猪岡内科コラム
花粉症について③ 2023年5月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
日本では森林面積の28%が花粉症の原因といえるスギとヒノキで占められています。
特にスギは18%と日本にある人工林の中では最も多い木です。
なぜ、これほどまでに杉が植えられてしまったのでしょうか。
それは、1950年代から1970年代に行われた、拡大造林政策が始まりでした。
戦後は、材木の需要が高まり、さらに住宅建設ラッシュがありました。これにより、質よりも多くの木が必要だということになり、成長が早いスギやヒノキを植える拡大造林政策を行ったのです。
その後も、スギは植え続けられただけでなく、外国産の材木の登場により、売れることなく放置されることになってしまいました。
スギの成長は30年すると花粉を飛ばし始め、それから100年は勢いが止まらないといわれています。
近年では花粉か少ない品種の杉も開発されていますが、杉の木は二酸化炭素の吸収率がとても高く、地球温暖化を防ぐ役割を担っているので伐採されることは考えにくいです。
そのためこれからのスギによる花粉は増え続けることが考えられています。
先月は内服薬を中心に解説したので点眼液についてまとめたいと思います。
花粉症の時期は目のかゆみが非常につらいですが、目をかいてしまったら、角膜を傷つけてしまいます。飲み薬でも多少は効きますが、やはり目のかゆみに一番良いのは点眼薬です。
【花粉で目がかゆくなる原因】
目からスギ花粉を外に出そうとする防御反応です。かゆくなることで目が潤されて、結果として花粉を目の外へ追い出そうとします。
その防御反応は以下のようになります。
- 気中に浮遊空する花粉が目に侵入します。
- マクロファージが異物と認識して花粉を貪食します。
- マクロファージがT細胞、そしてB細胞へとバケツリレーのように花粉の情報を次々に渡します。
- 花粉が次に入ってきたときに撃退するために、B細胞がIgE抗体を作り、肥満細胞に保管しておきます。
- 花粉が再び侵入して、肥満細胞にくっついた時に保管しておいたIgE抗体が花粉にくっつく。
- IgEをきっかけに、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます。

この放出されたヒスタミンなどの物質が目の神経や血管を刺激して、かゆみや充血を生み出します。目のかゆみや充血が起こると、涙が出てきます。涙によって花粉を目の外に追い出そうとするのです。
【点眼液】
当院で取り扱っている点眼液は
アレジオン、リボスチンと2種類あります。
どちらも抗ヒスタミン薬と呼ばれる点眼液ですがそれぞれ特徴があります。
【点眼液の作用】
アレジオン点眼液もリボスチン点眼液も第2世代の抗ヒスタミン薬として目に働きます。
抗ヒスタミン点眼液は、アレルギー反応により放出されたヒスタミンの働きを邪魔し、ヒスタミンが引き起こすさまざまなアレルギー症状をおさえます。
作用機序は、ヒスタミンが結合するヒスタミンH1受容体を遮断することによります。その結果、目のかゆみや充血を即効で抑える効果が期待されます。
さらにアレジオン点眼液には、もう一つの効果があります。
それは、「ケミカルメディエーター遊離抑制作用」です。

肥満細胞を安定化させて、結果として肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの遊離・放出をおさえる作用です。こちらはアレルギー作用機序の④・⑤で登場する肥満細胞が、IgEを放出するのを防ぐ効果があります。
リボスチン点眼液は抗ヒスタミン薬のみでケミカルメディエーター遊離抑制作用はないお薬です。
アレジオンの良い点は、コンタクトレンズを装着したまま点眼できる点です。アレジオンは2014年12月から防腐剤を、ベンザルコニウムからリン酸水素ナトリウムとホウ酸に変更しました。
ベンザルコニウムはコンタクトレンズが傷つき、同時にコンタクトレンズに吸着して直接角膜を傷つけてしまいます。一方でリン酸水素ナトリウムとホウ酸の成分は、ソフトコンタクトレンズに吸着されないため装着したまま点眼することも可能となりました。
それぞれのまとめです。
●アレジオンLX点眼液0.1%
抗ヒスタミン作用とケミカルメディエーター遊離抑制作用、2つの働きにより目の症状を抑える。
用法容量 通常、1回1滴、1日2回(朝、夕)点眼する
薬価
541.5円/1mLあたり 1本5ml
コンタクトレンズ可
●リボスチン点眼液0.025%
抗ヒスタミン作用により目の症状を抑える
用法容量 通常、1回1〜2滴を1日4回(朝、昼、夕方及び就寝前)点眼する
薬価
98.3円 /1mLあたり 1本5ml

