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猪岡内科コラム

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トランス脂肪酸

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トランス脂肪酸 国内のチョコレート菓子

トランス脂肪酸 国内のお菓子
 
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
【はじめに】
トランス脂肪酸について、菓子パンや海外のお菓子について連載してまいりました。
菓子パンではチョコレートやクリーム、デニッシュ系のトランス脂肪酸含有量が多かったため、今回は、国内で市販されている主なチョコレートのお菓子について調査していきたいと思います。
トランス脂肪酸といえば代表的なものは“マーガリン”ですが、マーガリンといえば真っ先に思い浮かべる物は“パン”です。
パン業界ではトランス脂肪酸の含有量について開示している企業が多く、また、積極的にトランス脂肪酸の低減化に取り組む姿勢がみられました。
 お菓子業界では、まだそこまで注目の的になっていないためか、パン業界とは「トランス脂肪酸に対する意識」が違ったような印象を受けました。
そして、取材をしている中で企業ごとに情報開示への姿勢、低減化に取り組む姿勢に違いがありました。
そこで、積極的に取材に応じていただけた企業をまとめていきます。
 
【企業姿勢】
はじめに主な製菓会社のホームページでトランス脂肪酸についての情報が載せてあるかを調べてみました。
トランス脂肪酸についての注釈があったのは、明治製菓のみでした。
トランス脂肪酸について(株式会社明治)
https://www.meiji.co.jp/notice/2015/detail/20150807.html
明治製菓はマーガリンも作っているために、トランス脂肪酸について積極的でした。
続いて、江崎グリコも積極的な返答でした。
 
【明治】
明治製菓は、トランス脂肪酸の含有率を0.2%から0.3%(100g当たり0.2gから0.3g)未満を目標にしており、チョコやアイスを含む全製品達成済みとのことです。

100g当たり0.3g未満としてトランス脂肪酸含有量を計算してみました。
お菓子の商品名
 
カロリー kcal
 
トランス脂肪酸量 g
 
Meijiミルクチョコ 50g
 
279 kcal
 
0.15 g
 
Melty kiss 60g
 
382 kcal
 
0.18g
 
きのこの山 74g
 
417 kcal
 
0.22g
 
たけのこの里 70g
 
391 kcal
 
0.21g
 
galbo 42g
 
237 kcal
 
0.12g
 
                (単位 1箱)
国内生産品、海外生産品ともに同水準です。
100gあたり0.3g未満は消費者庁が認める“トランス脂肪酸ゼロ”と表示してもいい数字なので低水準といえます。
 
【江崎グリコ】
続いて、こちらも積極的に回答してくれた企業です。
江崎グリコは、商品のカロリー1%以内の目標を設定し、チョコレート菓子についてはすでに達成済みとのことです。

同じように1箱単位でトランス脂肪酸の含有量を計算してみました。
お菓子の商品名
 
カロリー kcal
 
トランス脂肪酸g
 
100g中のトランス脂肪酸量
 
ポッキー 72g 
 
364 kcal
 
0.40 g
 
0.56 g
 
ポッキー 冬のくちどけ72g
 
316 kcal
 
0.35 g
 
0.49 g
 
プリッツ 69g
 
350 kcal
 
0.39 g
 
0.57 g
 
ビスコ 61.8g
 
294 kcal
 
0.32 g
 
0.52 g
 
カプリコ 34g
 
192 kcal
 
0.21 g
 
0.62 g
 
(単位 1箱)

〇計算式
「ポッキーチョコレート」の場合、1箱72g364kcalでカロリーの1%は3.64kcal。
単位を”kcal”から“g“にしたいので脂肪重量換算します。
脂肪1g=9kcalなので1kcal=約0.11gとなり、3.64kcal×0.11gで計算しました。
1箱あたりのトランス脂肪酸の量は0.40gで、100gあたりのトランス脂肪酸の量は0.56gです。
100gあたりのトランス脂肪酸量にばらつきがあるので表の右に計算しました。


国内生産品、海外生産品ともに同水準でした。
 
ただし、アイスに限っては商品のカロリー1%以内の目標を達成できていないような返答がありました。
乳製品は天然のトランス脂肪酸を含んでおり、例えば生クリーム100gあたり1.0~1.2gのトランス脂肪酸が含まれているので、カロリーの1%以内の達成には努力が必要です。
 
