睡眠
体内時計について③ 5月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
暖かい日も多くなり、過ごしやすい季節になってきましたね。
前回の内容について少し振り返ってから、体内時計と同調因子について載せていきたいと思います。
【4月号の復習】
体内時計のサイクルの平均は約24時間10分で、正規分布しており、それは生まれつきにもった
遺伝子により決まっています。
社会は24時間で動いているので、24時間に近い体内時計を持っている人は、
毎日おなじ時間に眠たくなって、朝は目覚ましなしでもスムーズに起きられます。
日本人の3割が当てはまるといわれている
体内時計が長い“夜型タイプ”の人は、夜勤や睡眠不足に強いというメリットがありますが、ちょっと気を抜くと時計が遅れてしまう傾向があります。
逆に
体内時計が短い“朝方タイプ”の人は朝からバリバリ能力を発揮することができますが、どんどん早寝早起きになってしまう傾向にあります。
どちらが優れているとかではなく、
それぞれ違った時間帯で勉強や仕事に対して自分の力を発揮することができます。
今月号では
体内時計の仕組みを掘り下げて、
社会の動いている“24時間”のリズムにシンクロさせて、体内時計をリセットする方法(同調因子といいます)について載せていきたいと思います。
【体内時計を詳しく】
1月号では体内時計の場所について軽く触れましたが、それについて少し掘り下げていきます。
哺乳類の体内時計は脳の視床下部の
視交叉上核(しこうさじょうかく
suprachiasmatic nucleus 、略称:SCN)にあります。
右目からの情報は左脳、左目からの情報は右脳に送られますが、その道筋が交差する場所が
視交叉上核で、
直径1㎜ほどの組織のなかに時計細胞が詰まっています。
その
視交叉上核には主となる“親時計”があり、内臓や血液などの末梢組織には、それぞれ個別に動く“子時計”が機能しています。
その仕組みはよく「オーケストラ」に例えられたりします。
全ての臓器に指示を出すのが、指揮者である
“親時計” (視交叉上核のPer時計遺伝子群とよばれます)。休まずリズムを刻み、タクトを振るように子時計たちの時刻を合わせて全身にいつ何をすべきかを伝えています。その親時計のリズムは、例え生体から取り出したとしてもリズムを打つほど、強く安定しています。
そして奏者達である
“子時計”の細胞たちには、
親時計からのシグナルでリズムを刻み身体の調節をしています。
それぞれ個別にリズムを持ちますが、親時計から離れて単独になってしまったら次第にリズムを失います。
そして、冒頭で
“体内時計のサイクルの平均は約24時間10分”と示したように
リズム調節の司令塔である親時計も24時間から外れています。
体内時計は、外界の明暗サイクルや色々な刺激に反応して、なんとか地球が自転している周期に合わせようとする働きがあります。
体内時計のリズムを修正する外からの刺激のことを「同調因子」と呼びます。
同調因子は、光や食事、運動、社会生活などがあげられ、一番強い刺激は
「光」です。
【鍵となるのは“
光”】
体内時計を調整する大きな刺激は光です。
人類とあかりの歴史は
“焚火”から始まり、江戸時代ではかがり火、蠟燭など“火”を照明器具として扱っていました。
日本で電灯が初めて点灯したのは明治12年(1879年)です。
今のように人工照明で夜も明るい世界になる前は、みんな、朝日の昇る早朝5時、6時くらいに起きて、それから
光を浴びることで午前中に体内時計を巻き戻して“朝型の生活”をしていました。
時計の巻き戻しが行き過ぎてしまったなら、夕方の暗闇に応じて体内時計を少し遅らせていました。
強い光には覚醒作用がありますが、
「起きたら朝日を浴びるといい」と言われる理由はそれだけではありません。
“親時計”である視交叉上核にある時計遺伝子群のリズムは、環境における光によって調整されるため、
午前中に太陽光(強い光)を見ると体内時計は朝型にシフトします。これは親時計のみにみられる特徴で、末梢の時計遺伝子には光に反応する機能はありません。
体内時計の周期は必要睡眠時間と同じく生まれつき決まっていますが、夜型の人も光をうまく利用することである程度は朝型の生活に適応することが可能です。
【まとめ】
・体内時計には“親時計”と“子時計”があり、親時計が司令塔となって体内時計を調整しています。
・しかし、その親時計も24時間周期から外れているため“同調因子”と呼ばれる外からの刺激で、体内時計を合わせようとします。
・その同調因子として1番影響するのは“光”で、とくに午前中に光を浴びると体内時計のリセット効果があるとされています。