薬価が5倍ほど違いますが、用法容量をみるとリボスチンのほうが2-4倍ほど多く使用するため、思ったより大きな差はありません。
コンタクトをしておらずこまめに目薬したい人はリボスチン点眼液、コンタクトをしている人、目のかゆみが酷い人はアレジオン点眼液をお勧めします。
もう少しで花粉シーズンも終了ですね。
天気の日は外に出て体を動かしましょう。
2023-04-24 11:47:38
花粉症について② 2023年4月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
【花粉症の有病率って?】
2008年に行われた全国的な鼻アレルギー(花粉症)の有病率調査では、国内の約4割の人がアレルギー性鼻炎と答え、花粉が原因の鼻アレルギーは3割にものぼることが分かりました。そのなかでも、スギを原因とする花粉症は26.5%と、1998年の調査結果に比べ10ポイントも増加し、約4人に1人が発症しています。全国でも特に患者が多いと言われる東京都の調査では、スギ花粉症の有病率は3割近くにのぼります。
また、30・40代に多かった花粉症が、近年では花粉の飛散量の増加とともに、低年齢化が進み、若いうちに発症する人が増えています。10代でも約3人に1人が、10代以下も約15%近い人が花粉症を発症していたことが分かりました。2008年の調査から約10年近くたった現在ではさらに増加しているものと思われます。
日本では60種類もの原因花粉があり、スギやヒノキだけでなく、シラカンバ、ブナ、ハンノキ、ケヤキ、コナラ、ブタクサ、ヨモギなど、1年中、何かしらの花粉が飛んでいるので注意が必要です。
【花粉症の治療薬】
一般的な抗ヒスタミン剤について解説します。
【抗ヒスタミン剤の効果と作用機序】
肥満細胞から放出されるヒスタミンの働きを抑えることでアレルギー反応を抑えて花粉症によるくしゃみや鼻水、咳など、蕁麻疹による皮膚の腫れや痒みなどの症状を改善します。

●薬理作用
花粉症などのアレルギー性鼻炎、蕁麻疹などは食物、花粉、ハウスダストなど何らかの原因により体内のアレルギーを引き起こす物質が放出されることで症状があらわれます。
ヒスタミンは、アレルギー反応などを引き起こす体内の神経伝達物質のひとつで、H
1受容体(ヒスタミンH
1受容体)へ作用することで、くしゃみ、鼻水などのアレルギーの諸症状を引き起こします。
抗ヒスタミン剤はH
1受容体への阻害作用によりヒスタミンの働きを抑えて、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などによる症状を改善させます。
また抗ヒスタミン作用により脳の活動が抑えられるために
副作用として眠気などがあらわれる場合があります。
薬の種類によって強さや飲み方の特徴が違うので解説していきます。
【薬剤の特徴の比較】
●強さの比較
抗ヒスタミン薬には大きく分けて第一世代、第二世代があります。
第一世代の「ポララミン」などは作用が強く、ポララミンにステロイドを配合した「セレスタミン」はさらに強力です。
第二世代の抗ヒスタミン薬は、第一世代よりも弱めですが、副作用の眠気も抑えられるため、一般的によく処方されています。

第二世代間の正確な比較試験はありませんが、目安としては以下のようになります。(個人差があります。)
●副作用の比較
脳内ヒスタミン受容体占有率(眠くなりにくさの目安)は以下の通りです。

添付文書に「眠気による運転注意」の記載がないのは「アレグラ」「クラリチン」「ビラノア」です。
抗ヒスタミン作用による眠気は耐性ができるといわれているため、しばらく服用していると弱くなる場合がありますが眠気の出やすい薬を使用する際は車の運転などには注意しましょう。
●速効性の比較
第二世代の抗ヒスタミン薬には「季節性の患者に投与する場合は時季の前から服用を開始することが望ましい」とある通り、安定した効果を発揮するまでに時間がかかることがあります。
その点、第一世代は比較的速効性に優れます。
「内服で第二世代、頓服で第一世代」といった併用療法も行われることがあります。
当院取り扱いしている薬剤の一覧です。
●アレジオン
エピナスチン製剤
通常、1日1回の服用で1日効果が持続します。

●フェキソフェナジン(=アレグラ)
フェキソフェナジン製剤
通常1日2回服用します。 他の同系統の薬剤に比べ、一般的に薬効がマイルドで眠気の副作用が少ないため、高所での作業や自動車の運転などへの危険性が少ない。

●ビラノア
ビラスチン製剤
通常、1日1回の服用により、速やかに効果が発現しその効果が1日持続します。
通常「空腹時」に服用します。(食後に服用した場合、空腹時に比べて薬の吸収が低下する可能性があります)

