コロナウイルス
マスクの効果と熱中症 7月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
気象庁より今年は例年より早く梅雨明けが発表されて、6月末より猛暑が続いています。
マスクを着けて過ごす3度目の夏がやってきました。マスクをつけながらも今年からは宮祭りや花火大会が開催される予定で街には少しずつ活気が戻ってきています。
日本医師会では、混雑していない屋外ではマスクを外すことを容認していますが、そうした考えはまだ受け入れられておらず、なんとなく周囲を気にしながらマスクを着用して歩いていることでしょう。
【マスク?脱マスク?】
「withコロナの状態でマスクを外す時期は日本において来ないと思っている」。日本医師会の会長は4月20日、海外での「脱マスク」の広がりを受け、そう牽制しました。
これに対し、新型コロナ対策担当大臣は同22日、将来的なマスク生活の必要性を「当然議論していかなくてはいけない」との考えを示しました。
これからの季節は、
熱中症のリスクを考えなければならないため、日本でもどのようにして「マスク」と付き合っていくべきか、海外のマスク事情や科学的なエビデンスとともに今の見解をお示したいと思います。
【
「脱マスク」も「いつでもどこでもマスク」?】
それぞれの意見があると思いますが、全面的な「脱マスク」は正解ではなく、「いつでもどこでもマスクを着用」も正解ではないようです。
withコロナのマスク生活で、押さえておくべき基本は3つあります。
- 換気の不十分な屋内や公共交通機関ではマスクを着用する
- 夏は熱中症のリスクが増すため、屋外ではマスク不要
- 赤ちゃんは基本的にマスク不要
日本ではマスク着用は義務ではありませんが、まわりを見てなんとなくマスクが着用義務になっているように感じられます。
特に、換気が十分でない屋内や、密になりやすい公共交通機関では、マスクは有益といわれています。
屋外ではマスクを外してコロナ前の日常を取り戻しつつ、換気が不十分な屋内ではしっかりとマスクをして感染予防に努めることが大切です。
【マスクの効果について、コロナを機に変わった科学界の認識】
マスクの呼吸器感染症から身を守る効果については、新型コロナを機にエビデンスが急速に集積しました。
かつての科学界では、マスクは「感染者がウイルスをばら撒かないためのもの」と認識されており、予防効果はないとされていました。
昨年12月に発表された論文では、飛沫感染だけでなく空気感染も考慮した検証が行われています。
結果は、感染リスクの高い順に以下のとおりです。
・
感染者と非感染者がともにマスクなしで1.5mの距離で会話をした場合
⇒非感染者の
感染リスクは1分半で90%に到達した。
・非感染者のみがサージカルマスクを着用し、
マスクなしの感染者と会話した場合 ⇒
1分以内に感染リスクが生じ、30分で90%に達した。
・両者ともサージカルマスクを着けて会話した場合
⇒
1~2分間は感染リスクが1%未満に保たれた。
時間とともに徐々に感染リスクは上がったが、
20分経過で10%、1時間でも20%未満だった。これは、両者マスクをせず1.5mの距離で終始黙って向き合っていた場合と、ほぼ同等でした。
・両者あるいは非感染者が
サージカルマスクをして2人とも黙っていた場合
⇒
5~10分間は感染リスク1%未満、1時間経っても10%未満に抑えられた。
このような結果より、
感染者のみでなく、非感染者でもマスクを着用することで一定の予防効果があり、「マスクは有効な予防手段となる」というのがマスクに対する世界の共通認識となりました。
一方で、明らかにマスクを外すべき要素も2つあります。
それは、
「熱中症」と「子ども」です。
これからの熱中症シーズンでは、顔や呼気からの熱の放散がマスクで妨げられて内側は高温多湿となります。
マスクを着けていることで体温の調節が難しくなるだけでなく、喉の渇きも感じにくくなり脱水のリスクが高まります。
2020年6月には国も
「屋外で人と2m以上離れているときは、マスクを外しましょう」と熱中症への注意を呼びかけました。
蒸し暑い梅雨や夏はもちろん、急に気温が上がる日のある初夏も熱中症のリスクが増しています。
のどが渇いていなくても定期的な水分補給を心掛けて、木陰などの涼しいところで休憩をとりましょう。
【海外の「脱マスク」の報道では】
欧州では、屋内の着用義務は大部分解除されました。
一方で、公共交通機関や病院など着用の必要性の高い公共の場では、マスクの着用義務を残している国がほとんどです。
例えばフランスやスペイン、イギリスでは、屋内でのマスク着用義務(6歳以上)を原則解除したが、
公共交通機関や医療機関、高齢者施設、薬局では、着用義務が継続となりました。ただし、駅構内やホームなどで周囲の人と1.5mの距離が保てる場合は外せるとのことです。
スペインの新聞社のアンケートでは
「商業・娯楽施設や職場、飲食店でも、感染防止のために自主的にマスク着用を続ける」との回答も6~7割に達したようです。
フランスの市場調査でも、
「公共の場ではマスクを着用する」と回答した人は48%でした。
アメリカではマスクの着用義務化が解除されて、大手航空会社は次々に乗客や乗務員の着用義務を解除する一方で人口の多い地域では感染拡大の予防のためにもマスクの着用を推奨するべきとされています。
【日本で「脱マスク」について】