次回は効果的な光の浴び方についてお話ししていきたいと思います。
2021-06-28 11:02:06
体内時計について② 4月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
私たちの体は、夜が更けてくると眠気を感じて、やがて眠りにつきます。この一連の睡眠のサイクルは「体内時計」によって支配されています。夜になってメラトニンが分泌されて眠くなったり、朝になり副腎皮質ホルモンが分泌されて目が覚めるのも、体内時計の作用によるものです。
今月は体内時計の続きです。
【人間の体内時計の周期】
人間の体内時計は「24時間よりも少し長い」という話は広く知られています。かつて25時間程度と思われていたこともありましたが、最新の研究からそこまで長くないことが分かってきました。
ハーバード大学で行われた
アメリカ人の体内時計の平均は24時間11分、
秋田大学で行われた
日本人の研究では、体内時計の平均は24時間10分とほぼ同じ結果でした。
例えば、睡眠時間の平均は7時間であっても、中には3時間睡眠でも大丈夫な人、10時間は睡眠が必要な人など個体差があります。
これと同じように
体内時計も「24時間10分」というのは平均値で、それより長い人もいれば短い人もいます。
その長さにより、夜型タイプか朝型タイプに分けられるそうです。
【遺伝によって夜型タイプ、朝方タイプがある】
体内時計が平均より長い(健康な人では長くても24時間30分程度)方は、
眠くなる時間が後に遅れていき、ついつい夜更かしをしがちな
“夜型タイプ”にあてはまります。
体内時計が平均より短い人は、寝るまでの時間が早まって、朝早くから元気に活動できる
“朝型タイプ”です。
国際的な学術雑誌「Nature Communications」によると、
朝型と夜型の違いは、その人の得手不得手ではなく、50%は遺伝子によって決まるといいます。
人には1日のリズムを作る
「体内時計」があり、その体内時計をコントロールする遺伝子の数によって、朝型か夜型かが決まります。
生まれ持った遺伝子の影響の他には、
高齢になると早朝に目が覚めやすくなるように年齢の変化や、光を浴びる量や時間の影響を受けます。
光の影響については次回説明します。
まずは、朝型、夜型それぞれのメリットデメリットです。
【朝型タイプの特徴】
朝型の人は、
「早く寝て早く起きる」生活が習慣化されています。
そのため、当然ですが目覚めが良く、二度寝をすることもありません。朝の支度でバタバタせず、心に余裕をもってゆったりとした1日がスタートできます。
朝からバリバリ仕事や勉強をすることが向いています。
また、早く寝る習慣も身に付いているので、夜遅くまでダラダラと過ごすことなく、
主体的に時間管理ができる特徴があります。
一方、仕事で夜が遅くなるなど、
急な生活リズムの変化に対応することが苦手で、
寝る時間が遅くなるだけで睡眠不足を感じることがあります。
【夜型タイプの特徴】
日本人の3割はこちらのタイプです。
夜型の人は「早く寝る」ことにこだわりがないので、
時間の使い方が柔軟で、
仕事が夜遅くなっても体に負担を感じることなく乗り切るタフさもあります。また、朝よりも
夜の方が頭も冴えて集中して仕事や勉強をできるメリットもあります。
その反面、
自律神経が乱れるなどのデメリットがあります。自律神経には、昼に活動的な交感神経と、夜に活発な副交感神経があり、この二つが規則的に働くことで健康が保たれています。しかし夜型の生活が続くと、このバランスが崩れやすくなり、精神的にイライラしがちになります。
【朝型か夜型かチェックする方法】
世界中の睡眠研究者たちが使用する、「朝型・夜型の診断ツール」を紹介します。イギリス睡眠研究センター所長のジム・ホーン氏とオフロ・エストベリ博士が共同開発したもので、ご自身が朝型か夜型かが分かる自己チェック表の簡易版です。10項目の質問に答えて、自分が当てはまる
緑色の選択肢を回答欄に記入して自己チェックしてみましょう。
※質問に出てくる時間は24時間表記です。
朝型・夜型 自己チェック表(簡易版)
A . 起床後30分間の目覚めは?
1/とても眠い
2/眠い
3/わりに目覚めている
4/すごく目覚めている
B . 起床後30分間の食欲は?
1/まったくない
2/あまりない
3/わりにある
4/すごくある
C . 翌日に予定がない場合、いつもより寝る時間を遅くしますか?
1/ 2時間以上遅くする
2/ 1~2時間遅くする
3/ 1時間以内程度遅くする
4/しない
D . 友達から午前7時から8時のフィットネスに誘われました。あなたはどのくらい続けられそうですか?