●ルパフィン
ルパタジン製剤
通常、1日1回服用します。
ルパフィンは他の薬と同様に抗ヒスタミン作用を持ちますが、ほかに抗PAF作用という働きを持つという特徴があります。
PAFとは血小板活性化因子のことで、血管を広げる作用や血管と周りの組織の間で水分などが行き来する血管透過性を持ち、鼻づまりや鼻水の原因となります。ルパフィンはPAFのはたらきをブロックして鼻づまりや鼻水の症状を抑えるように働きかけます。
作用や副作用に個人差があるため、自分のライフスタイルに合ったお薬を選びましょう。
花粉症の症状を感じたら早めの対策を
今年は花粉の散布量が過去最多と言われており、これから3月、4月のピークを迎える予想で、シーズンの花粉総数は昨年の1.2~1.5倍に達する予想です。症状を重くしないためにも、外出時には、花粉に触れないことが大切です。
サングラスやメガネ、マスク、帽子、そしてツルツルとした花粉を落としやすい服装を心がけて帰宅したら、玄関に入る前に花粉を払い、うがいや顔を洗う習慣をつけましょう。
2023-04-24 11:39:51
悪玉アディポカイン2023年2月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
深々と冷え込む季節になりました。皆さん暖かくしてお過ごしでしょうか。
さて、前回はアディポカインに善玉と悪玉があり生活習慣の乱れにより肥満となることで悪玉アディポカインが増えてしまうことをお話ししました。
今回は代表的な悪玉アディポカインについて紹介したいと思います。
【代表的な悪玉アディポカイン】
TNFαとIL-1β
炎症を引き起こす作用のある
TNFαと
IL-1βは主に白血球の一種であるマ
クロファージから分泌されていますが、貯まった内臓脂肪の中にある大型脂肪細胞からも分泌されています。
そのため、
肥満となり脂肪細胞が大きくなると悪玉アディポカインが多く作られてしまいます。
●TNFα
TNFαは Tumor Necrosis Factor-αの略で和訳すると腫瘍壊死因子です。
名前の通りに「がん細胞に対して出血性の壊死をさせるように働きかける因子」として同定されました。
「がん細胞を破壊してくれる因子」と聞くといい細胞のような気がしてしまいますが、代表的な悪玉なのでその働きについて述べていきます。
●TNFαと疾患の関連
【TNFαと骨粗しょう症】
骨の代謝は
新しい骨を作る働きのある骨芽細胞の骨形成と
古い骨を壊す働きのある破骨細胞の骨吸収によりバランスを保っています。
TNFαはこの破骨細胞を増やす働きがあり、保っていたバランスが崩れて骨を壊す側に傾くために骨粗しょう症になりやすくなります。
TNFαのほかにも女性ホルモンが減ってくると破骨細胞を止められなくなる働きがあります。
【TNFαと関節リウマチ】
リウマチは自分の免疫が自分を攻撃してしまう、炎症性の自己免疫疾患です。
免疫や炎症に関わるTNFαは、リウマチの患者さんの関節の中でたくさん生産されます。
そして、TNFαは関節の痛みや腫れ、関節破壊を起こします。
それだけでなく、されにほかの炎症を起こす物質(炎症性サイトカインといいます)を作らせて関節リウマチを悪化させる働きもあります。
治療にはこのTNFαを抑える薬が使われています。

【TNFαと糖尿病】
インスリンと糖の取り込みについて
膵臓から分泌されたインスリンは、筋肉や肝臓にあるインスリン受容体に結合します。そして、細胞内のシグナル伝達機構を活性化させて細胞の中に糖を取り込みます。
TNFαはインスリンを細胞の中に取り込むためのインスリンの受容体や、細胞内にあるシグナル伝達機構のGLUT4を抑制します。(図参照)
そのため、インスリンは出ているのにうまく細胞の中に取り込めない状態であるインスリン抵抗性の状態になります。
インスリン抵抗性についてはそう簡単ではないためTNFαと関係のある代表的な例をお示ししました。

トランスロケーション (translocation) とはタンパク質の移動のこと。
例えば、糖輸送体のGLUT4はインスリンの刺激によって細胞内から細胞膜へと移動するトランスロケーションを起こします。
しかし、TNF-αによりその働きは阻害されます。
減量をかんばって肥満から適正体重になると肥大していた大型肥満細胞は小さくなり、悪玉アディポカインの分泌が減ります。
悪玉アディポカインの代表であるTNFαが減ると、インスリン抵抗性の改善が期待されます。
実際に自分のインスリンがきちんと出ている人では減量すること数か月で、お薬をのまなくてもよい状態にまで糖尿病のコントロールができることがあります。
【ストレッチ】
長期的な運動習慣は炎症性のアディポカインを減らし、抗炎症性アディポカインを増やすという結果が出ています。
寒い冬に負けないように室内でできるヨガのポーズを紹介します。

