猪岡内科コラム
“痩せ菌”は本当にいる?
~最新研究で見えてきた腸内細菌のヒミツ~
2026年7月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
先日、糖尿病学会に参加してきました。
学会では「なるほど!」と思う内容がたくさんありましたので、これから少しずつ皆さんにもご紹介していきたいと思います。
第1弾のテーマは
「腸内細菌」 です。
みなさんは、
「同じような食事をしているのに、どうしてあの人は太りにくいんだろう?」
と思ったことはありませんか?
もちろん、体重には食事だけでなく、運動習慣や睡眠、ストレス、体温、お薬などさまざまな要因が関係しています。
しかし最近の研究では、それらに加えて
「腸内細菌」 も太りやすさや血糖値に関わっている可能性があることがわかってきました。
“腸の中にいる細菌の種類やバランスによって、太りやすさや血糖値の上がりやすさが変わるかもしれない”そんな研究が世界中で進んでいます。
【世界と日本の肥満率】
まずは世界の肥満率を見てみましょう。
アメリカでは約4割、イギリスやオーストラリアでは約3割の人が肥満とされています。
一方、日本の肥満率は約1割です。
近年は食生活の欧米化によって「日本人も太りやすくなった」と言われていますが、それでも世界的に見ると日本は肥満の少ない国に分類されます。
下の図は色の濃さと肥満度が比例している世界地図です。

国によって肥満率に大きな違いがある理由として、栄養や運動習慣、睡眠、文化的要素が知られています。
そして近年では、それらに加えて
「腸内細菌の違い」 も関係しているのではないかと考えられるようになってきました。
【海外で注目されている腸内細菌】
海外で特に注目されているのが、
「Akkermansia(アッカーマンシア)」という腸内細菌です。
オランダで発見された菌ですが、その後ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界中で研究が進められています。
ベルギーで行われた研究では、肥満やインスリン抵抗性のある人に
アッカーマンシアを投与したところ、インスリンの働きやコレステロール値に改善がみられ、体重にも変化がみられました。(-2.3㎏)
また2026年に報告された研究では、減量後にアッカーマンシアを摂取した人で体重のリバウンドが少なく、インスリン感受性も良好な傾向がみられました。
ただし、効果はなだらかで「飲めば痩せる」というほどの大きな減量効果が確認されているわけではありません。
現在は、代謝改善への可能性が期待され、欧米では健康食品やサプリメントとして実用化されています。
【アッカーマンシアが注目される理由】
アッカーマンシアは、肥満や糖尿病、脂肪肝、慢性炎症などとの関連が研究されている
「次世代の腸内細菌」のひとつです。
この菌の特徴は、腸の粘膜を守るバリアの
「ムチン」 と深く関わりながら生きていることです。

アッカーマンシアはこのムチンを利用しながら生きることで、腸内環境のバランス維持に関わっている可能性があります。
その結果として、
腸のバリア機能の維持、炎症の調節、代謝機能への関与
などが期待されています。
単に「腸の粘液を食べる菌」ではなく、
腸と共生しながら健康維持に関わる菌として注目されているのです。
ただ、
日本人でこの菌を多く持つ人は少なく、約10人に1人程度といわれています。
【日本人で注目されている腸内細菌】
日本人で注目されているのは
「Blautia(ブラウティア)」という腸内細菌です。
ブラウティアは
日本人の約9割が持っているとされ、健康な人の腸内によく見られる菌として知られています。
研究では、ブラウティアが多い人ほど肥満が少ない傾向が報告されています。
具体的には、腸内細菌全体に占めるブラウティアの割合は平均約3%とされています。食生活が乱れている人では1%以下まで減少することもありますが、健康的な人では約6%、食生活の改善によって7.5%程度まで増加したという報告もあります。
【ブラウディア菌が注目される理由】
注目されている理由は、食物繊維を利用して
短鎖脂肪酸 を作り出す働きにあります。
ブラウティアは、もち麦や大麦、野菜などの食物繊維を利用して増殖しますが、その際に作られるのが
酢酸などの短鎖脂肪酸 です。
以前は単なる代謝産物と考えられていた短鎖脂肪酸ですが、現在は
「腸の粘膜細胞のエネルギー源になる」「腸のバリア機能を保ち炎症を抑える」
「インスリン感受性や脂質代謝に関わる可能性がある」といった働きで、
健康維持に欠かせない物質として注目されています。
さらに、腸の神経やホルモンにも作用し、腸の動きを整える役割も期待されています。
【まとめ】
「この菌がいるだけで痩せる」という夢のようなお話ではありませんが、毎日の食事や運動の積み重ねによって少しずつ腸内環境が良くなる事がわかりました。
「腸内細菌で自分の健康のバロメータがわかる」という将来も近いかもしれません。
次回は腸内環境を整える食事についてまとめていきます。
2026-07-14 09:44:56
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帯状疱疹ワクチンと認知症について②
2026年6月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
前回は「帯状疱疹と2種類の予防接種」についての概要をまとめたので、表にしてみたいと思います。
項目