100g当たり0.3g未満であれば、消費者庁が定めている「トランス脂肪酸を0gと表示できる量」に該当しますが、江崎グリコは0と表示できるまでもう少しです。
 

【適量の考察】
お菓子を1箱あけると美味しくて途中で止めることはなかなかできませんが、1日の間食の目安は200kcal以下です。
この中でいうとたけのこの里を半分か、カプリコ1つがおやつの適量です。
たけのこの里を半分といわれても我慢できずに最後まで食べてしまうので、1箱の量がおやつの適量分が入っている健康志向のパッケージが発売されると良いなと思う筆者です。

 
さて、トランス脂肪酸の話に戻りますが、農林水産省が調査した“和食中心の日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は1日で1g”と推定されました。

これに、お菓子を間食した分のトランス脂肪酸0.1~0.2gを足しても、1日の目安の摂取量(2g未満)はオーバーにならなそうですね。

つまり、トランス脂肪酸低減化を図っているこの2社であれば、日頃のおやつに食べるお菓子としては問題なさそうです。

ただし、ファーストフードや揚げ物など脂質が多い食事に偏っていたり、おやつを過剰にとっていたらオーバーしてしまします。
 
まだまだ、トランス脂肪酸の調査は続きます。
 

2019-01-19 11:52:19

トランス脂肪酸とお菓子

トランス脂肪酸 海外のお菓子と国内のお菓子
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
朝夕はめっきり寒くなり、雪が待ち遠しい季節になりましたね。
前回は、家庭用のマーガリンや市販のパンにどのくらいトランス脂肪酸が含まれているのかをまとめました。
日本ではトランス脂肪酸は規制・表示はされていませんが、トランス脂肪酸の健康への影響が話題になっていることもあり、以前に比べてマーガリンもパンも、含有量が減っているという結果になりました。
今回は、“トランス脂肪酸とお菓子”についてまとめていきたいと思います。
 
【国内製品と海外製品でトランス脂肪酸含有量が違う!?】
本でおなじみのお菓子でも海外でみかけることはよくあります。
パッケージが日本語表記か英語表記かの違いくらいで、中身は同じだと思っていましたが、
同じ製品のように見えて、実は含まれている添加物の量が違うので紹介します。

 
【香港のマーチ】
香港では2010年よりトランス脂肪酸の表示が義務化されました。
それにともない2014年にコアラのマーチ(イチゴ味)を調査した記事をまとめたいと思います。
コアラのマーチのトランス脂肪酸含有量は100g当たり4.8gでした。およそ5%です。
香港のスーパーでは特売で75円くらいで売られているようです。
 
 
1箱は41gなので1.97gのトランス脂肪酸が含まれています。
現在市販されているマーガリンは1%を下回るので、マーガリン1箱分(200g)よりも多い数字です。
そして、WHOは1日2g以下のトランス脂肪酸摂取を推奨しています。
おやつだけてこの基準に達してしまうのは、とてもビックリしました。
 
【日本のマーチ】
続いて日本で生産されているコアラのマーチです。
日本国内で販売される「コアラのマーチ」は国内で製造しており、1箱(48g)あたりのトランス脂肪酸の含有量は、00.1~0.2g(0.2~0.4%)です。
トランス脂肪酸以外にも違いがあり、香港の「コアラのマーチ」には発がん物質のカラメル色素Ⅳが含まれていたが、日本製では発がん性のないカラメル色素Ⅰが使われていました。
 
まとめると、日本製品と香港製品(タイ産)ではトランス脂肪酸の含有量に20倍近い差があり、さらに海外製品では発がん性カラメル色素を使っていることが明らかになりました。
これを読むとコアラのマーチを食べてはいけないような気がしてしまいますが、日本で市販されている製品に含まれているトランス脂肪酸は安全な量です。
香港のコアラのマーチは輸入禁止になっていますので、香港に買いに行かない限り大丈夫です。
 
【アメリカのお菓子はでは】
続いて、アメリカのお菓子を紹介します。
トランス脂肪酸の特集①でも述べましたが、アメリカでは、2018年6月より、トランス脂肪酸が含まれている食品添加物の使用が原則として禁止になりました。