英雄のポーズ
期待できる効果☆
肩こり・腰痛の予防
脚のむくみの予防
歩行時のふらつき・つまずき予防
- イスに浅く腰かけ、骨盤を起こせる程度に脚を大きく開きます。
かかとを軸に、左つま先を横に向けます。左ひざとつま先を同じ方向に向けましょう。
- 両手を腰におき、できるだけ骨盤を起こし、背中をまっすぐにしましょう。
- 息を吸いながら左手を真横に上げ、目線を右側に向けます。余裕がある方は、右手も肩のラインまで上げます。3〜5呼吸キープしましょう。お腹の力を使って上体を保ちます。肩の力は抜いて、リラックスしましょう。
- 息を吐きながら両腕を下ろし、正面を向きます。
反対側も同様に2〜5をおこないます。
寒さに負けずに体を動かして暖めていきましょう。
2023-03-03 11:50:56
花粉症について① 2023年3月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
3月上旬は肌寒い日々が続きますが、桜のつぼみも膨らんできて暦上では春になりました。春は卒業や新生活のシーズンでもありますね。
日本人の約4割は花粉症と言われており、3月はスギ花粉が飛び交う季節でもあります。花粉症について特集していきたいと思います。
【花粉症の症状】
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の代表的な症状としてあらわれるのは鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの3大症状に加え、目のかゆみなどです。
風邪の症状と似ている部分もありますので症状の違いを載せていきます。
鼻水●風邪などによっておこるやや粘性が高く黄・黄緑がかった鼻水とは違い、花粉症の鼻水は「水のような」粘り気がなくサラサラした透明のものが止まらずに出てきます。
鼻づまり●鼻粘膜が腫れて鼻からのどへの通り道が狭くなることによって、鼻づまりが起こります。
口で呼吸をしがちになりますので、口の渇き、咳といった症状が出たり、においを感じにくいため食べ物の味が分かりづらくなったりします。
くしゃみ●くしゃみは、鼻の粘膜についた花粉を取り除こうとして起こる症状です。
花粉症のくしゃみは、風邪やインフルエンザの際のくしゃみより回数も多く、ほとんどの花粉症の人が悩まされる症状です。
その他にも症状が重い方は、皮膚のかゆみ、頭痛、倦怠感や寝つきにくいといった症状が伴うこともあります。
【花粉症を発症する原因とメカニズム】
花粉症とは、鼻腔内に入ってきたスギ等の植物の花粉に対する免疫反応によって鼻水などの症状が引き起こされることをいい、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。
メカニズムとしては、アレルゲンが鼻腔内の粘膜に付着すると、体内に抗体が作られマスト細胞という細胞に結合します。
その後再びアレルゲンが侵入すると、マスト細胞からアレルギー誘発物質が放出されることにより鼻水等のアレルギー反応が引き起こされます。

また、花粉症の他にダニなどのアレルゲンによって引き起こされる鼻炎は通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれます。最近では花粉症と通年性アレルギー性鼻炎の併発や、複数の花粉に反応する花粉症など、ほぼ一年中症状に悩まされるという人も少なくありません。
【鼻の症状を引き起こす原因とメカニズム】
鼻に花粉が入ると、下図のような仕組みで症状があらわれます。
- 空気中に浮遊する花粉が鼻に侵入します。
- 花粉が鼻の細胞内のマスト細胞にくっつくと、ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン、PAFなどの物質を放出します。
目の症状を引き起こす原因とメカニズム
目に花粉が入ると、下図のような仕組みで症状があらわれます。
- 空気中に浮遊する花粉が目に侵入します。
- 花粉が目の粘膜内のマスト細胞にくっつくと、ヒスタミンなどの物質が放出されます。
- 放出されたヒスタミンなどの物質が目の神経や血管を刺激して、目の諸症状を発症します。
季節を問わず、いつまでも花粉が飛散し、花粉の種類もかなり多いのが関東です。春先にピークがくるスギやヒノキ科だけではなく、秋のブタクサ属をはじめ草本花粉の時期も長いのです。

今年は特に花粉の散布量が多いそうです。
症状を軽くするためにも、本格的に花粉が飛散する前に先手を打って抗アレルギー薬を飲んでおくことで症状が緩和されるように効果を発揮してくれるので対策してみましょう。
2023-03-03 11:35:34
アディポカインにも善玉と悪玉 2023年1月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
新しい年になりました。皆さまには健やかに新年をお迎えのこととこころよりお慶び申し上げます。寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
前回の続きで善玉アディポカインと悪玉アディポカインについて触れていきたいと思います。
【善玉と悪玉】
コレステロールは良いコレステロール(LDL)と悪いコレステロール(HDL)
腸内細菌も善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌)悪玉菌(大腸菌)に分けられているように世の中はよく良いものと悪いものに分かれていますね。

それと同じように、アディポカインも善玉と悪玉に区別されています。
悪玉アディポカイン
(代表例は TNF-α、PAI-1)
糖尿病になる原因のひとつのインスリン抵抗性を促進させたり、動脈硬化のもとになるプラークを形成するための血栓をできやすくさせて動脈硬化を促進させる働きを持っています。

善玉アディポカイン(代表例は アディポネクチン、レプチン)
インスリン抵抗性を改善させて動脈硬化を予防します。

脂肪細胞は善玉アディポカイン、悪玉アディポカインのどちらも産生します。
腸内細菌やコレステロールのように、良玉と悪玉のバランスを保っていればいいのですが、その産生能は生活習慣などにより悪玉の方へ傾いたりします。
内蔵脂肪が蓄積してくると脂肪細胞が肥大化してしまい、産生時の各種アディポカイン遺伝子の発現パターンが異なってきます。
その結果、善玉アディポカインの分泌が減り、悪玉アディポカインの分泌が増えてしまいます。

