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体内時計について① 3月号

体内時計について① 3月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
【体内時計】
地球の自転1回は約24時間(うるう年があるように厳密には23時間56分4秒)、私たち地球に住む生物は、それに合わせるように、だいたい毎日同じ時間に起きたり、食事をとったり、仕事をしたり、眠くなったりを決まったサイクルで過ごしています。
何となく過ごしていますが、きちんと“体内時計”を持ち合わせています。
今月はその、“体内時計”の中心である“時計遺伝子の歴史や起源”について触れていきます。
 
【ノーベル賞を受賞した時計遺伝子】
2017年10月2日、ノーベル医学・生理学賞に米ブランダイス大のジェフリー・ホール名誉教授とマイケル・ロスバッシュ教授、米ロックフェラー大のマイケル・ヤング教授の3名が選ばれました。
受賞理由は「時計遺伝子の発見」です。

時計遺伝子とは、「体内時計をコントロールするたんぱく質を作る遺伝子」です。


昔から詩人や哲学者などによって“時間”が表現されてきたように、
地球上の生物は、私たちを含めて動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物は“サーカディアンリズム(英:Circadian rhythm)“概日リズム(がいじつリズム)”と呼ばれる1日約24時間のリズムを刻む“体内時計”を有しています。
 
サーカディアンリズム(Circadian rhythm)の名前の由来は、
ラテン語の“約、概ね”を意味する“Circa”“日”を意味する“dies”からとられており、“概ね一日のリズム”という意味です。
 
その時計遺伝子が発見されるまでの歴史についてです。
【時計遺伝子発見の歴史】
ことの起こりは18世紀、フランスの天文学者であるドゥ・メランがオジギソウの葉が昼間は開き、日が落ちるとともに閉じることを不思議に思い、暗い場所にずっと置いたらどうなるか調べたところ、一定のリズムで葉を開いたり閉じたりすることを発見しました。これにより、植物に体内時計があることが示されました。


次に、1970年代、カルフォルニア大学の行動遺伝学を研究するベンザー博士は“行動”という高度な脳の機能も遺伝子が規定するのではないかと考えました。
そして、教え子であるコノプカ博士とともに、ショウジョウバエでの研究をしていたころ、体内時計が24時間よりも長い個体、短い個体、体内時計のコントロールがきかない個体などの突然変異した個体を探し出し、この遺伝子を突き止め、「period(周期)」と名づけました。
 
これにより、動物にも時計遺伝子があることが証明されます。
残念ながら、当時の技術では遺伝子の同定まで至りませんでしたが、
後の1984年、ジェフリー・ホール博士、マイケル・ロスバッシュ博士、マイケル・ヤング博士たちは、period遺伝子の同定に成功しました。
(同定:遺伝子を突き止めること)
これがのちに2017年にノーベル賞受賞へとつながります。
 
【概日リズムの起源】
少しサイエンスな話になりますが、概日リズムの起源をみてみましょう。
地球は太陽の周りを公転する惑星の1つで、太陽からは紫外線、可視光線、赤外線に分類される“太陽光線”が届きます。
地球自体も24時間1サイクルで自転しており、太陽光の届く昼間と、届かないを交互に過ごします。


私たち地球上の生物は、日々DNAを複製、修復しながら生活していますが、太陽からの“紫外線”の害を受けないために、太陽光の届かない夜にDNA複製をするように進化し、それが概日リズムの起源になっていると考えられています。
それは最も古い細胞に起源を持ち、現存するアカパンカビ(Neurospora)は、このような時計制御された複製機構を保有しています。
 
24時間の地球の自転により、太陽光を浴びて朝目覚めて活動を開始し、夜は睡眠をとって体の修復を行う。地球上で暮らす生物として、とても合理的な進化ですね。
 
前回は、睡眠の仕組みの1つ、睡眠恒常性維持機構の仕組みについてお話ししましたが、2つめの仕組み概日リズム機構による睡眠制御です。
これは毎日夜の一定時刻になると働き、睡眠を起こすという仕組みです。
 
【体内時計の仕組み①】
1月号の復習で、睡眠を起こさせる機構は2つあり、そのうちの1つである
“恒常性維持機構”では、ししおどしのように脳に疲れが溜まってくると恒常性を保とうとして眠くなるとお話しました。
 
もう1つの仕組みは、毎日のサイクルで夜になり“いつもの寝る時間になった”から眠くなるという仕組みは脳の奥にある“体内時計”が司っています。
 
哺乳類の体内時計は脳の視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)にあります。光を浴びると網膜から脳に信号が伝わり時計を調整しています。

体内時計のある視交叉上核は約20000個の神経細胞の働きにより、
夜になると体の内部体温を少しずつ下げ、そして代謝を全体的に下げ、血圧を下げ、体全体を休息に適した状態にさせていきます。こうした体内時計の作用によって私たちは夜の一定時刻になると、次第に眠たくなってくるわけです。

朝起きるのも体内時計の作用によります。
いつも起床する時刻の2時間前くらいになると、体内時計は体の内部体温が徐々に上げ、目覚める準備を始めます。そして、これが一定のレベルに達すると、私たちは目覚めるのです。
このように、体内時計は私たちが意識しないところで、地球の自転によりもたらされる24時間の明暗サイクルに合わせて時を刻んでおり、一定の時刻になったら睡眠を起こし、朝の一定の時刻になったら、目が覚ますというおよそ24時間のリズムを支えています。
 
来月はもう少し詳しく掘り下げていきます。
 
 

2021-03-30 09:41:24

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」12月号

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」12月号
 

猪岡内科       
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
個人差はありますが、人は一日のうちに6~8時間の睡眠をとり、人生の約1/3を眠って過ごします。
そんな睡眠について、今月号から連載させていただきます。
 
