健康寿命をのばそう
健康寿命をのばそう⑤ 筋トレ実践編
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
真冬も通り過ぎ、少しずつ暖かい日が増えてきました。
暖かくなってくると体も動かしやすいですよね。
今回は、健康寿命を高める運動の実践編です。
【筋肉の量と寿命】
高齢者の歩く速さと10年後の生存率を調べた最近の研究では、歩くのが速い人ほど長く生きられるという結果でした。
歩行速度は筋肉量と関係しているため、筋肉の量が多いほど長生きできるということになります。
筋肉量を持したり増やしたりするには、運動が欠かせませんね。
筋肉量を維持するためには、1日6000歩を目安にしますが、さらに筋力を増やすには筋力トレーニングが必要です。
糖尿病の運動療法では、有酸素運動を一週間に数回の合計150分以上とレジスタンス運動(筋肉トレーニング)を週に2~3回組み合わせて行うと治療に効果的とされています。
糖尿病の方はもちろんですが、そうでない方もこのように有酸素運動+筋肉トレーニングを組み合わせた運動を行ってみましょう。
要介護が必要な高齢者でも1年間筋肉トレーニングを続けることで筋肉量が5.5%アップしました。継続は力なりです。

【自重トレーニング】
一般的に筋肉トレーニングといえば、ダンベルを使って筋肉に負荷をかけるようなイメージがありますが、高齢者は筋肉や関節が傷みやすいために、最初は負荷の軽い自重トレーニングから始めます。
“自重トレーニング”とは、自分の体重をおもりとして利用する筋肉トレーニングで、特別な道具は必要ありません。
自宅で手軽にできるので、さっそくやってみましょう。
【自宅できる運動メニュー】
●スクワット
スクワットは全身の筋力を強化することができます。特に歩くときに大切になる下半身の大きな筋肉(大腿四頭筋、大臀筋)を鍛えることができます。
- 椅子の前に足を肩幅に開いて立ちます。手を頭の後ろで組むのが辛い方は自然に下におろします。
- お尻を後ろに突き出すように腰を下ろします。
- 膝に負担がかからないように、膝は前に出さず、お尻を後ろに引くことを意識します。
- 視線は自然と前を向き、自然な呼吸をしながらゆっくりと椅子からの立ち座りを繰り返します。
- 一連の動作を10数えながらゆっくりと10回ほど行います。
●背中、お尻を鍛える
背中の筋力は低下しやすく、猫背や肩こり、腰痛などを引き起こしやすくなります。
このトレーニングは、主に背中、おしり、足の筋肉(広背筋、大臀筋、ハムストリングス)を鍛えることができます。
- 仰向けになり、膝を直角に立て足底をしっかりと床につけます。
- 息を吐きながらゆっくりと10秒数えながら腰を持ち上げます。
- 腰の位置は高すぎず低すぎず、首から膝までが一直線の状態を意識して10秒キープします。力が入ると息が止まりやすいので自然に呼吸することを意識します。
できる方は両膝をくっつけます。
- 腰を下ろすときは、首の方からゆっくりと10秒かけて床に下ろしていきます。
- 一連の動作を、ゆっくり10回繰り返します。
●腕立て伏せ
腕立て伏せは、主に腕の筋肉(上腕三頭筋)や体幹を鍛えることができます。
一般的な腕立て伏せよりも簡単なヒザを支えにして行うトレーニングです。
- 手を床に肩幅より広めについてヒザを床につけます。
- 頭からひざまで一直線になるようにイメージして、ひじを曲げます。
一直線にするのが辛い方は四つん這いの姿勢になります。
- 腰が反ってしまったり、曲がらないように腹筋を意識します。
- ひじを曲げて下ろせるところまでゆっくりと上体を下ろしてから、ひじを伸ばして元の姿勢に戻ります。
- 息を止めずに10回繰り返します。
注*高齢者の運動注意ポイント
筋肉トレーニングをするとき、一生懸命になりすぎると息を止めてしまいがちです。
声に出して数を数えながら行うと自然な呼吸ができて、力まずにトレーニングすることが出来ます。
【運動後の栄養補給】
運動のあとは、コップ1杯の牛乳や豆乳を飲むと、より効果的なトレーニングとなります。
牛乳からは動物性たんぱく質、豆乳からは植物性たんぱく質が摂取できます。
◆豆乳
豆乳に含まれる“ペプチド”が脂質代謝を上げて、脂質からのエネルギーは筋肉の疲労回復を早くする効果があります。また、運動直後に大豆ペプチドを摂取することで、血液中の成長ホルモン濃度が上昇し、筋肉を作る効果がより高まります。
◆牛乳
豆乳を飲むことで植物性たんぱく質を摂ることができますが、骨や筋肉、血液を作るカルシウムの量は牛乳にはかないません。筋肉トレーニングに力を入れたい人は、筋トレの後にコップ一杯の牛乳がおすすめです。
一日の摂取量はコップ一杯です。
無理のないようにコツコツと続けてみましょう。
2020-01-31 10:56:23
健康寿命について考える②筋肉をつける運動
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
最近、健康番組でも、サルコペニアやフレイルという言葉を耳にするようになりました。
若い時よりも筋肉が落ちて、歩くのが遅くなる・握力が落ちてしまうなどの自覚症状から始まって最終的には転んで骨折してしまったり、寝たきりになって自立した生活が出来なくなってしまうことを指します。
健康寿命を長くするために、寝たきりになるのは避けたいですね。
寝たきりや転倒からの骨折を予防するために、筋肉を維持することについて載せていきます。