肥満でない人の脂肪組織には、炎症を抑制する免疫細胞(M2 マクロファージ Treg iNKTなど)が多く存在していますが、肥満となり脂肪細胞が肥大化するとこの抑制側に働いている免疫細胞が減ってしまいます。
加えて、肥満になることで脂肪細胞に炎症を促進する免疫細胞(M1 マクロファージ CD8 T細胞など)が外部から脂肪組織内に浸潤してきます。
こうした現象は、太った脂肪細胞が炎症を起こす免疫細胞を引き寄せるアディポカインを生産してしまう原因と考えられています。
アディポカイン以外にも脂肪細胞から出される脂肪酸(FFA)や高血糖な状態がマクロファージなどの炎症性免疫細胞を活性化する機序も考えられています。
このように肥満が原因となって顕著になる肥大化した脂肪細胞から出る悪玉アディポカインや、脂肪酸、高血糖などが引き起こす炎症免疫細胞など、さまざまな要因で炎症反応が起こり、動脈を傷つけて動脈硬化を促進させています。
長期的な運動習慣は炎症性のアディポカインを減らし、抗炎症性アディポカインを増やすという結果が出ています。
寒い冬に負けないように室内でできるヨガのポーズを紹介します。
★ハイランジのポーズ
期待できる効果
脚のむくみ予防 腰痛の予防 歩行時のふらつき・つまずき予防

写真では両手を上げていますが、シニアヨガでは安全のために片手を椅子の背もたれに置いた状態で行いましょう。
- 左側を向いて、イスに横向きに座ります。右のお尻がイスからはみ出るぐらい、浅く腰かけましょう。
- 右脚を後ろにひき、つま先を立てます。右の太もものつけ根が伸びるところまで後ろに引きましょう。ひざは曲がっていて構いません。
- 両手で左太ももを押し、できるだけ骨盤と上体を起こします。
- バランスがとれれば、左手をイスの背もたれにおきます。右手を下ろしましょう。
-
- 息を吸いながら右手を上にあげます。右脚のつけ根、お腹、胸、脇の下を心地よく伸ばします。余裕があれば目線と胸を斜め上に向けます。3〜5呼吸キープしましょう。
反対側も同様に①~⑤をおこないます。
今回の話題は
肥満に伴い脂肪細胞が肥大化してしまうことにより、
・脂肪組織内に慢性炎症が起こりえること
・アディポカイン産生パターンが善玉から悪玉に変化すること
これらの変化が糖尿病や動脈硬化の悪化に関わっていること
でした。
脂肪組織内の慢性炎症がどのように絡んでいるかは興味深い点ですね。
新年もよろしくお願いいたします。
2022-12-21 11:42:52
善玉アディポカイン①
糖尿用療養指導士 中村郁恵
脂肪細胞から産生されるアディポカインが、肥満をはじめとする動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病に関わっています。そして、アディポカインは善玉と悪玉があり、現在600種類で作用は多岐にわたります。
今回はそのなかでも代表的な善玉のアディポネクチンを紹介したいと思います。
<レプチン>
レプチンは 脂肪細胞や消化管から産生されるペプチドホルモンで、アディポカイン研究に力が入ってきた頃の1994年に同定されて、ギリシャ語で『痩せる』を意味するλεπτός (leptos) から命名されました。
レプチンの代表的な働きは、消化管や血液などの栄養情報を脳の視床下部にある食欲制
御中枢に伝えて、ヒトに満腹感を感じさせます。
その結果、「食べたい」という欲求を抑えられます。
そして、レプチンは体脂肪率と正の相関があります。
脂肪が増えるとレプチンの分泌量も増えて、ある程度の脂肪が蓄積すると、レプチンの血中濃度は増えて体が肥満していることを脳に伝える「肥満信号」の役目を果たします。

しかし、レプチンには強力な食欲抑制効果があるのにも関わらず、肥満が進むと食欲が強くなり、さらに肥満になります。
それは、肥満患者の多くがレプチンに対する反応性が鈍くなる
「レプチン抵抗性」となっ
て十分な機能が発揮できていないためです。
血中のレプチン濃度は十分あるのに、脳内のレプチン量が少ないということが確認されているので、肥満のレベルが一定を超えるとレプチンが脳に届きにくくなるようです。
さきほども書いたように、レプチンの働きで特徴的なのは食欲を抑えることでした。
そして肥満患者さんはレプチン抵抗性があるために食欲も抑えられておらず、満腹感を感
じにくいようです。
糖尿病でもインスリン抵抗性という現象がありますね。
レプチンやインスリンなど、モノは分泌されているのに反応性がなくなるという現象が病態に関与するのはとても興味深いことです。
現在、レプチンを抗肥満薬として用いることができるようにするために、レプチン抵抗性を解除するさまざまな試みがなされています。