海外ではもともとマスクへの抵抗感が強い人が多く、それでも科学的エビデンスに基づく着用義務により従ってきましたが、オミクロン株以降の軽症化や、ワクチンや感染による免疫獲得の進展もあり、人々は脱マスクに向けて動き始めたように見受けられます。
日本でのマスクを外せない理由として、「他人の目が気になって、マスクを外せないでいる」といった同調圧力が強いように感じられて例え屋外でもマスクを外すことは勇気がいるように感じられます。
正しい知識を社会で共有して、状況に応じてマスクのオン・オフを適切に切り替えられるような夏になるといいでしょう。
2022-08-09 11:30:11
3回目ワクチンの効果と種類 3月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
2月より高齢者の3回目のワクチン接種が始まりましたね。
3回目より交互接種が認められましたので、今回はモデルナ、ファイザー2つのワクチンについて特集したいと思います。
新型コロナウイルスのワクチン接種では、1回目と2回目は同じメーカーのワクチンを使用することが原則とされていましたが、3回目では
「 交互接種 」と呼ばれる異なるメーカーのワクチンを接種してもよいことになりました。
3回目のワクチン接種で認められているのは、
ファイザー、モデルナの2社です。
このうちモデルナのワクチンは9750万回分を確保できるとしていますが、
一方のファイザーでは国が現在、在庫として持っているワクチンは1600万回分にとどまっており、現在ファイザーからの供給のスケジュールが示されていないため一時的にファイザーの予約が取りづらくなる可能性があります。
厚生労働省より
「ワクチンが不足した場合、3回目もファイザーを希望する人はすぐに接種できない可能性もある。モデルナに切り替えても有効性や安全性に変わりはないので、3回目ではモデルナの接種を検討してほしい」
と示されているため、
交互接種についての効果や副反応について調べてみました。
【交互接種の有効性】
3回目が他社のワクチンである交互接種をした場合、有効性はどの程度あるのでしょうか。
アメリカで行われた研究では、モデルナとファイザー、それにジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを組みあわせて接種し、ウイルスの働きを抑える中和抗体の変化を調べました。結果は次の通りです。
(接種前比は接種から日目の中和抗体の値)
このうち日本で承認されているワクチンを見ると、3回ともモデルナを接種した場合は3回目の接種から15日目の中和抗体の値が接種前に比べて
10.2倍に、3回ともファイザーを接種した場合は
20倍にそれぞれ上昇したとしています。
一方の交互接種では、2回目までファイザーのワクチンを接種した人が、3回目でモデルナを接種すると中和抗体の値は接種前の31.7倍に、2回目までモデルナを接種した人が、3回目でファイザーを接種した場合は11.5倍にそれぞれ上昇したとしています。
【交互接種での副反応】
専門家の意見は
「3回目接種後の症状 それほど変わらず」
新型コロナウイルスのワクチンの「交互接種」について、専門家は
「3回目の接種後に出る症状はファイザーのワクチンでもモデルナのワクチンでも全体的にはそれほど変わりはない。どういった反応が出るかは個人によって異なるので、3回目の接種のほうが副反応が軽く済む人もいれば、同じ程度の人もいて、重くなる人もいるかもしれない。モデルナの場合、3回目の追加接種では、ワクチンの量が半分に減っているので、2回目までよりも副反応は少なくなると考えられる」と述べていました。
実際に当院でも、2回目の副反応が重かった人は3回目も重く出たようですが、約半数は2回目と同等かそれより重い副反応、半数は2回目より副反応が軽い印象です。
実際のデータを紹介します。
〇3回ともファイザーのワクチンを接種した方では、
注射した部分の痛みが85%、けん怠感が77%、頭痛が50%、寒気が15%、発熱が8% でした。
〇2回目までファイザーのワクチンを接種して、3回目にモデルナのワクチンを接種した
交互接種の方では、
注射した部分の痛みが72%、けん怠感が56%、頭痛が52%、寒気が28%、発熱が8% でした。
もう一つの副反応のデータでは
ファイザーのほうが発熱した割合が多く、モデルナの方がリンパ節が腫れた方が多い印象です。
ほかにもデータを見比べてみると、これとは逆で、ファイザーの方が副反応が軽かったという結果もありました。
体感としては、ややモデルナの方が副反応が強い印象です。
ファイザー製とモデルナ製のコロナワクチンの1・2回目接種の効果を半年間観察し、
モデルナ製ワクチンのほうが、感染予防、発症予防、重症化予防の効果が高いと報告しています。
2回目接種で副反応が強かった方の場合は、発熱する割合の低いファイザーを選ぶ方が安心かもしれませんね。
効果は双方あるようですから、そういった情報を踏まえて選択するのがいいのではないでしょうか。
2月から高齢者のコロナワクチン接種が始まりました。
1回目2回目と同じく肩の上のほうに注射を打つ予定なので、
着脱しやすい服装でお越しくださいね。
また予約方法は前回と同じくインターネットもしくは下記の予約センターへの電話です。
〇予約センター電話番号
0120-611-287 8時30分~17時15分(土日、祝日含む毎日)