トランス脂肪酸が禁止されてから半年がたち、どのようになったのか気になっていたところで、グアムに旅行に行く機会があったので、現地のスーパーに立ち寄ってみました。
 
上の図にあるのはアメリカでよく見かけるチョコチップクッキーです。
原材料にチョコやマーガリンが入っていますが、トランス脂肪酸ゼロと表示されています。
他にも、トランス脂肪酸ゼロのお菓子や0.5gほど含まれているお菓子があり、“手に取って、目で見て確かめる”ことを体感してきました。
 
【まとめ】
トランス脂肪酸の表示義務をしている国(香港)でも、このようにトランス脂肪酸がたくさん含まれている事実がまだあることが分かりました。
そして、トランス脂肪酸規制がされている国(アメリカ)では、トランス脂肪酸ゼロのお菓子が多く、意識の高さが違います。

 
~消費者の安全は自分で守る時代~
日本ではまだ表示義務もなされていません。
まずはトランス脂肪酸の表示義務がなされて、消費者が目で安全を確認できる日が来ることを願います。
 
次回は、日本で市販されているお菓子についてまとめます。
 
参考資料
全国農業協同組合連合会(JA全農)主催の「食品表示に関する記者説明会」

2018-12-16 18:58:18

トランス脂肪~菓子パン編②~

トランス脂肪酸 菓子パン編
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
朝夕はめっきり涼しくなって、過ごしやすい季節になりましたね。
トランス脂肪酸について連載していますが、今回は、スーパーに売っている菓子パンにはどのくらいのトランス脂肪酸が含まれているかを調査したいと思います。
 
スーパーでもよく見かける、ヤマザキパン、フジパン、Pascoの3つのメーカーを調べました。
 
【食パン】
ヤマザキパン、Pasco、フジパンともにトランス脂肪酸はゼロでした。
平成18.19年頃の食パンのトランス脂肪酸は、多くて0.3g入っていたので、改良されましたね。
メーカー
 
商品名
 
熱量(kcal)
 
飽和脂肪酸
 
トランス脂肪酸
 
コレステロール
 
山崎パン
 
超芳醇
 
168
 
1.2g
 
0
 
0
 
ダブルソフト
 
178
 
1.9g
 
0
 
6㎎
 
Pasco
 
超熟シリーズ
 
164
 
1.8g
 
0
 
1㎎
 
フジパン
 
本仕込食パン
 
168
 
0.7g
 
0
 
0
 
(6枚入り1枚当たり)

 
【菓子パン】
菓子パンは種類が多いので、特にトランス脂肪酸が特に多く含まれているものについてピックアップしてみました。
メーカー
 
商品名
 
熱量(kcal)
 
飽和脂肪酸
 
トランス脂肪酸
 
コレステロール
 
山崎パン
 
大きなチョコチップメロンパン
 
462
 
6.5g
 
1.4g
 
64㎎
 
ずっしりクリームデニッシュ
 
495
 
10.0g
 
1.1g
 
54㎎
 
ホワイトデニッシュショコラ
 
426
 
11.1g
 
0.9g
 
17㎎
 
Pasco
 
シナモンロール
 
426
 
9.2g
 
0.7
 
60㎎
 
サンドロールダブル十勝ミルク
 
340
 
5.2g
 
0.7
 
1㎎
 
ホイップメロンパン
 
392
 
9.2g
 
0.6
 
39㎎
 
フジパン
 
ショコラ香るデニッシュ
 
363
 
6.6g
 
0.8g
 
6㎎
 
黒糖スティックメープル&マーガリン
 
346
 
7.4g
 
0.7
 
15㎎
 
チョコメロンデニッシュ
 
394
 
6.7g
 
0.6g
 
40㎎
 

平成18.19年頃の菓子パンには多いもので~0.8gのトランス脂肪酸が入っていたので、現在との比較は横ばいです。
トランス脂肪酸の1日の摂取量は2g未満なので、食べすぎるとオーバーしてしまいますね。
美味しく改良されることを願っています。
 
【惣菜パン】
続いて惣菜パンも、トランス脂肪酸が多いものをピックアップしました。
 
メーカー
 
商品名
 
熱量(kcal)
 
