帯状疱疹の症状】
体の片側だけ、ピリピリとした痛みが数日続いた後に、赤い発疹がでて水ぶくれになります。
場所は
胸~背中わき腹にかけて発疹が出る方が多いですが、腰やお腹、お尻、目の周辺、首、肩などウイルスの潜んでいる神経節のあたりに症状が出るのが特徴です。
痛みの程度は人によりますが、高齢になると「電気が走るような」「焼けるような」「針で刺されるような」強い痛みが出てしまうこともあります。
中には痛みが残ってしまう方もいて、それは高齢になるほど痛みが続いてしまうといわれています。
【帯状疱疹の治療】
帯状疱疹は、
発疹が出てから 72時間以内に抗ウイルス薬を飲むことが大切です。
早い段階で治療を始めることで、症状の進行を抑え、痛みを軽くする効果が期待できます。
また、帯状疱疹では皮膚の症状が治ったあとも神経の痛みが残ってしまう
「帯状疱疹後神経痛」が問題になることがあるので、発症早期に治療を行うことで、この神経痛が残るリスクを減らすことにもつながります。
もしも、「
ピリピリする痛みのあとに片側だけ発疹が出てきた」場合には、
できるだけ早めに医療機関を受診してくださいね。
【発症の多い年代】
宮崎県のデータでは80歳までに3人に1人は帯状疱疹を発症するといわれています。
下のグラフのように50歳を超えると徐々に帯状疱疹を発症する人が増えてきて、60~70歳代ではさらに急増します。
これは、糖尿病や高血圧といった慢性疾患を持つ方が増えて、免疫力が落ちてくるためです。
宮崎県の皮膚科学会のデータより引用
【帯状疱疹の予防】
帯状疱疹を予防するには
予防接種が有効です。
そして、2025年から予防接種が「任意→定期接種」へと変わり各自治体から
助成が出るようになりました。(次号で解説します。)
帯状疱疹は高齢になるほど発症や合併症(特に帯状疱疹後神経痛)が増えるため自治体では対象年齢の方に対して
積極的に予防接種を受けることを推奨しています。
予防接種には2種類あるので、その違いについて解説していきます。
【帯状疱疹ワクチンの種類と特徴】
帯状疱疹の予防には①
生ワクチン(Zostavax®)、②
組換え不活化ワクチン(Shingrix®) の2種類のワクチンがあります。
①
生ワクチン(Zostavax®)
生ワクチンは、弱くした生きたウイルスを使って体に抗体を作らせるタイプのワクチンです。
健康で免疫力が十分な高齢者向けで、
1回の接種で済みます。
予防効果は約50%、効果は5年ほど続きますが、免疫力が低い方は接種できない場合があります。
②
組換え不活化ワクチン(Shingrix®)
一方、組換え不活化ワクチンは、ウイルスそのものは入っておらず、ウイルスの一部だけを使った新しいタイプのワクチンです。
高齢者でも安全に接種でき、
2回の接種(2〜6か月間隔)が必要です。
予防効果は90%、効果は10年以上続くといわれています。
生ワクチンより効果が強く、長持ちするのが特徴です。
また、最近の研究では、
認知症リスクを減らす可能性も報告されています。
(Nature Medicine, 2024 次回詳しくまとめます)。
【副反応について】
①
生ワクチン(Zostavax®)
生ワクチンは、
50~60%の方に接種部位の赤みや腫れ、痛み、かゆみが出ることがありますが、ほとんどの方は軽く、数日で治まります。
発熱や倦怠感などの全身症状は数%、重篤な副反応はまれです。
②
組換え不活化ワクチン(Shingrix®)
組換え不活化ワクチンは、接種部位の痛みや赤み、腫れ、かゆみは
70〜80%の方に見られます。
全身症状としては倦怠感、頭痛、発熱、寒気、関節痛などがあり、特に2回目の接種後は10%の方が感じています。しかし、これらは通常数日で治まり、日常生活に大きな影響はほとんどありません。
重篤な副反応はごく稀で高齢者や免疫力が弱い方でも安全に接種できます。
両方のワクチンに共通することは、副反応は
「ワクチンが体に反応して抗体を作っているサイン」と考えてOKで、ほとんどの症状は軽く、数日で改善します。
しかし、
接種後に症状が強く出た場合は、すぐに医療機関に相談してください
次号では
「帯状疱疹ワクチンと認知症の予防効果」について最新の研究と
自治体からの助成について詳しく解説していきます。
2026-05-07 09:41:03