当院に直接お電話されてもお受けできませんのでご注意ください。
また、予約のキャンセルや変更なども当院ではお受けできませんので、ご自身で予約センターへお問い合わせください。
それでは引き続き感染対策をして暖かくしてお過ごしください
2022-03-02 10:13:29
オミクロン株についてわかってきたこと、
3回目のワクチンについて 2月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
これまでにないペースで感染が拡大する「オミクロン株」。
感染力の強さを示す報告が世界中から相次ぎ、2回のワクチン接種では発症の予防は難しいことが分かってきた一方で、重症化や入院に至るリスクは低いという報告が増えてきています。
今月はオミクロン株についてわかっていることをお伝えします。また、この記事は1月中に編集しているため多少のタイムラグがあることをご了承ください。
【オミクロン株わかってきたこと】
沖縄県や東京都などで前の週の10倍以上になるというこれまでにない勢いで
オミクロン株の感染者が主体となった“第6波” が拡大しており、政府は、2022年1月9日より感染の流行している県にまん延防止等重点措置を適用しています。
全国的にデルタ株からオミクロン株へ置き換わりつつあります。
WHOは“感染力上がる”明記
WHO(世界保健機関)は、1月11日付けの週報で、オミクロン株の感染力について、
「感染力が上がっている」と明記しました。
累積の感染者数が2倍になるまでにかかる「倍加時間」という数値が、オミクロン株の場合、これまでの変異ウイルスに比べて短いとしています。
直近1週間の倍加時間は沖縄県で1.3日、大阪府で1.7日、東京都で1.9日ということからも
オミクロン株の感染力の強さがうかがえます。
WHOではオミクロン株の感染力は最大でデルタ株の3倍とするデータが発表されて世界的にもデルタ株からオミクロン株への置き換わりが急速に進みました。
イギリスやアメリカや日本では90%以上がオミクロン株に置き換わりつつあり、
さらに、
感染してから発症するまでの潜伏期間が短く、感染者が増えるペースもこれまでより速いという特徴も見えてきています。
潜伏期間は、オミクロン株は3日程度、オミクロン株以外は4.8日となっておりより短くなっています。
【オミクロン株の重症化リスク】
WHOによると、
オミクロン株による入院と重症化のリスクは「下がっていると見られる」とされ、オミクロン株の症状について、
鼻やのどといった上気道の炎症を引き起こしやすいものの、ほかの変異ウイルスと比べて
肺まで達して重症化するリスクは低いという見解が示されていますが、一方では証明するためにはさらなるデータが必要という慎重な姿勢を示す声もあります。
オミクロン株による重症化リスクについて沖縄県での初期段階のデータが示されています。
療養者の数が650人に達した時点での症状を分析したところ、
▼従来株が流行していた時期では、
重症が0.6%、無症状や軽症が84.8%
▼アルファ株が流行していた時期は、
重症が0.9%、無症状や軽症が72.8%
▼オミクロン株が中心の現在では、
重症は0%、無症状や軽症が92.3%でした。
イギリスの発表ではと、オミクロン株に感染して入院に至るリスクは、デルタ株の場合に比べて3分の1になっているとしています。
さらに、コロナウイルスの
2回目のワクチン接種を終えている人では、ワクチンを接種していない人に比べて、入院するケースは65%低く、3回目の追加接種を受けている人では81%低くなっていました。
入院に至るリスクが下がっていますが、これまでより感染者数が非常に多いことから、入院や重症化の数はあまり変わらずに医療機関には大きな負荷がかかっているとしています。症状が軽い傾向にあるとはいえ、引き続き十分な感染対策は必要です。
宇都宮市内の発熱外来も、去年の暮れ頃には一時は落ち着きましたが、
最近ではまた駐車場に車を止められないほどの混雑となってしまっているようです。今まで幸いにも重篤の患者さんは出ていませんが、電話もつながらずに、待ち時間も増えており、まさに医療現場がひっ迫しているような印象を受けます。
また、熱や咳、腹痛など何かしらの症状があって発熱外来を受診してPCR検査を受けられる方の2割ほどが陽性で、これまでの株よりものどの痛みが強いと感じる患者さんが多いのがオミクロン株の特徴だそうです。
【ワクチンの効果】
オミクロン株は、ワクチンを接種した人でも感染するケースが報告されています。
また、2回接種の効果について「感染と発症を防ぐ効果は減少し、重症化を防ぐ効果も下がっている可能性があるとみられる」としています。
イギリスのデータでは、オミクロン株に対してファイザーやモデルナのmRNAワクチンで、
2回の接種から2週間から4週間後には発症を防ぐ効果が65~70%でしたが、20週を超えると10%程度に下がっていました。
ファイザーのワクチンを2回接種した人が3回目にファイザーかモデルナの追加接種をすると、
2週間から4週間後には発症を防ぐ効果は65%~75%に上がりますが、時間とともにその効果は減少し、10週を超えると40~50%に下がるようです。
その一方で、重症化して入院するリスクを下げる効果は、発症を防ぐ効果より高くなっています。