飽和脂肪酸
 
トランス脂肪酸
 
コレステロール
 
山崎パン
 
まるごとソーセージ
 
437
 
4.9g
 
0.4g
 
33㎎
 
大きなメンチカツドーナツ
 
619
 
12.9g
 
0.4g
 
21㎎
 
Pasco
 
ハムからしマヨネーズ
 
432
 
7.8g
 
0.5g
 
17㎎
 
ジューシートマトピザ
 
234
 
4.4g
 
0.4g
 
12㎎
 
たっぷりコーンマヨネーズ
 
332
 
3.2g
 
0.4g
 
51㎎
 
フジパン
 
チーズ&マヨ
 
319
 
4.3g
 
0.4g
 
30㎎
 
ブラックペッパー香るチーズパン
 
332
 
3.6g
 
0.4g
 
35㎎
 

結果は、惣菜パンに入っているトランス脂肪酸は多くても0.4gでした。
もう一度書きますが、トランス脂肪酸の1日の摂取量は2g未満なので、1日のうちの1食は惣菜パンを食べても安心ですね。
 
【まとめ】
いまスーパーに売っている食パンは、トランス脂肪酸が0のものが多かったです。
食パンにつけるバターやマーガリンもトランス脂肪酸が減ってきているので、安心して食べられますね。(マーガリンについては前回の記事に詳しくまとめました)
 
菓子パンについては、トランス脂肪酸が0のパンも増えています
しかし、その含有量の多いものをピックアップすると、昔と横ばいでした。
特に、メロンパン・チョコ・デニッシュ系でサイズの大きいパンは毎日食べると、トランス脂肪酸を摂取しすぎてしまうかもしれません。
 
惣菜パンについては、昔のデータがなくて比較できませんでしたが、菓子パンよりはトランス脂肪酸の量が少ないものが多かったです。
 
調べた限りでは、パンを1つ食べたらトランス脂肪酸を1日分摂取オーバーしてしまうようなものは市販されていませんでした。
今度はファーストフードを調査したいと思います。
 
 

 

2018-10-04 20:26:16

トランス脂肪 ~菓子パン編~

トランス脂肪酸 菓子パン編
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
朝夕はめっきり涼しくなって、過ごしやすい季節になりましたね。
前回は、家庭用のマーガリンの中にどのくらいトランス脂肪酸がはいっているかまとめました。
今回は、菓子パンについてまとめていきたいと思います。
 
【トランス脂肪酸がパンに含まれる理由】
菓子パンに使用されるマーガリンやショートニングなどの油脂には、
・大豆、菜種、とうもろこし、パームなどの植物由来のもの
・バターやラードなどの動物由来のもの があります。
 
大豆、菜種、とうもろこしは常温時に液状なため、パンの製造に適するよう固体状にしたマーガリンやショートニングが必要となります。
これらの固形脂は水素添加によって得られ、硬化油と呼ばれます。
この硬化油の製造過程において、一部がトランス脂肪酸へ構造が変化することが知られています。
 
バターやラードに使われている動物由来の油脂にも、反芻(はんすう)動物の胃の中で微生物により生成されたトランス脂肪酸が含まれています。
 
【それを利用するメリット】
パンを作るときにバターやマーガリンのような硬化油を使用することで、下記のようなメリットがあります。
①油脂の融点が高くなることにより油っぽさを低下させます。
②酸化しにくいために賞味期限が長くなります。
③油の結晶が細かくなり、サクサク感、コク、しっとり感など食感がよくなります。
デニッシュやドーナツなどの製品では、美味しくするためにも特にこの硬化油の特徴が必要ですね。
 
【トランス脂肪酸を減らす取り組み】
パンを作るときに使う加工油脂製品には〇マーガリン〇フライオイル〇ホイップクリーム等があります。
健康への影響より、トランス脂肪酸が減ってきていますが、その取り組みについて紹介します。
 
〇マーガリン・ショートニング
パン生地やクリームなどに使用されるマーガリン・ショートニングは、冷たい温度でも温かくてもなめらかなことやクリーミーさを求められます。
融点の異なる油脂を組み合わせることで、それを保つことができました。
原料中のトランス脂肪酸量は、以前20%を超えていましたが、現在は0.5~2%程度まで減っています。(詳しくは前回のブログに載せました。)

〇ドーナツ用フライオイル
ドーナツ用フライオイルは、ドーナツに吸収される割合も多いため、風味がよく、劣化しにくいオイルが求められます。
 トランス脂肪酸に変化しにくい飽和脂肪酸であるパーム油を多く使い、さらに酸化されやすい油の比率を減らしました。
その結果、以前は20~30%近く含有されていたトランス脂肪酸は、平均2%以下まで減らされました。
 パーム油については、そのうち特集します。