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生ワクチン (Zostavax®)
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組換え不活化ワクチン (Shingrix®)
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ワクチンの中身
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弱くした生きたウイルス
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ウイルスの一部のみ(不活化)
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接種回数
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1回
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2回(2〜6か月間隔)
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接種対象
|
健康で免疫力が十分な方
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高齢者でも安全
免疫力が弱くてもOK
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予防効果
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約50%
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約90%
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効果の持続
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約5年
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約10年以上
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認知症予防の可能性
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不明
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あり(Nature Medicine, 2024)
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副反応の目安
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軽い発熱・注射部位の赤みなどまれ
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注射部位の痛みや腫れ、発熱などあり、数日で治まることが多い
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自己負担
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2,500円(1回)
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6,500円×2回(合計約13,000円)
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※助成なし
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9500円(1回)
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22,000円×2回(合計約44,000円)
|
※助成の対象外の方はこちらの価格です。対象年齢は4ページ目に記載あり。
生ワクチン
(Zostavax®)は、注射が1回で済む、自己負担は少ない。
組換え不活化ワクチン
(Shingrix®)は、予防効果や持続力が高く、
認知症予防効果が期待されているというメリットがそれぞれあります。
今回はその
「帯状疱疹ワクチンと認知症」について解説していきたいと思います。
【帯状疱疹ワクチンと認知症予防の関係性】
帯状疱疹の予防ワクチンとして知られる
組換え不活化ワクチン(Shingrix®)が、最近注目されているのは
認知症予防の可能性 です。
「帯状疱疹のワクチンで、どうして認知症?」と驚かれる方もいるかもしれません。ここでは最新の研究成果をわかりやすくまとめます。
2024年にイギリスの国際的に権威ある学術誌
『Nature Medicine』 に、
英オックスフォード大学などによる研究が掲載されました。
この研究では、米国の医療データをもとに「
新しい組換え不活化帯状疱疹ワクチン(Shingrix®)と認知症の関係」を調べています。
研究の結果、Shingrix®を接種した高齢者では、接種していない方に比べて
認知症の発症を遅らせられる可能性 があることが示されました。
【研究の概要】
対象:米国の
65歳以上、約20万人以上 の健康記録
期間:約
6年間 の追跡
比較:
Shingrix®を接種した人 vs. 古い生ワクチン(