ファイザーやモデルナなどのワクチンを接種した人で分析すると、入院に至るのを防ぐ効果は、2回の接種後2週間から24週間では72%、25週を超えても52%、3回目の追加接種をしたあと、2週以降だと88%となっていました。
2月から高齢者のコロナワクチン接種が始まります。
1回目2回目と同じく肩の上のほうに注射を打つ予定なので、
着脱しやすい服装でお越しくださいね。
また予約方法は前回と同じくインターネットもしくは下記の予約センターへの電話です。
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それでは引き続き感染対策をして暖かくしてお過ごしください
2022-03-02 09:17:29
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コロナウイルスの後遺症でわかっていること
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
新型コロナウイルスに感染した後、1ヶ月以上症状が続くことがあり「後遺症」と呼ばれています。
現時点で後遺症について分かっていることについてご紹介します。
【新型コロナの「後遺症」とは】
新型コロナに感染した人の中には、数週〜数ヶ月間に渡って様々な症状が続く方がいます。
これらは海外では「LONG COVID」「Post COVID」などと呼ばれていますが、日本国内では
「後遺症」と呼ばれることが多いです。
新型コロナ後遺症の定義は国内では定まったものはありませんが、
海外では
「発症から4週間たっても続く症状」を後遺症と定義しているものもあります。
【新型コロナ後遺症の原因は?】
新型コロナ後遺症が起こる原因についてはまだ多くが未解明です。
単一の病態ではなく、次に示す4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないかと考えられています。
(1) 肺、心臓への恒久的障害
(2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)
(3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome)
(4) 持続する新型コロナの症状
【新型コロナ後遺症の症状】
<画像引用>
新型コロナ後遺症の症状には、
発熱や咳などのある急性期から続く症状と、
経過の途中から出現する症状とがあります。
*呼吸器症状:咳、痰、息苦しさ、胸の痛み
*全身症状:倦怠感、関節痛、筋肉痛、しびれ
*精神・神経症状:記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ
*消化器症状:下痢、腹痛
*脱毛
*動悸
*味覚障害・嗅覚障害
などがあります。
その他、発症後から
6か月後まで脳梗塞、脳出血のリスクが高くなるともいわれています。
【新型コロナ後遺症の頻度】
診断後から退院時まで、3ヶ月後、6ヶ月後にみられた症状の頻度
(厚生労働科学研究より)
画像引用
新型コロナ後遺症の頻度は報告によってはばらつきがありますが、
慶応大学の報告によると、診断から
3ヶ月経過した後も1割以上の人にみられた症状は、
疲労感・倦怠感、息苦しさ、脱毛、嗅覚障害、筋力低下、睡眠障害、思考力・集中力の低下でした。
このうち
疲労感・倦怠感、息苦しさ、脱毛、睡眠障害、思考力・集中力の低下は6ヶ月後も1割以上の人に残っていました。
後遺症の持続期間については、
時間とともに少しづつ消失していくと考えられています。
中国の武漢市での1年調査は、
後遺症の症状が少なくとも1つのある人の割合は、6ヵ月後の68%から12ヵ月後の49%に減少していました。
一方で、
呼吸困難や不安・抑うつといった症状は6ヶ月後よりも12ヶ月後の方がわずかに増加しており、
症状によっては長期に続くものもあるようです。
後遺症の症状は、急性期に重症度が高かった人ほど長期に続くようです。
【後遺症はどんな人にみられやすいか】
イギリスの調査では、新型コロナに感染した4182人のうち558人
(13.3%)が28日以上、189人
(4.5%)が8週間以上、95人
(2.3%)が12週間以上にわたる症状が続いていました。
この調査では、後遺症は
・高齢者
・肥満
・女性
・発症時の症状が5つ以上ある
といった人で起こりやすいということが分かりました。
高齢者や肥満は新型コロナの重症化リスクでもありますが、
性別については男性の方が重症化しやすい一方で、女性では後遺症がみられやすいということになります。
【小児での新型コロナ後遺症】
小児でも新型コロナ後遺症が起こることはありますが、その頻度は大人と比べると低く、持続期間も短いと考えられています。
同じくイギリスの調査では、発症から28日後に症状が持続していたのはわずか4%、56日後では2%でした。
28日時点で最も多かった症状は、頭痛、疲労感、嗅覚障害で、長期化した症例の多くは小児の中でも年長児にみられました。
【おわりに】
新型コロナワクチンを2回接種して抗体獲得後、コロナに感染してしまう
いわゆる
“ブレイクスルー感染”では、発症から28日時点でも症状が続いている人の割合が減少していたと海外から報告されています。
新型コロナワクチンを接種しても感染してしまうことはありますが、後遺症が起こるリスクを下げることができるかもしれません。