〇ホイップクリーム
菓子パンの具材で使われているホイップクリームは、フワッとしたまま型崩れしにくくするためや、賞味期限を保つために加工油脂が使われます。
油脂の比率を変えたり、結晶の大きさを調節して、トランス脂肪酸量は2~3%まで減りました。植物性の生クリームも動物性の生クリームと同じくらいですね。

さて、次回は菓子パンにどのくらいトランス脂肪酸が含まれているか、調べた結果を載せたいと思います。
 

2018-10-04 20:17:45

もっと身近なトランス脂肪酸

もっと身近なトランス脂肪酸
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
前回、トランス脂肪酸はどのようにできるのか、トランス脂肪酸の体への影響をまとめました。
今回は、トランス脂肪酸の代表としてよくあげられる、マーガリンを調査してみました。

 
【最近の企業努力】
トランス脂肪酸は取りすぎると動脈硬化を促進させてしまい、各国でもどんどん規制されています。
日本では規制や表示の義務はなく、野放しにされているのが現状です。
しかし、日本の企業はトランス脂肪酸を減らす努力をしていました。
 
【企業努力の歴史】
1990年頃より、世界ではトランス脂肪酸の研究が進み、食べすぎると健康被害をもたらすことがわかりました。
2003年アメリカではトランス脂肪酸の表示義務がなされます。
 
日本で製造されたマーガリンのトランス脂肪酸を減らす取り組みは2006年頃より始まりました。
この頃のマーガリンのトランス脂肪酸の含有量と、いまのマーガリンの含有量を比較してみましょう。
 
【昔のトランス脂肪酸の含有量】
2008年のワースト3品は、
「雪印 Sマーガリン」(トランス脂肪酸含有量16.0%)、
「雪印 ネオマーガリン」(14.0%
生協の「コープ コーンソフト100 バターの風味」(13.5%)でした。

 
具体的には、含有量16%のマーガリンの場合、パン1枚につける目安とされる10gを塗るとトランス脂肪酸は10×0.16=1.6gになります。
WHOの摂取基準は2g未満なので、少し多めに塗ったらそれだけでオーバーしてしまいます。
 
【今のトランス脂肪酸の含有量】
いままでは、マーガリンの製造に水素を添加した油脂が使われていました。
しかし、2018年よりトランス脂肪酸をふやす原因となる「水素を添加した油脂」を使わずにマーガリンが作られているようです。
 
ベイシアに置いてあるマーガリンを調査したので表にまとめます。

10年前と比較して、15分の1程度に減っており、バターよりも少ないものも増えています。
家庭で使うマーガリンについては問題なさそうですね。


このようなマークを目印にしてみてくださいね。
 
家庭用マーガリンはトランス脂肪酸が減ったと分かったところで、普段食べている菓子パンやお菓子、ファーストフードノ揚げ物にどのくらいのトランス脂肪酸が含まれているのか、疑問に思います。
 次回にまとめたいと思います。

2018-09-04 16:39:34

トランス脂肪酸はどうやってできるの?

トランス脂肪酸はどうやってできるの?
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
暑さもピークを越えて、朝や夕方は過ごしやすい気温になってきましたね。
前回、トランス脂肪酸について、各国の規制の違いなどをまとめました。
今回は、トランス脂肪酸はどのようにして作られているのかをまとめていきたいと思います。
 
トランス脂肪酸には
◎天然に食品に含まれるもの
◎油脂を加工するときに工業的にできるもの
があります。
 
【天然にできるトランス脂肪酸】
天然の不飽和脂肪酸の多くはシス型で存在します。
しかし、牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス型の脂肪酸が作られます。
(反芻動物 一度飲み込んだ食物を口に戻して噛みなおすこと)
 
そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が天然に含まれています。

 
【工業的につくられるトランス脂肪酸】
マーガリン・ショートニングを作るときに、植物油を液体から固体に変化させますが、
油脂に「水素添加」加工します。
水素添加は、油脂を液体から固体にする“硬化技術”の一つです。
その際に、不飽和脂肪酸から二重結合を減らして、二重合のない飽和脂肪酸の割合を増やして、融点を高くします。
その際にトランス脂肪酸が生成する場合があります。
 