Zostavax®)を接種した人
インフルエンザや破傷風などの他の高齢者向けワクチンとも比較
【研究結果】
- Shingrix®を接種したグループは、接種していない人に比べて「認知症になるまでの期間が長くなる傾向」がありました。
- 数値で表すと、 診断されるまでの時間が平均17%延びたと報告されており、「約半年ほど認知症の症状が出るのが遅れた」と報告されています。
- 男女とも傾向は見られましたが、特に女性の方が効果的でした。
- 他に比較したインフルエンザ、破傷風などの一般的なワクチンと比べても、Shingrix®の方が認知症発症リスク低下の傾向が強く出ていました。
さらに、その後の2026年、
幅広い科学分野を扱う国際ジャーナル
「Nature Communications」より新しい論文が発表されました。
【研究概要と結果】
米国の65歳以上の高齢者を対象に、
2回接種したShingrix®接種者約65,800人と、非接種者263,200人を比較した結果、
- 『Shingrix®を2回接種したグループは、非接種群に比べて認知症リスクが統計的に有意に約51%低かった』という結果が示されています。
- このリスク低下は性別・年齢・人種・民族の各グループで一貫して観察されましたが、前回と同じく特に女性でやや強い傾向がみられました。
- さらに、他のワクチンとの比較でも(破傷風・ジフテリア・百日咳混合ワクチン)、Shingrix®の方が認知症リスク低下の傾向が強いことが確認されています。
この研究は、
Shingrix®接種が認知症発症のリスク低下と関連している可能性を示していますが、まだ
因果関係の証明には至っていません。
【
Shingrix®の2つの研究をまとめ】
① 2024年では
認知症発症までの時間が延びる傾向(約17%延長)にある
② 2026年の大規模研究では、
Shingrix®接種者は非接種者と比べて認知症
リスクが約50%低いという別の形の有意な関連が見られました。
【注意点】
この研究では
「認知症発症を遅らせる可能性がある」 と示唆された段階であり「ワクチンを打ったから必ず認知症を防げる」という確定的な予防効果はありません。
研究者も、因果関係を確認するために 今後さらなる研究が必要だと指摘していますが、今の段階で「
どうしてこのような結果になるのか?」と考えられていることがあります。
【なぜShingrix®が認知症のリスク低下につながると考えられているか?】
帯状疱疹の原因である
水痘・帯状疱疹ウイルスは、一度感染すると体の神経に潜んで長く眠ったままになります。
しかし、加齢や病気などで
免疫力が低下すると再び活動を始めることがあります。このとき神経や脳に炎症を起こす可能性があり、これが認知機能の低下に関係しているのではないかと考えられています。
Shingrix®を接種することは、まず帯状疱疹を防ぐことにつながります。
それによって神経や脳への負担が減り、炎症が起こるリスクも下げられると考えられています。
さらに
Shingrix®にはアジュバントとよばれる
免疫反応を強める成分が含まれています。この成分は体の免疫を活性化し、神経系の健康や脳の健康にもプラスの影響を与える可能性が議論されています。
まとめると、
Shingrix®は
Shingrix®は帯状疱疹を予防するためのワクチンですが、神経や脳への影響を抑えることで、
認知症のリスクや発症を遅らせる可能性があると考えられています。
帯状疱疹ワクチン接種を検討する際に、こうした追加のメリットもお役に立てればと思います。
【宇都宮市の助成について】
宇都宮市で
65歳以上の市民を対象に帯状疱疹ワクチンの助成を行っています。
今年、
65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳…と節目の年齢の方を対象に
5月に市よりお知らせのハガキが届いたかと思います。
対象の方の自己負担額(宇都宮市の場合)
①生ワクチン(Zostavax®) → 自己負担:約
2,500円(1回のみ)
②不活化ワクチン(Shingrix®)→ 自己負担:約
13,000円(6,500円×2回)
不活化ワクチンは2回接種が必要なので、
1回目を年度内の1月までに受けないと、3月末までに完了できないことがある点に注意してください。
66歳、69歳などの方は対象の年齢になったら助成を受けられて上記の負担額で接種できますが、お急ぎの方は
全額自費接種(生ワクチン9500円、不活化ワクチン22,000円)でも受けることができます。
詳しいワクチンの助成についての窓口は「
宇都宮市の保健所・保健センター」にお問い合わせください。
【まとめ】
帯状疱疹を予防するためには2種類のワクチンがあります。
生ワクチン
Zostavax®は1回接種で費用が比較的安く、手軽に受けられます。
不活化ワクチン
Shingrix®は2回接種で費用は高めですが、予防効果が高く持続期間も長いことが特徴です。認知症リスク低下との関連も報告されています。
市からハガキが届いた方は助成対象として自己負担を抑えて接種できます。
迷われている方はお気軽に医師へ相談してくださいね。
2026-07-14 09:40:43
帯状疱疹とワクチンについて①
2026年5月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
季節の変わり目は、風邪などで体調を崩し、免疫力が低下しやすくなります。そんな時に注意したい病気の1つに、
帯状疱疹(たいじょうほうしん)があります。