長期戦になってきており、お顔の知らない友人が増えてきたこの頃ですが、みなさま引き続き、感染対策していきましょう。
、
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策をより一層遵守するようにしましょう。
2021-10-06 10:51:08
デルタ株についてわかっていること 9月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
最近米国疾病予防管理センター(CDC)が新型コロナウイルスの危険性をまとめたスライドファイルの内容がワシントンポスト紙に掲載され、大きな話題となりました。
【現在の感染者数】
8月現在、第5波の勢力は増していき、全国の新規感染者数は20000人近く、重症者は全国で1646人と過去最多、首都圏での新規感染者数は5000人にものぼります。
首都圏でのデルタ株の割合は、すでに感染全体の90%を占めていると推定されています。
栃木県でも再び緊急事態宣言が出され、連日200人近くの新型コロナウイルスの新規感染者が出ています。
県内の
デルタ株については、今年の6月より感染者が出始めましたが、日々その割合が増えていき、
8月現在のスクリーニング検査では74%まで変異ウイルスの感染者が増えており、今後も増えると見込まれています。
【デルタ株とは】
5月末、WHOより懸念される変異株について差別を避けてコミュニケーションしやすくするためにギリシャ文字を使った呼び名が推奨され、
最初にインドで見つかった株が“デルタ株”と表記されるようになりました。
日本で大流行している第5波は主にデルタ株が主流となってきています。
デルタでは感染力が強いことと、免疫力低下に関与している可能性が指摘されています。
今月がデルタ株の感染力についてわかっていることを特集してみようと思います。
【ウイルスの特徴と変異についての復習】
ウイルスは、蛋白質の外殻、内部に遺伝子(DNA、RNA)を持っただけの単純な構造で、細菌のように栄養を摂取してエネルギーを生産するような生命活動は行いません。
たとえ栄養と水があったとしても、ウイルス単独では生存できません。
自分自身で増殖する能力が無く、生きた細胞の中でしか増殖できませんので、他の生物を利用して自己を複製することでのみ増殖します。
その過程で「変異」を繰り返し、より環境に適応しやすいよう姿を変えていきます。
<変異の過程>
➀まず、ウイルス表面にある、とげ状の「スパイクたんぱく質」が、ヒトの細胞表面で受け手となる受容体たんぱく質(アンジオテンシン変換酵素2=ACE2)に結合して細胞内へ侵入します。
➁細胞内では、RNAの情報に従って、ウイルスの素材となるたんぱく質を翻訳(合成)する。一方、RNAは大量に複製され、たんぱく質とともに組み立て・成熟が進んで「子孫ウイルス」ができ、それらが細胞外へ放出されていきます。
➂この過程で、RNA複製の際に一定の確率でミスが生じ、RNAを構成する塩基の配列が変わることがあり、この現象が「変異」と呼ばれます。
【デルタ株の変異】
デルタ株は、人の細胞の受容体にくっつく「スパイクタンパク質」をつくる遺伝子に「L452R」と呼ばれる変異が入り、とげの形が従来株と少し変わりました。
少し掘り下げると
「L452R」はスパイク蛋白の構成アミノ酸で452番目のアミノ酸がL=ロイシンがR=アルギニンに変わっている株と言う意味です。
ロイシンがアミノ酸に変わると、ロイシンは疎水性=水をはじくアミノ酸が、アルギニン=親水性のアミノ酸に変化しますので、アミノ酸が折りたたまってできる蛋白質の形が変わってしまいます。
詳しい仕組みは分かっていませんが、
デルタ株のとげは、人の細胞の受容体にがっちりとくっつきやすくなりました。
そのために、次のような変化が考えられます。
【デルタ株はひっつき虫のよう?】
感染症に詳しい専門家は、デルタ株を
「ひっつき虫」と呼ばれる雑草オナモミの実に例えます。草むらを歩いた時に服にオナモミのとげがくっつくと、1個ずつ取るのが大変です。
同様に、トゲが変異して形が変わったデルタ株はいったん人の肺などの細胞にくっついたら離れにくいというのです。
これに対し、専門家は従来株を
「枯れ葉」に例えます。地面に座った時に服にくっついた枯れ葉は、手で払ったらすぐ落ちます。
同様に、従来株は人の細胞の受け皿にくっついても離れやすいというイメージです。
このようにデルタ株は一度くっついたら離れにくいという変異を持っていますが、これは感染のしやすさと関係があるようです。
【デルタ株の感染のしやすさ】
下の表はCDCより発表された1人から感染させてしまう人数を疾病ごとに比較したものです。
風邪が1人→2人、インフルエンザが1人→1人強に感染するのに対して
従来の新型コロナウイルスは1人→1.5-3.5人ですが、
新型コロナデルタ株は1人から5-9.5へと強い感染力であることがわかります。これは、非常に感染しやすいと言われている水ぼうそうに匹敵します。
デルタ株の感染のしやすさには、先ほどのような株の形状が関係ありますが、くっつきやすい形状になると、具体的には次のような変化がみられます。
●中国の研究では、感染者の気道では
ウイルスの保持量が従来の1260倍も多く、飛沫として排泄される量が桁違いに多いと報告されました。
●シンガポールの研究では、従来の新型コロナウイルスは13日間、デルタ株は18日間と、