1/続けられない
2/けっこう難しい
3/たぶん続けられる
4/絶対続けられる
E . あなたは何時になると眠くなりますか?
1/ 2時~3時
2/ 0時45分~2時
3/ 22時15分~0時45分
4/ 21時~22時15分
5/ 20時~21時
F. 朝方の4時から6時まで起きていなければなりませんが、次の日は予定がありません。その時あなたは、
1/ 6時まで寝ない
2/ 4時まで仮眠し、6時以降に眠る
3/ 4時まで眠り、6時以降に仮眠する
4/ 4時まで眠り6時以降は起きている
G . 1日5時間仕事をします。仕事時間を自由に選べる場合、どの時間帯から始めますか?
1/ 0時から、あるいは16時から
2/ 14時から
3/ 22時から
4/ 20時から
5/ 3時から
H . 体調がベストなのは、どの時間帯ですか?
1/ 22時~5時
2/ 17時から22時
3/ 9時~11時
4/ 5時~9時
I . 23時に寝る場合、あなたはどれくらい眠いですか?
0/まったく眠くない
2/あまり眠くない
4/わりと眠い
6/すごく眠い
J . “朝型”か“夜型”を尋ねられたら、どれにあてはまりますか?
0/明らかに夜型
2/朝型というよりむしろ夜型
4/夜型というよりむしろ朝型
6/明らかに朝型
診断方法
右の枠線に書いた青色の選択肢の数字を足して計算します。
最大52点に対して、点数が低いほど夜型になります。
参考までに、筆者は28点でした。
朝型か夜型のどちらが向いているかは、自己分析がベースになります。
例えば何か作業を行う必要がある場合、「朝」「夜」のどっちが集中できるか思い出してみましょう。仕事や勉強や家事の時間もイメージしてみて下さい。
体内時計の平均時間の話から、朝型と夜型人間の特徴を紹介しました。
どちらであろうとも大切なのは、
自分にとって良好な「睡眠環境」を作ることです。良好な睡眠環境を作るには、お風呂で体を温めてリラックスさせ、寝る前には、部屋を静かで暗く適度な温度に設定しておくのがポイントです
次回は…
体内時計の平均は
1日24時間10分、人間社会は
1日24時間で動いており、
多少のずれがあります。
そのため体内時計のズレが大きい人ほど、社会生活で苦労することになります。
“体内時計のずれ”をリセットする方法についてです。
2021-04-23 10:38:30
体内時計について① 3月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
【体内時計】
地球の自転1回は約24時間(うるう年があるように厳密には23時間56分4秒)、私たち地球に住む生物は、それに合わせるように、だいたい毎日同じ時間に起きたり、食事をとったり、仕事をしたり、眠くなったりを決まったサイクルで過ごしています。
何となく過ごしていますが、きちんと“体内時計”を持ち合わせています。
今月はその、“体内時計”の中心である“時計遺伝子の歴史や起源”について触れていきます。
【ノーベル賞を受賞した時計遺伝子】
2017年10月2日、ノーベル医学・生理学賞に米ブランダイス大のジェフリー・ホール名誉教授とマイケル・ロスバッシュ教授、米ロックフェラー大のマイケル・ヤング教授の3名が選ばれました。
受賞理由は
「時計遺伝子の発見」です。
時計遺伝子とは、
「体内時計をコントロールするたんぱく質を作る遺伝子」です。
昔から詩人や哲学者などによって“時間”が表現されてきたように、
地球上の生物は、私たちを含めて動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物は
“サーカディアンリズム(英:Circadian rhythm)”や“概日リズム(がいじつリズム)”と呼ばれる
1日約24時間のリズムを刻む“体内時計”を有しています。
サーカディアンリズム
(Circadian rhythm)の名前の由来は、
ラテン語の
“約、概ね”を意味する“Circa”と
“日”を意味する“dies”からとられており、
“概ね一日のリズム”という意味です。
その時計遺伝子が発見されるまでの歴史についてです。
【時計遺伝子発見の歴史】
ことの起こりは18世紀、フランスの天文学者である
ドゥ・メランがオジギソウの葉が昼間は開き、日が落ちるとともに閉じることを不思議に思い、暗い場所にずっと置いたらどうなるか調べたところ、
一定のリズムで葉を開いたり閉じたりすることを発見しました。これにより、
植物に体内時計があることが示されました。
次に、1970年代、カルフォルニア大学の行動遺伝学を研究するベンザー博士は
“行動”という高度な脳の機能も遺伝子が規定するのではないかと考えました。