高齢者向け(対象年齢あり)に
帯状疱疹の定期予防接種が始まり、
自治体より助成を受けられるようになりました。
今月は「帯状疱疹とワクチン」について、来月では「帯状疱疹ワクチンの研究でわかってきていること」を解説していきます。
【帯状疱疹とは?】
帯状疱疹とは小さいころにかかる
「水ぼうそう」と同じウイルスが原因で起こります。初めて感染した時には水ぼうそうとして発症します。
多くの人が子供のころにかかり、感染して熱がでると発疹が出て水ぶくれになりますが、1週間程度で治ります。
しかし、ウイルスは治った後も体の神経節といわれる部分に潜んでいます。
健康で免疫力が強い間はウイルスの活動が抑えられていますが、高齢になり、病気などによって免疫力が下がった時に、再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し「
帯状疱疹」として発症します。

【帯状疱疹の症状】
体の片側だけ、ピリピリとした痛みが数日続いた後に、赤い発疹がでて水ぶくれになります。
場所は
胸~背中わき腹にかけて発疹が出る方が多いですが、腰やお腹、お尻、目の周辺、首、肩などウイルスの潜んでいる神経節のあたりに症状が出るのが特徴です。
痛みの程度は人によりますが、高齢になると「電気が走るような」「焼けるような」「針で刺されるような」強い痛みが出てしまうこともあります。
中には痛みが残ってしまう方もいて、それは高齢になるほど痛みが続いてしまうといわれています。
【帯状疱疹の治療】
帯状疱疹は、
発疹が出てから 72時間以内に抗ウイルス薬を飲むことが大切です。
早い段階で治療を始めることで、症状の進行を抑え、痛みを軽くする効果が期待できます。
また、帯状疱疹では皮膚の症状が治ったあとも神経の痛みが残ってしまう
「帯状疱疹後神経痛」が問題になることがあるので、発症早期に治療を行うことで、この神経痛が残るリスクを減らすことにもつながります。
もしも、「
ピリピリする痛みのあとに片側だけ発疹が出てきた」場合には、
できるだけ早めに医療機関を受診してくださいね。
【発症の多い年代】
宮崎県のデータでは80歳までに3人に1人は帯状疱疹を発症するといわれています。
下のグラフのように50歳を超えると徐々に帯状疱疹を発症する人が増えてきて、60~70歳代ではさらに急増します。
これは、糖尿病や高血圧といった慢性疾患を持つ方が増えて、免疫力が落ちてくるためです。
宮崎県の皮膚科学会のデータより引用
【帯状疱疹の予防】
帯状疱疹を予防するには
予防接種が有効です。
そして、2025年から予防接種が「任意→定期接種」へと変わり各自治体から
助成が出るようになりました。(次号で解説します。)
帯状疱疹は高齢になるほど発症や合併症(特に帯状疱疹後神経痛)が増えるため自治体では対象年齢の方に対して
積極的に予防接種を受けることを推奨しています。
予防接種には2種類あるので、その違いについて解説していきます。
【帯状疱疹ワクチンの種類と特徴】
帯状疱疹の予防には①
生ワクチン(Zostavax®)、②
組換え不活化ワクチン(Shingrix®) の2種類のワクチンがあります。
①
生ワクチン(Zostavax®)
生ワクチンは、弱くした生きたウイルスを使って体に抗体を作らせるタイプのワクチンです。
健康で免疫力が十分な高齢者向けで、
1回の接種で済みます。
予防効果は約50%、効果は5年ほど続きますが、免疫力が低い方は接種できない場合があります。
②
組換え不活化ワクチン(Shingrix®)
一方、組換え不活化ワクチンは、ウイルスそのものは入っておらず、ウイルスの一部だけを使った新しいタイプのワクチンです。
高齢者でも安全に接種でき、
2回の接種(2〜6か月間隔)が必要です。
予防効果は90%、効果は10年以上続くといわれています。
生ワクチンより効果が強く、長持ちするのが特徴です。
また、最近の研究では、
認知症リスクを減らす可能性も報告されています。
(Nature Medicine, 2024 次回詳しくまとめます)。
【副反応について】
①
生ワクチン(Zostavax®)
生ワクチンは、
50~60%の方に接種部位の赤みや腫れ、痛み、かゆみが出ることがありますが、ほとんどの方は軽く、数日で治まります。
発熱や倦怠感などの全身症状は数%、重篤な副反応はまれです。
②
組換え不活化ワクチン(Shingrix®)
組換え不活化ワクチンは、接種部位の痛みや赤み、腫れ、かゆみは
70〜80%の方に見られます。
全身症状としては倦怠感、頭痛、発熱、寒気、関節痛などがあり、特に2回目の接種後は10%の方が感じています。しかし、これらは通常数日で治まり、日常生活に大きな影響はほとんどありません。
重篤な副反応はごく稀で高齢者や免疫力が弱い方でも安全に接種できます。
両方のワクチンに共通することは、副反応は
「ワクチンが体に反応して抗体を作っているサイン」と考えてOKで、ほとんどの症状は軽く、数日で改善します。
しかし、
接種後に症状が強く出た場合は、すぐに医療機関に相談してください
次号では
「帯状疱疹ワクチンと認知症の予防効果」について最新の研究と
自治体からの助成について詳しく解説していきます。
2026-05-07 09:41:03
春の花粉症対策 ~症状の仕組みと予防法~
2025年4月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
春になると、「くしゃみが何度も出たあと透明な鼻水が止まらない」
「鼻づまりで息がしにくい」「目のかゆみや充血、のどや耳のかゆみ」
こんな症状に悩みませんか?