ウイルスの排泄される期間(viral shedding)が5日長いと報告されました。
このようにデルタ株はくっつきやすく変異したことで、人の中で大量に生産されより長くとどまり、
より感染しやすく進化しました。
アメリカのCDCよると
デルタ株では、
ワクチン接種完了者であっても同株に感染した場合に他者に拡散させるリスクがあると発表されました。
アメリカで発生したクラスター感染のうち、73.8%(469人中346人)がワクチン接種完了者であり、そのうちの9割がデルタ株に感染していました。
ほかの変異株と異なり、ワクチン接種完了者であってもデルタ株に感染した場合にはウイルスを伝染させることが懸念されています。
このようなことより、
再びマスク着用が推奨されています。
長期戦で緊張感がだんだんと薄れていきますが、まだまだ感染予防に取り組んでいきましょう。
2021-09-01 11:38:28
新型コロナウイルス予防接種について 7月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
5月末より新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。
当院でも休日の日曜日を開院して、新型コロナウイルスのワクチン接種の受け入れを始めました。
(現在、病院への直接予約はできませんので、ワクチンの案内が届いた方から
予約サイトもしくは予約専用ダイヤルよりお願いします。)
今月は、コロナウイルスの予防接種と主な副反応についてまとめました。
【コロナウイルスとワクチン】
最初にウイルスが感染するまでの流れと、ワクチンについて説明します。
新型コロナウイルスの感染は、
スパイクたんぱく質を使って細胞表面のACE2受容体と結合して細胞の中に侵入して、増殖する過程をたどります。
新型コロナウイルスのワクチンでは、このスパイクたんぱく質を狙います。
次の図のように、ワクチンはスパイクたんぱく質に対する免疫反応を引き起こさせて、中和抗体を作らせます。
中和抗体とは、ウイルスに結合してウイルスが細胞に結合する機能の邪魔をする抗体です。
そうして、スパイクたんぱく質がACE2受容体とくっつくことを阻止し、感染を妨げるように働きます。
このようにワクチンは免疫反応に働きかけて、抗体を獲得していきますが、
一方で
副反応も起こります。
【一般的な副反応について】
新型コロナウイルスの副反応は、一番早く現れるアナフィラキシーショックのほかに帰宅した後に、様々な症状が現れます。
ワクチンの主な副反応に関する
海外の報告では、
注射した部位の痛み、腫れ、赤くなる(75%)、
全身の反応では、
発熱(25%)倦怠感(50%)、
頭痛(44%)、でした。
いずれも
通常1~2日で治まる一過性のものとされています。
【1回目より2回目のほうが副作用は強い】
ワクチンを打つと体内に異種タンパク質が入ることで
体が反応して、炎症性サイトカイン(炎症反応を促進する働きを持つタンパク質)などを産生し、鼻水、発熱、体のだるさなどが生じます。
これはワクチンそのものによる副次的なものではなく、
免疫応答(外来の侵入者から身を守るために体内で起こる反応)によるものなので、『副反応』と呼ばれます。
そして、
1度目の接種によって体内にある程度の免疫状態が作られるため、2度目の接種の時に強く出ることが一般的です。
【副反応は、女性で若い人のほうが強い傾向にある】
副反応は、比較的
男性よりも女性に多くみられ、年齢も若いほうが出やすいと報告があります。
それは女性ホルモンと関係しています。女性ホルモンの働きにより、
女性はもともと男性よりも免疫反応が強いといわれています。
この傾向は、新型コロナウイルス感染症を含めた
様々な感染症に対して強い抵抗力があるという利点がある一方で、
体内の免疫反応を利用して特定の病原体に免疫をつけようとするワクチンにおいては副反応が起きやすくなる原因となります。
厚生労働省のデータでは、ワクチン2回目の接種後に発熱した人の割合は、
女性4割超、男性は3割弱程度と有意差が出たようでした。
また、免疫反応は
高齢者よりも若い人のほうが強いために、若い人のほうがより副反応が強いといわれています。
【アナフィラキシーショック】
重篤な副反応のひとつにアナフィラキシーショックがあります。
アナフィラキシーショックとは、アレルゲンなどに対して
全身性のアレルギー 反応が引き起こされた状態で、主な症状では、
蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、意識がもうろうとする状態が挙げられます。
そのため、接種後15~30分は待合室で体調の変化がないかを確認させていただいております。
次の図では、海外のデータでアナフィラキシーショックが起こる確率を比較しました。
新型コロナウイルスのワクチンでアナフィラキシーショックが起こる確率は、
インフルエンザワクチンよりも多いものの、麻酔や、薬剤、蜂に刺されるよりは低いようでした。
激しい運動は避けて、普段の生活を過ごしていただいて大丈夫です。
副反応が辛い場合のサポート体制をご案内します。
【副反応外来のご案内】
当院でも
平日・土曜日の診療時間内(9時~12時30分、14時30分~18時)の間で解熱鎮痛剤の処方などは致しております。