<アディポネクチン>
最近の健康番組などでは「やせホルモン」「長寿ホルモン」などといわれているアディポネクチンですが、一度は耳にしたことがあるでしょうか。
アディポネクチンは1995年に同定された
脂肪細胞から最も多く分泌されるアディポカインです。アディポとは「脂肪」ネクチンは「くっつく、接着」という意味で、血管の壁などにくっついて修復するという性質があることからアディポネクチンと名付けられました。
動脈硬化は、炎症反応を起こしながら血管の壁が厚くなるのですが、アディポネクチンは
その名前の由来のとおり、炎症が起きた血管の壁を修復して動脈硬化を防ぐ働きをしています。
動脈硬化の成り立ちについては、そのうち詳しく特集します。
そのほかにも肥満ではない状態で多く存在する「小型の脂肪細胞」から分泌されて、
インスリン感受性を高めて糖の代謝を促進させます。
実際、2型糖尿病でアディポネクチンの分泌が少なくインスリン抵抗性の状態にアディポネクチンを補充すると、糖尿病が改善されたという研究もあります。
最近では血糖値の高低により、食欲を亢進したり抑制したり切り替わる機能についても注目されています。
その他にも抗肥満、抗炎症作用、血管をひろげる働きを持つため血圧上昇を抑制するなど沢山の働きがあります。
このように体に良い作用をもたらす良いアディポカインです。

しかし、
内臓脂肪が蓄積して脂肪細胞が肥大化すると、その分泌量が低下します。
その結果、糖尿病や高血圧が誘導されます。
実際に肥満、糖尿病などの患者さんでは血中アディポネクチン値が低いという結果が出ています。
また、長生きしている人は血中アディポネクチン値が高いという報告もあります。
こうしたことから動脈硬化の治療薬として期待されていて、開発がすすんでいるようです。
2022-12-12 11:35:58
インフルエンザのお話 10月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
2020年2021年、わが国ではインフルエンザの流行は驚くほどに落ち着いていました。
しかし、今年に入り、珍しく6月に東京の小学校でインフルエンザが流行し学級閉鎖が起きたことがありました。
一般的にインフルエンザウイルスは南半球と北半球の
寒くて乾燥している地域を中心に飛び回って流行します。

そのため、今年の冬、日本でのインフルエンザの流行を予測する上で南半球の流行状況はとても参考になります。
現在のオーストラリアの流行状況を見てみましょう。
【インフルエンザの流行状況】
オーストラリアでも2020年および2021年は、日本と同様にインフルエンザ患者は極めて少数でした。
しかし、今年は4月後半より報告数が増加し、例年を超えるレベルの患者数となっており、インフルエンザ+コロナウイルスによる医療の逼迫が問題となっているようです。
オーストラリアのインフルエンザの感染状況(2017-2022)について次ページにグラフを参照します。

上のグラフはオーストラリアのインフルエンザの感染者数を時系列で年度別に見たものです。
過去5年間の平均を表すグラフは
黄色で示されており、2021年、2020年は
水色、黄緑で南半球においてもインフルエンザは流行しなかったため平坦なグラフで示されています。
今年の感染状況を表す色は
赤色です。
2022年の感染状況を示す
赤色のグラフは
過去数年間よりも感染がはるかに早く始まり、勢いよくピークに達しました。
オーストラリアでは4月下旬に増加し始めて、その後、5月下旬にピークに達します。これを北半球の流行で示すと
10月下旬に増加し、11月下旬にピークに達するイメージです。
そして7月下旬までに、オーストラリアのインフルエンザシーズンはほとんど終わっていました。(これは北半球の1月下旬頃です。)
したがって、これらのデータに基づいて、インフルエンザの症例は2022年10月に増加し始め、2022年11月と12月にピークに達すると予想されます。
次ページからは、インフルエンザの流行に備えたワクチンの接種について変更になった点をお知らせします。
【ワクチンの同時接種が可能となりました】
日本では今までは予防接種の前後に2週間の間隔が必要でしたが、
令和4年7月22日開催より
新型コロナワクチンと
インフルエンザワクチンとの
同時接種が可能になりました。(下の図参照)

厚労省よりワクチン接種については、諸外国からの報告より単独で接種した場合と比較して、有効性や安全性が劣らない等の理由より可能となるようです。
以下に諸外国の結果を抜粋して記載します。
・イギリスからの報告では、新型コロナワクチンの追加接種(ファイザー、アストラゼネカ)
ワクチン単独接種と比べ、インフルエンザワクチンとの同時接種では、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価の有意差はありませんでした。
さらにファイザー社ワクチンとの同時接種においてインフルエンザの一部の株に対するHI抗体価の上昇が見られた。
・すべてのグループにおいて、ワクチン接種21日後の抗s IgG抗体価及び、
インフルエンザHI抗体価は単独接種群、混合接種群それぞれのグループと比較して同様であった。
・米国からのモデルナ+インフルエンザワクチンでも同様な結果となりました。
・副反応の発生状況について
接種後7日間に報告された局所副反応
同時接種群: 86.0% モデルナ単独: 91.3% インフルエンザ単独:61.8%
接種後7日間に報告された全身副反応
同時接種群: 80.0% モデルナ単独: 83.7% インフルエンザ単独:49.4%
新型コロナウイルスワクチン単独群とインフル+コロナ同時接種群では大きく差のないような副反応の報告でした。
・諸外国でのワクチン同時接種の推奨状況について
アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツでは新型コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が可能となっており、
国連でも両方のワクチンの接種率向上のため同時接種を可能とする基本方針が示されています。