花粉症は、スギやヒノキなどの花粉に対して体の免疫が過剰に反応することで起こるアレルギー疾患ですが、今の季節にこれらの症状が出る場合は花粉症
の可能性があります。
【花粉症は増えている?】
日本では花粉症の患者数は年々増加しており、現在では
国民の約3〜4割がスギ花粉症を持つとも報告されています。
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会によると、
スギ花粉症の有病率は
1998年→16.2%、2008年→26.5%、2019年→38.8%とどんどん増えています。
花粉症はなぜ増えているのでしょうか?
花粉症が増えている理由には、いくつかの要因が関係していると考えられています。
① スギ林の増加
戦後、日本では木材確保のためにスギが多く植えられました。
現在その多くが成熟期を迎えており、大量の花粉を飛ばすようになっています。
そのため、春に飛散する花粉量は以前より増えていると考えられています。
最近は、花粉を出しにくい『無花粉スギ』も開発・植栽されていますが、まだ林全体のごく一部です。
花粉量全体を大きく減らすには数十年の時間がかかる見込みです。
② 大気汚染の影響
自動車の排気ガスやPM2.5、黄砂などの大気汚染物質は、鼻や気道の粘膜に炎症を起こしやすく、アレルギー反応が出やすくなります。
さらに、研究により
PM2.5や排気ガスが付着した花粉の表面構造が変化し、ヒスタミンの放出が増えることが示されています。
そのため、大気汚染+少量の花粉でもアレルギーの症状が出やすくなります。
③ 生活環境の変化(衛生仮説)
近年、生活環境が清潔になったことで、子どもの頃に感染症に触れる機会が減ったことも、アレルギー増加の一因と考えられています。
これは「衛生仮説」と呼ばれ、イギリスの疫学者 David P. Strachan によって提唱されました。
幼少期に感染症や微生物に触れる機会が少ないと、免疫システムが「過剰反応」しやすくなり、その結果、花粉など本来無害な物質に対してアレルギー反応を起こしやすくなるという説です。
【どうして花粉症が起こるの?】
花粉が鼻や目の粘膜に付くと、体はこれを『異物』と判断して免疫システムが反応します。
特に肥満細胞という免疫細胞が活発になり、
ヒスタミンやロイコトリエン、プロスタグランジンなどの炎症物質を放出します。
これらの物質が作用することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が現れます。
さらに、体内には花粉に対する抗体(IgE)が残るため、次のシーズンでも同じように症状が出やすくなります。
【症状悪化防止のための花粉対策】
生活の中でできるだけ
「花粉を避ける」ことが、症状の悪化を防ぐポイントです。
●外出時の工夫
花粉は衣服や髪に付着して家の中に持ち込まれることがあります。
・不織布マスクや花粉用メガネで鼻や目を守る
・帽子やスカーフで髪や服への花粉付着を減らす
花粉シーズンの服は、
ニットやフリースなどの毛羽立った素材よりも、ポリエステルやナイロンの表面が滑らかな服がおすすめです。花粉が付きにくく、家に持ち込む量を減らせます。帰宅時には玄関で服をはたくことも大切です。
●室内環境の工夫
室内に持ち込まれた花粉を減らすことが、花粉症対策の基本です。
・
洗濯物は室内干しで、衣服に付いた花粉を家に持ち込まない
・
掃除機で床や家具の花粉を吸い取り→濡れたモップや布で拭くと効果的
・
空気清浄機を使用して空気中の花粉を減らす
家の換気は花粉の散布が少ない早朝がお勧めです。また、花粉の粒子はとても小さいので
、掃除機は強よりも弱の設定にすると花粉が舞い上がりにくいです。
また、
洗濯物を室内干しして加湿すると花粉の舞い上がりを防ぐことができます。
【花粉症の薬】
●
飲み薬(抗アレルギー薬)
花粉が鼻や目に付くと、体内でヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質が放出され、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどの症状が出ます。抗アレルギー薬はこれらの炎症物質の