(日曜日のコロナウイルスワクチンの接種の時は注射のみとなりますのでご注意ください)
夜間にワクチン接種後の副反応外来を開いている病院があります。
2021-06-28 11:13:34
正しい換気方法について ~CO2の見える化~
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
初めての「緊急事態宣言」が出されてから1年がたちました。
現在のコロナウイルスの新規感染者はウイルスの変異とともにくすぶりながら増えてきていますが、一方で緊張感はさほどでもないように感じます。
医療従事者や高齢者では徐々にコロナウイルスのワクチン接種が始まり、今後徐々に一般の方へもワクチンが普及する見込みです。
最近ワクチンについてのお問い合わせをお受けすることがありますが、現状では
医療機関でワクチンの予約を直接お受けすることが出来ません。
お問い合わせは各予約センターへお願いいたします。
スムーズにワクチン接種をすすめるために、基礎疾患があり通院している方は、
事前にワクチンを打っても大丈夫か主治医にご確認をお願いします。
2回目の予約は1回目の接種を終えた日の当日より可能となるようです。
今月は現在の感染状況、正しい換気方法とCO2モニター、当院での対策について今一度発信していこうと思います。
“体内時計シリーズ”はまた来月より再開予定です。
【現在の感染状況】
全国の新規感染者数は、2021年5月時点で年明けに匹敵するほどまで増えてしまいました。栃木県でも毎日30人を超える新規感染者数が出ています。
そして、栃木県での変異株(N501Y)の割合は3月下旬では新規感染者数のうち15%程度であったものの、
5月に入ってからは約60%を超え、変異株が主流となってきました。
イギリス、南アフリカ、ブラジル、フィリピンで確認されたウイルスがこの変異(N501Y)を有しており、ウイルスのスパイクタンパク質がヒトの細胞と結合しやすくなったため、
従来のコロナウイルスと比較して、感染力が強い可能性があります。
その中でもイギリス、南アフリカでの変異株はより
重症化しやすい可能性が指摘されています。
【ウイルスの変異】
新型コロナウイルスは人の細胞に入り込み、遺伝物質のRNAをコピーさせて増殖しますが、その時に一定の割合で
コピーミスを起こします。このミスによる変化で、性質が少し変化した変異株が生まれます。
武漢系統の株は消失し、現在は欧州系統の株が、N501Yの変異株に置き換わりつつあります。
【感染対策と換気】
ニュースでは、
パーテーションで仕切りをしていたのにも関わらず、コロナウイルスのクラスターを招いてしまったことが報道されました。
私たちはパーテーションで仕切ってあることで
“安心感”を抱きますが、これは天井が低かったり、窓を閉めていたり、その場の空気の流れが滞ってしまい
換気が不十分だったために起こってしまったクラスターでした。
感染症対策では
「室内の空気の換気をしましょう」とありますが、“
換気が足りているか”を一体どのようにして知ればいいのでしょうか。
1つの基準として
空気中の二酸化炭素CO2の濃度を測る方法があります。
その機械は
CO2モニターと呼ばれ、温度計・湿度計のように
CO2が数値化されて表示されます。
元々、CO2モニターは建物内の空気中の“二酸化炭素”を検出して快適な空間を提供することを目的として開発されました。建築関係のほか、地球温暖化防止に取り組む企業へ勤務している方はよく使用していると思います。
人が室内にいて呼吸をするとCO2の濃度が上がり数字が高く表示されますが、その数字が高くなっていると換気が足りていないことになります。
外気にCO2濃度を近づけるように換気をすることで、適正な数字が保たれて十分な換気がされていると判断します。
【当院の場合】
当院でも待合室にCO2モニターを設置しており、混雑時とそうでないときの数字を比較してみました。
ある1日の結果は、
混雑時 856ppm、
非混雑時 641ppmほどでした。
厚生労働省での空気環境の基準ではCO2の濃度1000ppm以下を保つことが推奨されており、混雑時でも定められたCO2の基準を超えない結果となり、安心しました。
常に待合室に設置してありますので、皆様もどうぞご覧ください。
機械に息を吹きかけてみるとどうなるのか試してみました。
呼気に含まれるCO2を感知し、3645ppmと驚く数字になりました。
もしこのように基準を超えてしまったときは、すぐに窓を開けて対策できるのも数値の見える化の良いところですね。
CO2モニターの購入を検討される方がいるのであれば
“NDIRセンサー”が使われているか確認できるとよいでしょう。
ガス式のものと比較してより精度が高いようです。
人の集まるところでは、窓を開けて“換気”をすることが一般的になってきましたね。
換気を見える化する“CO2モニター”はテレビでも特集されるようになり、病院や飲食店などで徐々に認知されるようになってきました。
人の集まるオフィス、公共機関、学校、習い事の教室、飲食店、美容室などで働いている方や経営している方、
二酸化炭素の見える化をぜひ職場へ提案してみましょう。
2021-06-28 11:10:26
コロナウイルス第3波の現状 2月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