【運動習慣は大切】
健康寿命について考える①やせと肥満で紹介した「高齢者のBMIと死亡率」の研究を載せましたが、これにはもう1つの結末があります。
・どのグループにおいても運動習慣のない人は死亡率が女性では2倍に、男性では28%増えるということが分かりました。
運動習慣のない人=つまり筋肉が少ないことは健康寿命を延ばす上でとても重要な課題となります。
【高齢者と筋肉】
高齢になると若い頃と比べて、筋肉が30〜40%減るといわれています。
例えば下の写真、一見太ももの大きさは同じにみえますが、赤色の筋肉の部分大きさが全然違います。
左側は、筋肉の占める割合が大きくて密度の濃い赤身よりの脂肪が少ない太ももです。
右側は、筋肉も少なくて脂肪分の割合が多く霜降り状になっています。

サルコペニアやフレイルになると、下の写真の右側のようになります。
このような筋肉の少ない状態は、転びやすいことや姿勢が悪くなることで骨折や寝たきりになるリスクが増えます。
健康寿命を伸ばすのに大切なことは、筋肉をつけることです。
【落ちやすい筋肉】
下の写真のオレンジ色の部分は加齢により落ちやすい筋肉で、姿勢を保つ筋肉でもあります。

主に姿勢を保つ筋肉が落ちていき、これらの筋肉が落ちてくると姿勢が前かがみになり、下の図のような姿勢になっていきます。
●運動を始める前にチェック!
高齢者にみられる不良姿勢(前屈み姿勢)

筋肉が減りこのような姿勢になってしまうと、バランスも悪くなり、転びやすくなります。
転倒を予防する運動を行うときは、抗重力筋を意識した正しい姿勢でトレーニングを行うことが大切です。
●抗重力筋を意識した正しい姿勢
これらの筋肉が萎縮することで転びやすくなるため、意識して筋肉トレーニングを行います。

【太ももとお尻を鍛える】
下半身の筋肉は上半身に比べて落ちやすく、昔はよく「老化は足から」といわれていました。
●太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の鍛え方
さきほどの正しい姿勢を意識して、足を肩幅に開き、お尻を後ろに引きます。
膝が前に出過ぎないようにします。
慣れてきたら、毎食後の歯磨きやドライヤーの時など、30秒ほどキープするのを何セットか続けます。
このスクワットが難しい方は↓
椅子に座って立ち上がる動作を10回を1セットとして繰り返します。ゆっくりでいいのでしっかり立って姿勢を正します。
食事やお茶で椅子に座ったついでに行いましょう。
●お尻にある大きな筋肉(大殿筋)の鍛え方

階段の上り下りのように踏み台を上ったり下りたりする動作
30回を1セットとしてくり返します。
肩の力を抜いて、しっかりと膝を伸ばして姿勢を正して行います。
これが難しい方は↓

足を肩幅に開いて、椅子の背につかまってスクワットをします。
膝を前に出さずに、お尻を後ろにひきます。10回を1セットとして座るときに繰り返します。
ゆっくりかがんだ姿勢をキープします。
椅子が倒れないように注意です。
それではLets 筋活♡
2019-11-05 10:42:58