そして、教え子であるコノプカ博士とともに、ショウジョウバエでの研究をしていたころ、
体内時計が24時間よりも長い個体、短い個体、体内時計のコントロールがきかない個体などの突然変異した個体を探し出し、この遺伝子を突き止め、「period(周期)」と名づけました。
これにより、
動物にも時計遺伝子があることが証明されます。
残念ながら、当時の技術では遺伝子の同定まで至りませんでしたが、
後の1984年、ジェフリー・ホール博士、マイケル・ロスバッシュ博士、マイケル・ヤング博士たちは、period遺伝子の同定に成功しました。
(同定:遺伝子を突き止めること)
これがのちに2017年にノーベル賞受賞へとつながります。
【概日リズムの起源】
少しサイエンスな話になりますが、概日リズムの起源をみてみましょう。
地球は太陽の周りを公転する惑星の1つで、太陽からは紫外線、可視光線、赤外線に分類される“太陽光線”が届きます。
地球自体も24時間1サイクルで自転しており、太陽光の届く
昼間と、届かない
夜を交互に過ごします。
私たち地球上の生物は、日々DNAを複製、修復しながら生活していますが、太陽からの
“紫外線”の害を受けないために、太陽光の届かない夜にDNA複製をするように進化し、それが概日リズムの起源になっていると考えられています。
それは最も古い細胞に起源を持ち、現存するアカパンカビ(Neurospora)は、このような時計制御された複製機構を保有しています。
24時間の地球の自転により、太陽光を浴びて朝目覚めて活動を開始し、夜は睡眠をとって体の修復を行う。地球上で暮らす生物として、とても合理的な進化ですね。
前回は、睡眠の仕組みの1つ、睡眠恒常性維持機構の仕組みについてお話ししましたが、2つめの仕組み概日リズム機構による睡眠制御です。
これは
毎日夜の一定時刻になると働き、睡眠を起こすという仕組みです。
【体内時計の仕組み①】
1月号の復習で、睡眠を起こさせる機構は2つあり、そのうちの1つである
“恒常性維持機構”では、ししおどしのように
脳に疲れが溜まってくると恒常性を保とうとして眠くなるとお話しました。
もう1つの仕組みは、
毎日のサイクルで夜になり“いつもの寝る時間になった”から眠くなるという仕組みは脳の奥にある
“体内時計”が司っています。
哺乳類の体内時計は脳の視床下部の
視交叉上核(しこうさじょうかく)にあります。
光を浴びると網膜から脳に信号が伝わり時計を調整しています。
体内時計のある視交叉上核は約20000個の神経細胞の働きにより、
夜になると体の内部体温を少しずつ下げ、そして代謝を全体的に下げ、血圧を下げ、体全体を休息に適した状態にさせていきます。こうした体内時計の作用によって私たちは夜の一定時刻になると、次第に眠たくなってくるわけです。
朝起きるのも体内時計の作用によります。
いつも起床する時刻の2時間前くらいになると、体内時計は体の内部体温が徐々に上げ、目覚める準備を始めます。そして、これが一定のレベルに達すると、私たちは目覚めるのです。
このように、体内時計は私たちが意識しないところで、地球の自転によりもたらされる24時間の明暗サイクルに合わせて時を刻んでおり、一定の時刻になったら睡眠を起こし、朝の一定の時刻になったら、目が覚ますというおよそ24時間のリズムを支えています。
来月はもう少し詳しく掘り下げていきます。
2021-03-30 09:41:24
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」12月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
個人差はありますが、人は一日のうちに
6~8時間の睡眠をとり、人生の約1/3を眠って過ごします。
そんな睡眠について、今月号から連載させていただきます。
目が覚めるまでに
ウルトラディアンリズムと呼ばれる「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の約90分サイクルを4~5回交互に繰り返します。(下の下の表参照)
この中で、
最も深く眠っているのが1周期目の「ノンレム睡眠」です。この最初の90分を
「黄金の90分」と呼び、
この熟睡モードは睡眠全体の質を向上させるためには重要です。
深いノンレム睡眠のときにあらわれる徐派睡眠(後で記述します)は恒温動物の特徴です。
人を含む哺乳類や鳥類は進化の過程で、体温を維持できる機構を獲得したことで脳の機能を安定して動かすことが出来るようになりました。
大脳皮質が発達した結果、レム睡眠ノンレム睡眠の双方が現れる真睡眠を獲得したと考えられています。