また、日本ではインフルエンザワクチン以外の予防接種については、これまでと同様に片方のワクチンを受けてから2週間後に接種することが可能ですが、医師の判断により同時接種が可能です。
なお、緊急性のある創傷時の破傷風トキソイド等のワクチンは、例外として2週間を空けずに接種することが可能です。
当院でもインフルエンザワクチンの準備が整い次第、同時接種が可能となります。また、接種可能となる日時についてはホームページや院内掲示にてご案内いたします。
これから寒くなってきますので暖かくしてお過ごしください☕
2022-10-17 12:11:51
残暑が残る9月の熱中症対策
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
まだまだ残暑が残る季節ですね。
今年の夏は世界的にとても気温が高く、夏はエアコンがなしでも涼しく過ごせるイギリスでは初めて40度を超える気温を記録して、街中が暑さで参ってしまったり、日本では例年より早い6月下旬に梅雨明けしてから7月8月と猛暑が続きました。
日本では太平洋高気圧とチベット高気圧の“ダブル高気圧”となり、最高気温が35℃以上の猛暑日が続いたり、フェーン現象が起こりやすい場所では40℃前後の酷暑になる日もあり厳しい暑さをもたらしました。

その後、9月にかけても南からの暖かな空気が流れ込みやすく、秋のお彼岸の頃までは残暑が厳しくなる見込みです。
環境省によると、全国19都市と沖縄における熱中症患者の10%弱は9月に発生しています。
9月も暑さに負けずに元気に過ごすために、熱中症対策していきましょう。
そこで今回は、熱中症の時におすすめの食事について載せていきます。
【熱中症予防に必要な栄養素について】
暑い夏は食欲が低下し、さっぱりとした口当たりの良い麺類や冷たい飲み物、デザート類が食べたくなりますね。
これらは糖質を多く含む食品です。
糖質は人間にとって大切なエネルギー源ですが、その糖質を
エネルギーに変える代謝にはビタミンB1が必要不可欠です。
まずはビタミンB1の働きについて考えてみましょう。
【ビタミンB1の働き】
B1の仕事① 糖質代謝の補酵素
B1といえば糖質の代謝です。
血液中の血糖(グルコース)は、細胞でピルビン酸になりエネルギー工場であるミトコンドリアの中に入ります。
下の図のようにピルビン酸がアセチルCoAになると、TCA回路がまわり始めます。
「ピルビン酸→アセチルCoA」の酵素
「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体では、補酵素のひとつが
ビタミンB1です。(紫の矢印)
ビタミンB1がほかにも
αリポ酸、B5、B2、B3が補酵素であるためにビタミン
B群は仲間で摂るのがおすすめです。

・B1の仕事② TCA回路の補酵素
B1の職場はTCA回路の中にもあります。
TCA回路の右下、山手線だと浜松町のあたりの場所に
αケトグルタル酸→スクシニルCoA があり、B1が補酵素です。(ピンク矢印)
B1が不足すると、糖質代謝がうまく行われずに、
エネルギー不足=疲れやすくなります。
重度のB1不足では、脚気(かっけ)と呼ばれており、主な症状は心不全、末梢神経障害、むくみです。
玄米食から白米食に移行した江戸で流行したのが有名です。
あとは、明治時代の陸軍でも流行りました。
夏は何となく疲れやすい気がしますが、糖質をしっかりエネルギーに変えるためにビタミンB1と摂取しましょう。

ビタミンB1を多く含む食材 豚肉・うなぎ・玄米・発芽玄米・大豆・モロヘイヤ・きのこ類 そら豆など
【ビタミンB1の吸収を良くする食材】
ビタミンB1の含有量が7倍にアップする“アリシン”が含まれている食材を接触的に一緒に摂取しましょう。