働きを抑えることで、症状を和らげます。
抗アレルギー薬は「効果と眠気」が比例していることが多いです。
ヒスタミンは炎症物質でもありますが、脳の覚醒を保つ働きもしているためです。
薬により効き具合の個人差もあるため「薬の効きが悪いな」「日中の眠気が強いな」と思ったら、ほかの薬を試すことも可能なので医師にご相談ください。
1日1回の薬は、寝る前に飲むと日中の眠気を抑えることができます。

●
点鼻薬
鼻づまりや炎症を抑える薬です。
ステロイド系点鼻薬は鼻の粘膜の炎症を抑え、くしゃみ、鼻水・鼻づまりの症状の悪化を防ぎます。
●
点眼薬
目に付いた花粉によるかゆみ・充血・涙目を抑える薬です。
「まぶたに塗るアイクリーム」と
「従来の目薬」の2つのタイプがあり、どちらも痒みの原因のヒスタミンを抑える働きをします。
アイクリームは皮膚に浸透して粘膜に作用し痒みを抑えるので1日1回で長持ちします。目薬をたくさん使う方、点眼が苦手な方、瞼まで痒い方向けです。
目薬は1日数回必要ですが、スカッとしたい方向けです。
【まとめ】
花粉症は、花粉に対して体が敏感に反応して、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどが出る春の悩みです。
症状を和らげるには、
マスクや眼鏡、服装や室内の工夫で花粉を避けること、そして
お薬を上手に使うことが大切です。
毎年症状が出やすいので、
少し早めの対策で、春を少しでも快適に過ごせるようにしましょう。
2026-05-07 09:34:27
リバウンドの正体とそれを防ぐ2つのカギ
2026年3月号
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
前回まで新しい糖尿病薬の「マンジャロ」について、従来薬のGLP-1製剤やインスリンとの違いと特徴・副作用・値段について連載してきました。
マンジャロはGLI-1、GIPの両方に作用するため「血糖値を下げる作用」のみでなく、「食欲も抑えるため体重も落ちやすい」薬剤です。
そのため
肥満の治療薬としても広く使われるようになりました。
また週に一度の注射で効果を発揮するため、患者さん自身、お薬の管理がしやすいという特徴もあります。
一方で、マンジャロをやめたら体重が元に戻ってしまう、または、元の体重よりも増えてしまうという症例も報告されて注目が集まっています。
今回はそのような
「よくある悩みと誤解」について、
なぜリバウンドが起こるのかを最新の研究から説明し、医療的に有効な
運動と食事の戦略を紹介します。
【
なぜ体重を落とすと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまうのか】
先述の通り、マンジャロなどのGLP-1・GIP受容体作動薬を使うと、体重減少効果が期待できますが、このとき体で起きているのは
「脂肪だけが減っている」状態ではありません。
人の体は
エネルギーが足りなくなると、脂肪と同時に筋肉も分解して使うという仕組みをもっています。
これはマンジャロ特有の作用ではなく、
食事制限だけで体重を落とした場合でも、同じことが起こります。
アメリカの栄養学会やハーバード大学の研究では、
①食事制限のみの減量
②GLP-1受容体作動薬による減量
①②いずれの場合も、
体重減少の約2〜3割は筋肉の減少であることが示されています。
つまり
「体重が減った = 脂肪だけが減った」とは限らないのです。
なぜ筋肉も一緒に落ちてしまうのでしょうか。
食事制限をしたり、マンジャロで食欲が落ちて食事量が減ると、体はそれを
「飢餓に近い状態」と判断します。
すると、体は生き残るために次のような反応を起こします。
・エネルギー消費を減らす
・使われやすい筋肉を分解してエネルギーにする
・基礎代謝を下げる