水素を添加する理由は、酸化しにくい油脂、低温・高温でも硬さが変わらない油脂、一定の温度で融ける油脂などをつくるためです。

マーガリンやショートニング,パン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子や、揚げ物にもトランス脂肪酸が含まれています。
問題となるトランス脂肪酸は食感も良く、保存も効き、香りも良いため、多くの加工食品に使用されています。
 
 
【トランス脂肪酸の体への影響】
油脂などの脂質は、三大栄養素の一つであり、私たちの体を構成する細胞膜の主な成分であったり、エネルギーを蓄えたりする栄養源です。
食品からとる量が少なすぎると健康リスクを高めることがあります。
一方で、脂質は糖質や、たんぱく質に比べて、同じ量当たりのエネルギーが大きいため、とりすぎた場合は肥満などによる生活習慣病のリスクを高めることも知られています。
そのため、飽和脂肪酸やある種の不飽和脂肪酸には、食品からとる量の基準が定められています。
そして、トランス脂肪酸については、食品からとる必要がないと考えられています。
 
トランス脂肪酸をとりすぎると、血液中の悪玉(LDL)コレステロールを増やすだけでなく、善玉(HDL)コレステロールも減らしてしまいます。
 飽和脂肪酸よりも血管の壁を厚くさせやすく、動脈硬化をより促進させる原因となることが示されています。

 
神戸大学での研究では、特に59歳以下の若年層で、肥満の患者さんトランス脂肪酸の摂取量が多いと指摘されています。
トランス脂肪酸の摂取量が多いと、LDLコレステロール、中性脂肪、超悪玉といわれるRLP-コレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らしました。
心筋梗塞や狭心症の群ではトランス脂肪酸の濃度が高かったことより、発症の原因としてトランス脂肪酸の摂取量が多いことが考えられています。

 
イメージとしては働き盛りの忙しい世代、コンビニ食や揚げ物が多く、「the男飯」が好きな方が注意ですね。

 
このようにトランス脂肪酸は天然や工業的に作られており、とりすぎると動脈硬化を促進させてしまいます。
最近は日本の企業努力によって減らされつつあります。
次回はトランス脂肪の含有量について調査した結果をまとめたいと思います。
 
 

2018-09-04 16:30:14

トランス脂肪酸とは

トランス脂肪酸とは
猪岡内科
糖尿病療養魔導士 中村郁恵
 
前回は、トランス脂肪酸trans-fatty acid)」がなんとなく危険なもので、日本では規制や表示がなされていないことをお話ししました。
今回は、トランス脂肪酸について少し細かくまとめたいと思います。
 
【あぶら】
あぶらには、常温で液体の「油」と固体の「脂」があります。
この油脂は、脂肪酸グリセリンという分子からできています。
 
脂肪酸は、炭素(C)の原子が鎖状につながった分子で、その鎖の一端に酸の性質を示す
カルボキシル基(-COOH)の構造を持っているのが特徴です。
←脂肪酸
 
 
グリセリンは脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)と結合できる手を3本持っており、グリセリンに脂肪酸が3個つながったものは
「トリグリセリド」と呼ばれています。
私たちが普段食べている油脂の成分の多くはトリグリセリドです。
エネルギー源として使われる脂肪酸は、私たちの体内でトリグリセリドとして蓄えられています。
血液検査の中の「中性脂肪(TG)」とは、このトリグリセリドの血液中の濃度を測定したものです。
 

【飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸】
脂肪酸は、鎖の長さや炭素の二重結合の数と位置により、たくさんの種類があります。
大きくわけると、炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸炭素の二重結合がある不飽和脂肪酸の2種類です。

 
不飽和脂肪酸は、炭素間の二重結合があります。
その二重結合のまわりの構造の違いにより、シス型とトランス型に分けられます。
 
【シス型とトランス型】
脂肪酸の場合は、水素原子(H)が炭素(C)の二重結合をはさんでどの位置にいるかで
シス型とトランス型に分けられます。
 
シス(cis)とはラテン語で“同じ側の” ”こちら側”という意味で、炭素(C)の二重結合に対して水素原子(H)が同じ側にあるものです。
トランス(trans)とは“あちら側” ”横切ってという意味で、炭素(C)の二重結合に対して水素原子(H)が反対側にあるものです。