「ノンレム睡眠」「レム睡眠」の違いや特徴についてみていきましょう。
【レム睡眠】
レム睡眠は1953年にシカゴ大学のユージン・アセリンスキーと ナサニエル・クレイトマンによって発見されました。
眼球が活発に動くことより
「急速眼球運動(Rapid Eye Movement= REM)」を略して
「レム睡眠」と呼ばれています。
レム睡眠では心拍数、呼吸数は増加して不規則になり、呼吸は浅くなります。
レム睡眠の大きな役割は、体の休息、思考の整理、記憶の定着です。
筋肉は緩み、身体は全く動かない状態になりますが、脳は活動した状態でよく夢をみたりしています。
レム睡眠のときの脳は積極的に動いており、
記憶や感情などの情報を整理し、脳に定着させたり、いらない情報を消したりを効率よく行っています。
実際、この時の
脳波は覚醒しているときに近い状態です。
同じ記憶学習を繰り返して行い、途中で睡眠をとらせる実験を行った結果、レム睡眠の割合が多いほうが、記憶していた割合も多いという結果もあるそうです。
レム睡眠は脳の発達や精神的な安定にも重要なため、特に
成長期の子供は、睡眠時間をしっかりと確保しましょう。
朝を迎えるにつれ、ノンレム睡眠とレム睡眠の睡眠時間は逆転し、睡眠の後半ではレム睡眠の時間が多くなります。
レム睡眠が増えていくことで、体も温まり、太陽の光と共に快適な目覚めを迎えられます。
【ノンレム睡眠】
急速眼球運動(Rapid Eye Movement= REM)を伴わない睡眠は、
ノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement= Non REM)
と呼ばれます。
ノンレム睡眠の大きな役割は脳の休息と成長ホルモンの分泌です。
下の図は起きている時~睡眠段階が深くなる時の脳波を示しています。
ノンレム睡眠はステージ1からステージ4までの4段階に分けられており、数字が大きくなるにつれて脳波は低い周波数で高振幅の徐派睡眠となっていきます。
ステージが上がるほど眠りは深く、大脳皮質の活動が低下して脳は休息状態となります。ノンレム睡眠は「
脳の眠り」とも言われています。
夢を見ていることは少ないようです。
最初の深い眠りでは脳下垂体から
「成長ホルモン」が分泌されます。
成長ホルモンは骨格形成を促し、身長を伸ばしたりするホルモンですが、
細胞の修復やホルモンバランスの調整を行ったりする働きもあり“アンチエイジングホルモン”とよばれることもあります。子供だけでなく高齢者も分泌されています。
深い睡眠をとり、成長ホルモンの分泌が適切に行われることで、人は寝ている間に脳や身体の疲労回復や、あらゆる細胞の修復がされるのです。
その回復具合により、
朝目覚めたときに熟睡感や満足感を得ることできます。
「疲れて泥のように眠る」という言い回しがありますが、徹夜の翌日など一時的な睡眠不足がある場合、この「ノンレム睡眠」が出やすくなります。
より深い眠りにつき、疲れている体が早く修復しようと働きかけます。
寝不足だった翌日はいつもより眠れたという感覚がありますよね。
深い睡眠なので意外かもしれませんが、ノンレム睡眠では、
体を支える筋肉は働いていて、寝返りをうったりすることも特徴の一つです。
その他にも、例えば、インフルエンザに感染すると、インターフェロンやインターロイキンというたんぱく質が、白血球や神経細胞から放出されて、免疫力を増強しますが、それらは
深いノンレム睡眠と発熱を引き起こすことも分かっています。
まだまだ解明されていませんが、
免疫を強める過程でも深いノンレム睡眠がかかわっているようです。
【医学的に金縛りを見ると…】
意識はハッキリしているのに、手足を動かそうと思っても体がいうことをきかない、という“金縛り”は、古くは心霊現象だと恐れられてきました。
医学的に睡眠麻痺といい、睡眠障害の症状の一つだと考えられています。
レム睡眠では、脳は活発に動いており、体は休んでいます。
活動している脳からの信号がそのまま身体へ伝わってしまうと、手や足が勝手に動いてしまうかもしれませんので、それを防ぐために、レム睡眠中は身体への神経を遮断しています。
そしてレム睡眠からノンレム睡眠や覚醒状態に移行するときになると、この遮断を解除します。
この神経の遮断を解く前に覚醒してしまうと、体はすぐに動かずに金縛りと呼ばれている状態になります。
【まとめ】
「ノンレム睡眠」は脳を休息させ、成長ホルモンを分泌し、生体機能を整える効果があります。
「レム睡眠」には、体を休養させながら、脳は活動して、生活で得た情報や記憶を整理する働きがあります。夢を見ることもおおいです。
今年も一年大変お世話になりました。みなさま、いい初夢を♡
2020-12-02 09:37:09