アリシンとは、にんにくなどの匂いのもとでイオウ化合物の一種で、ビタミンB1の吸収を良くし糖質の代謝を促進する働きがあります。
豊富に含まれている食材は、にんにく・ねぎ・玉ねぎ・にらなどです。
アリシンは切ったり潰したりすると作用するため、調理の際はすりおろしたり、細かく刻んでの使用が効果的です。
かんたん豚丼
材料 (2人分)
・豚肉 250-300g
・玉ねぎ 半分
・にんにく 1かけ
タレ:(砂糖 大1 酒 大1 醤油 大2 みりん 大1 お好みでゴマ 大1)
・千切りキャベツ 1つかみ
・万能ねぎ 少々
・白米 200g
- キャベツは千切りにして洗っておく。ニンニクをみじん切り、豚肉は1口大に、玉ねぎはくし切りに切る。
- 油をひいてニンニク、豚肉、玉ねぎを炒める。
- お肉、玉ねぎに火が通ったら、タレを絡める。
- ごはんを器によそって千切りキャベツを乗せる。
- キャベツをのせた白米に、具をのせて、万能ねぎを飾ったら完成!
残暑が残りますが栄養を取って乗り切っていきましょう。
2022-09-05 11:51:05
熱中症について 8月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
暑い日が続きますね。
今年は熱中症の救急搬送がとても多い印象です。
6/27~7/3日までの熱中症の救急搬送者数は、昨年は1300人、今年は14353人でした。
今年は梅雨明けが早く、6月末より猛暑が続いているため
昨年と比較して約10倍の方々が救急搬送されており、これは過去最多の記録のようです。
今年の7月のある暑い日に実際に宇都宮市で起きた出来事です。
37.9度の熱があり、全身がしびれていて、手足にこむら返りのような硬直する感覚があった10代の女性は両親に付き添われて来院しました。
医師が診察した時には、全身がけいれんしており目はとろんとして、あまり意思疎通ができない状態でした。
この日は暑い日でしたが、10代の女性は、室内でエアコンを使わずに過ごしており、のどが渇いていなかったために水分をとらずに過ごしていました。
手足に若干しびれている感覚があると思いながらもあまり気にせずにいたら、徐々に悪化して両親が病院に連れてきたということです。
両親もぐったりしている娘をみで驚いてしまい、とっさの判断で水分を取らせることに気が回らなかったと話していました。
患者さんの症状のほかに「水分をとらずにいた」「暑い日にエアコンを使わずにいた」ということから、医師は、Ⅱ度~Ⅲ度の熱中症であることも考えました。
このような場合には、大至急点滴で水分や電解質や糖分の補給を行いますが、
脱水で血管が細くなっており、全身がけいれんしている状態で、一刻も早く点滴の針を入れなければならない、そして今の時代は発熱している患者さんに対しては防護服を着て接することが必須で、不自由な中で処置をするには熟練した医療技術が必要とされます。
今月は熱中症の実際と、水分補給について特集していきたいと思います。
【熱中症の起こる場所】
熱中症は屋外の熱い場所で起こるようなイメージがありますが、実
際に44%は住居で起こっています。
屋内でも部屋の温度や湿度の高さ、風通しの良さを適度に保つことは熱中症を予防するうえでとても大切です。

家の中での熱中症発症のリスクとなるものは、
エアコンを使わずにおり部屋の温度が上がってしまうこと、入浴や睡眠中に汗をかいて水分が失われてしまい、水分補給を忘れてしまう事などが考えられます。
失われる水分の量について。
・入浴により800mlの水分が失われます。(41度のお風呂に15分入浴後30分安静時)
入浴の前後に最低でもコップ1杯ずつ水分を補給しましょう。
・呼気や皮膚から失われる水分の量(不感蒸泄)は、体重60kgの人が平熱、室温28℃の環境で1日に約900mlで、体温が1度上昇すると約15%増加すると言われています。
【水分補給で気を付けるポイント】
普段の水分補給と運動などをして汗をかいているときでは摂取するドリンクの種類を変えましょう。
〇日常生活時
のどが渇いていなくても定期的に水分をとるように心がけましょう。
一日の水分補給量は体重や年齢によって違いますので厚生労働省より出ている以下の計算式を参考にしてみてください。

例えば
60歳 50kgの方→60×30=1800ml 水分摂取量は1800mlです。
25歳70kgの方 70×40=2800ml 水分摂取量は2800mlです。
これらの水分を3回の食事や水分摂取からとることを目安にしましょう。
体が一度の吸収できる水分量は
200-250mlと言われています。
コップ1杯程度の水分を1日に6-8回に分けてこまめに補給しましょう。
日常生活での水分補給に適している飲み物はお水や麦茶などです。
緑茶やビールには利尿作用があるため、水分補給には適していないため、冷たいお水や麦茶、ルイボスティーなどがおすすめです。
〇運動をして汗をかいた時
汗をかいた肌をなめると塩辛い味がすることからわかるように、汗にはナトリウムが含まれています。
大量に汗をかいてナトリウムが失われたとき、水だけを飲むと血液のナトリウム濃度が薄まり、これ以上ナトリウム濃度を下げないために
水を飲みたい気持ちではなくなります。
同時に余分な水分を尿として排泄します。これが自発的脱水症と呼ばれるもので、この状態になる前に塩分を含んだ水分をとることで防ぐことができます。
熱中症予防の水分補給として、日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだ飲料を推奨しています。特に1時間以上運動をする時は4~8%の糖質を含んだものを摂取しましょう。
スーパーに売っているイオン飲料や経口補水液の利用が手軽ですが、
自分で作ることもできます。

*飲みすぎ注意*糖尿病・高血圧
糖を含んだ飲料が推奨される理由としては、腸管での水分吸収を促進することが挙げられます。主要な糖であるブドウ糖は、腸管内でナトリウムが同時にあると速やかに吸収されます。そしてそれらに引っ張られ水分も吸収されるというのがそのメカニズムです。
高血圧や糖尿病の方は、普段はお水や麦茶を飲んで、「汗をかく運動をするときだけ」と決めてスポーツドリンクの補給をしましょう。
適時水分補給をして暑い夏を乗り切りましょう。
2022-08-09 11:36:41