 
さて、冒頭で「あぶら」には、常温で液体の「油」と固体の「脂」があると書きました。
構造式もでたので、少し融点の話をします。
固体では、脂肪の分子はできるだけうまくくっつきあっています。
互いにぴったりと接触しあっているほど、そこに働く分子間の力は強く、それだけ融点が高くなります。


トランス脂肪酸は鎖のよじれが小さく、まっすぐな形なため、お互いに密に詰まりやすく融点が高くなります。
シス脂肪酸の鎖は二重結合でよじれているため、お互いに接触しづらい形です。
そのため、分子同士が離れ離れになりやすく、融点が低くなります。

 
天然に作られる不飽和脂肪酸のほとんどは、炭素間の二重結合がすべてシス型です。
これに対して、トランス型の二重結合が1つでもある不飽和脂肪酸のことを
トランス脂肪酸」と呼びます。

 
【まとめ】
あぶらはグリセリン脂肪酸からできています。
脂肪酸には二重結合のない飽和脂肪酸、二重結合のある不飽和脂肪酸があります
さらに、不飽和脂肪酸は二重結合をはさんだ水素原子の位置によりシス型トランス型にわかれます。
このトランス型の二重結合が含まれた油脂をトランス脂肪酸とよばれます。
トランス型の脂肪酸は直線型のため、分子同士が密になりやすく、融点が高くなります。


 
 
 
 
 

2018-07-30 16:22:57

トランス脂肪酸

トランス脂肪酸 ~他国と日本の比較~
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
 
5月14日、世界保健機関(WHO)は世界の加工食品から製造されたトランス脂肪酸を
徐々に排除する戦略的行動指針を発表しました。

そこで、今回は各国でのトランス脂肪酸の取り扱い方について書きたいと思います。
 
【WHOはトランス脂肪酸の排除を計画】
2003年、WHOでは、トランス脂肪酸の摂取量を摂取エネルギーの1%(約2g)未満にするよう勧告しています。
しかし、「トランス脂肪酸」の認知度や危険性があまり知られていないことが現状にあり、
意識して食品を選ぶ消費者は多くありません。
 
そして、トランス脂肪酸に起因する心血管疾患で、毎年5万人超が死亡しています。
そのため、食品からトランス脂肪酸を排除することで、みんなの健康と生命を守ることにつながるとされています。
2018年5月14日、世界保健機関(WHO)は世界の加工食品から製造されたトランス脂肪酸を徐々に排除する戦略的行動指針を発表しました。

 

【現在の各国の規制】
各国のトランス脂肪酸の規制を表にまとめたのでご覧ください。

このように規制や表示の義務をしている国は多くあり、早い国では2003年よりなされています。 表にもある通り、アメリカでは今年6月16日、米国食品医薬品局(FDA)よりトランス脂肪酸の食品添加物を原則禁じるという決定が下されました。
次に日本での取り扱いについてお話しします。

【日本でのトランス脂肪酸の扱い】
日本ではまだ、トランス脂肪酸の規制も表示の義務もなされていません。
理由は、食品安全委員会で「大多数の日本国民のトランス脂肪酸摂取量は、WHOが推奨する総エネルギー比1%未満を下回っており、通常の食生活では健康への影響は小さい」と考えられているからです。

 しかし、平均値でWHOの目標をクリアしていても、それは日本人として平均的な食生活を営んでいる場合のことです。
現実には、東京大など8大学のグループによる日本で初めての本格調査で、目標値である1%を越えた人が30~40代の女性で3割を超えたという結果がでました。
食の嗜好の多様化により、毎朝パンの人、洋食が多い人、コンビニ弁当やお惣菜、揚げ物やお菓子が好きな人など
トランス脂肪酸を食べすぎている人は確実にいると思われます。

表示義務があれば、消費者は食品にトランス脂肪酸がどのくらい入っているか知ることができます。
消費者にも知る権利は欲しいところですね。
 
 最近は酪農家が減っていることが深刻になり、原料の生乳も減り、国産バターは高価格化が続いており、バターの代わりにマーガリンを買う人も多いですね。
自分の買っているマーガリンには、トランス脂肪酸がどれだけ入っているのかとても気になるところです。

トランス脂肪酸をとりすぎると何となく危険と分かったところで、次はトランス脂肪酸について説明していきたいと思います。
 

2018-07-30 16:12:17

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