目が覚めるまでにウルトラディアンリズムと呼ばれる「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の約90分サイクルを4~5回交互に繰り返します。(下の下の表参照)

この中で、最も深く眠っているのが1周期目の「ノンレム睡眠」です。この最初の90分を「黄金の90分」と呼び、この熟睡モードは睡眠全体の質を向上させるためには重要です。
 
深いノンレム睡眠のときにあらわれる徐派睡眠(後で記述します)は恒温動物の特徴です。

人を含む哺乳類や鳥類は進化の過程で、体温を維持できる機構を獲得したことで脳の機能を安定して動かすことが出来るようになりました。
大脳皮質が発達した結果、レム睡眠ノンレム睡眠の双方が現れる真睡眠を獲得したと考えられています。
 
「ノンレム睡眠」「レム睡眠」の違いや特徴についてみていきましょう。
 
【レム睡眠】
レム睡眠は1953年にシカゴ大学のユージン・アセリンスキーと ナサニエル・クレイトマンによって発見されました。
眼球が活発に動くことより「急速眼球運動(Rapid Eye Movement= REM)」を略して「レム睡眠」と呼ばれています。
レム睡眠では心拍数、呼吸数は増加して不規則になり、呼吸は浅くなります。

レム睡眠の大きな役割は、体の休息、思考の整理、記憶の定着です。
筋肉は緩み、身体は全く動かない状態になりますが、脳は活動した状態でよく夢をみたりしています。

 レム睡眠のときの脳は積極的に動いており、記憶や感情などの情報を整理し、脳に定着させたり、いらない情報を消したりを効率よく行っています。
実際、この時の脳波は覚醒しているときに近い状態です。
 
同じ記憶学習を繰り返して行い、途中で睡眠をとらせる実験を行った結果、レム睡眠の割合が多いほうが、記憶していた割合も多いという結果もあるそうです。
レム睡眠は脳の発達や精神的な安定にも重要なため、特に成長期の子供は、睡眠時間をしっかりと確保しましょう
 
朝を迎えるにつれ、ノンレム睡眠とレム睡眠の睡眠時間は逆転し、睡眠の後半ではレム睡眠の時間が多くなります。

レム睡眠が増えていくことで、体も温まり、太陽の光と共に快適な目覚めを迎えられます。
 
【ノンレム睡眠】
急速眼球運動(Rapid Eye Movement= REM)を伴わない睡眠は、ノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement= Non REM)と呼ばれます。
ノンレム睡眠の大きな役割は脳の休息と成長ホルモンの分泌です。

下の図は起きている時~睡眠段階が深くなる時の脳波を示しています。

ノンレム睡眠はステージ1からステージ4までの4段階に分けられており、数字が大きくなるにつれて脳波は低い周波数で高振幅の徐派睡眠となっていきます。
ステージが上がるほど眠りは深く、大脳皮質の活動が低下して脳は休息状態となります。ノンレム睡眠は「脳の眠り」とも言われています。
夢を見ていることは少ないようです。
 
最初の深い眠りでは脳下垂体から「成長ホルモン」が分泌されます。
成長ホルモンは骨格形成を促し、身長を伸ばしたりするホルモンですが、細胞の修復やホルモンバランスの調整を行ったりする働きもあり“アンチエイジングホルモン”とよばれることもあります。子供だけでなく高齢者も分泌されています。
深い睡眠をとり、成長ホルモンの分泌が適切に行われることで、人は寝ている間に脳や身体の疲労回復や、あらゆる細胞の修復がされるのです。
その回復具合により、朝目覚めたときに熟睡感や満足感を得ることできます。

「疲れて泥のように眠る」という言い回しがありますが、徹夜の翌日など一時的な睡眠不足がある場合、この「ノンレム睡眠」が出やすくなります。
より深い眠りにつき、疲れている体が早く修復しようと働きかけます。
寝不足だった翌日はいつもより眠れたという感覚がありますよね。
 深い睡眠なので意外かもしれませんが、ノンレム睡眠では、体を支える筋肉は働いていて、寝返りをうったりすることも特徴の一つです。

その他にも、例えば、インフルエンザに感染すると、インターフェロンやインターロイキンというたんぱく質が、白血球や神経細胞から放出されて、免疫力を増強しますが、それらは深いノンレム睡眠と発熱を引き起こすことも分かっています。
まだまだ解明されていませんが、免疫を強める過程でも深いノンレム睡眠がかかわっているようです。
 
【医学的に金縛りを見ると…】
意識はハッキリしているのに、手足を動かそうと思っても体がいうことをきかない、という“金縛り”は、古くは心霊現象だと恐れられてきました。
医学的に睡眠麻痺といい、睡眠障害の症状の一つだと考えられています。
 
レム睡眠では、脳は活発に動いており、体は休んでいます。
活動している脳からの信号がそのまま身体へ伝わってしまうと、手や足が勝手に動いてしまうかもしれませんので、それを防ぐために、レム睡眠中は身体への神経を遮断しています。
そしてレム睡眠からノンレム睡眠や覚醒状態に移行するときになると、この遮断を解除します。
この神経の遮断を解く前に覚醒してしまうと、体はすぐに動かずに金縛りと呼ばれている状態になります。
 

【まとめ】
「ノンレム睡眠」は脳を休息させ、成長ホルモンを分泌し、生体機能を整える効果があります。
「レム睡眠」には、体を休養させながら、脳は活動して、生活で得た情報や記憶を整理する働きがあります。夢を見ることもおおいです。
今年も一年大変お世話になりました。みなさま、いい初夢を♡
 

2020-12-02 09:37:09

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