睡眠について連載しており、今月は“体内時計”の予定でしたが、県内でも新型コロナウイルスの感染が増えており、夜の街に広まった第2波とは違い、第3波では感染経路が不明の“身に覚えのない感染”が増えてきています。
ウイルスはもうそこまで来ており、こんな時こそ日頃の感染対策が重要になってきます。
【栃木県の新型コロナウイルスの現状】
栃木県での新型コロナウイルスの発生は右肩あがりに増えており、1月18日現時点では連日の新規感染者数が100人を超えています。
武漢から始まった新型コロナウイルス騒動から1年が経ちました。
マスクの着用に始まり、第1波、第2波、第3波とそれぞれ感染対策を行ってきましたが、最近では“コロナ慣れ”してしまい、初めの頃よりも感染対策が緩くなってしまった現実も見受けられます。
栃木県内の医療現場で実際に起こった出来事と、感染対策の確認を今一度していきたいと思います。
【医療現場でのエピソード】
栃木県内での発熱時に受診が認められている、ある外来では、連日のように駐車場は満車で入れずに、受付にも行列ができており、診察を受けるまで数時間必要とします。
最近の県内で実際にあったお話しです。
50代で特に基礎疾患がない患者さんが、その診療所にやってきました。
受付の時には
顔面蒼白で、“パルスオキシメーター”という指先につけて体の中の酸素を測る機械では、
酸素飽和度75%で
呼吸も苦しそうでした。
※酸素飽和度の正常範囲は95%以上です。喘息の発作のときなど80%に落ち、医療スタッフは少し焦り始める感覚なので70%台はとても苦しいと思います。
(コロナ騒動があってから、もしもの時のために必要性を感じてネットで購入した私物のパルスオキシメーターの写真です。)
すぐに診療所にある酸素ボンベを繋ぎます。
CTでは
両方の肺に肺炎を起こしており、もちろんPCR検査を受けますが、その
結果がでるまでには時間を要します。
その間にも患者さんの容態は悪く、いつ急変してもおかしくない状態です。
設備の整った大きい病院での治療が大至急必要なので、医療スタッフはすぐに救急車を呼んで入院できる搬送先を探します。
保健所を通じて県内の病院を片っ端から連絡をしてあたりますが、どこも満床で受け入れできず、
救急車は出発できずについに半日が経過してしまいます。
さらに困ったことに、診療所の
酸素ボンベはついに底を尽きてしまう一歩手前となってしまいました。
救急隊にそちらの酸素ボンベを繋いでもらえないか伺うと、救急隊の方も酸素ボンベの残量が不足していて残された時間にも限界がありそうでした。
現状ではマスク、消毒に次いで、酸素ボンベも供給不足のようです。
もう一度、県内の病院に患者さんの容体と酸素ボンベが尽きてしまう危機的状況をどうにか伝え、やっと受け入れてもらえる病院が見つかり、夕暮れになる手前で搬送されました。
搬送を終えて、胸をなでおろすのもつかの間、
まだ駐車場に入りきらないほどの患者さんが診察を待っています。
県内でも、発熱患者を対象とした末端の医療現場ではこのような日々で、
さらに、本来であれば隔離が必要であるPCR検査で陽性が出た患者さんが入院できずに1000人ほど自宅待機しており、医療現場はとても逼迫していると言えます。
インフルエンザとも比較されがちなコロナウイルスですが、新型インフルエンザが流行した時には、このような医療崩壊はありませんでした。
自分自身や家族が感染しないためにも今一度、感染対策を見直したいと思います。
【感染対策の見直し】
忘年会、新年会は見送りとなった会社が多くありますが、同じ職場で感染者が出てしまい、ご自身が濃厚接触の対象となってPCR検査を受ける方が多く見受けられます。
“いつも接している決まったメンバー”という安心感から気の緩みがありますが、夜の街に繰り出さなくても、コロナウイルスは近くまで迫ってきています。
職場でできる感染対策を今一度見直したいと思います。
・食事について
飛沫が飛ぶために、
別の空間での食事が推奨されますが、やむを得ずに同じ空間で食事をとるときは、デスクの周りに
ついたてをつける、
マスクなしでの会話は最小限にする、部屋は
換気扇をつけてさらに対角線上に
窓を開けて換気をする。
・接触しあう共有部分について
例えば、ドアノブ、共有の資料、共有パソコン、私物でないボールペン、給湯室など
誰でも触れる可能性のある共有部分は感染の可能性があると判断します。
手で触れた場合は
手洗い、消毒をします。
消毒のしすぎで手が荒れてしまっている方は、保湿する、または皮膚科へ相談しましょう。
・職場の人と同じ車に乗る場合
共有の車である場合は使用の前後にきちんと消毒します。
お互いに
マスクをするのはもちろんのことですが、
外気モードにして、今の時期寒いので暖房の
風量はMAXに増やします。
これで
3分ほど経ったら換気ができるそうなのですが、前後で
窓も少しだけあけましょう。
2人で乗る場合、座る位置は
対角線上がベストです。
・日常生活で欠かせない
スーパーなどの買い出しでは
店舗の入り口には消毒が設置されていることがほとんどです。
お店に入るときの1プッシュは
“ウイルス店内に持ち込まないための消毒”
お店から出るときの1プッシュは
“ウイルスを家庭に持ち帰らないための消毒”です。どちらも忘れずに行いましょう。
みなさんで感染対策を見直して、一日でも早く安心できる日々をすごせますように。
2021-01-25 09:38:19