少しのエネルギーでも多く生きられるようにというエコモードになろうとします。筋肉は、何もしなくても多くのエネルギーを消費するため、体はエネルギー不足になると
筋肉を減らそうと働きます。
この状態でマンジャロをやめたり、食事量が元に戻るとどうなるでしょうか。
①食欲は戻る ②でも筋肉は減ったまま となります。
この状態のまま、食事量が増えて元の体重に戻った時には、同じ体重でも筋肉が減って脂肪が増えている
「代謝の悪いからだ」になっています。
このように
リバウンドすると以前よりも太りやすい状態になっています。
【マンジャロが悪いわけではない】
ここで大切なのは、「マンジャロが筋肉を減らしているわけではない」という点です。マンジャロは、
①食欲を抑える②血糖を改善する③体重減少を助ける
働きのあるとても有効な治療薬です。
マンジャロでも食事制限でもエネルギー不足が起きれば、運動をしない限り筋肉も一緒に減ってしまうので
筋肉を守る対策を一緒に行うことが大切です。
【筋肉を守る2つの鍵】
筋肉を落とさないようにする2つのカギを紹介します。
今月号で一番のメインになるのでぜひみなさん意識してみてください。
① 運動(筋トレと有酸素運動)
大きく分けて筋トレと有酸素運動がありますが体重を落とす際に
筋肉量をできるだけ守ることが、リバウンドを防ぎ、健康的な体重管理につながります。
●筋トレの役割
筋トレは、筋肉に刺激を与えて筋タンパク合成を促し、筋肉量低下を防ぎます。
★ポイント 週2〜3回、1回20〜30分、大きな筋群を中心に
スクワット(自重から) 腕立て伏せ(膝つきでもOK) プランク
運動強度は
「少し息が上がるけれど会話ができる・翌朝軽い筋肉痛がある」
くらいが目安です。
●有酸素運動の役割
有酸素運動(ウォーキング、サイクリングなど)は脂肪燃焼をサポートします。★ポイント
週150分以上(例:30分 × 5日、50分×3日)
筋トレと組み合わせることで
脂肪を落としながら筋肉を守る効果が高まります。
② タンパク質をしっかりとる
筋肉の材料はタンパク質です。
食欲が減り食事の量が減ったり、食事制限でタンパク質が不足すると、
筋肉はさらに分解されやすくなるなり、運動しても筋肉が守られにくくなります。
減量中こそ、
肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を意識してとることが重要です。
「体重1kgあたり1g前後」を目安に、
毎食少しずつとることが勧められています。
★タンパク質をこまめに摂る毎食のポイント
●朝食→牛乳、ヨーグルトをプラス
ギリシャヨーグルト 100〜150g →タンパク質10〜15g
牛乳200ml → タンパク質約6〜7g
豆乳200ml → タンパク質約7g
●昼食→うどんに卵とじをプラス
卵1個→タンパク質約6g
ほうれん草・ネギ・きのこを足すと鉄分・食物繊維も増え栄養バランスもアップ
●夕食→サラダには蒸し鶏をプラス
鶏むね肉 50g→タンパク質約11g

これでタンパク質プラス20~30gを意識した食事になります。
【まとめ】
体重が減っているときは筋肉を守ることがとても大切です。
①筋トレ ②有酸素運動 ③食事にタンパク質をプラスの3つのポイントを意識しましょう。「暖かい日は外に出る」などできることから始めていきましょう。
2026-03-15 13:05:22
新しい糖尿病薬マンジャロ 副作用と薬価を解説
2026年2月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
前回までは「インフルエンザ」のお話と「糖尿病のシックデイ」についてを特集いたしました。
そしてその前の2025年10月、11月号では、新しい糖尿病のお薬
「マンジャロ」について特集しました。インスリンとの違いなど要点を振り返ってみましょう。
・インクレチン製剤では
「体重が減りやすい」「低血糖の心配が少ない」
(アマリールなどインスリンを出す薬やインスリンとの併用時は低血糖の可能性あり)
・インスリンでは
「体重が増えやすい」「低血糖の可能性がある」
それぞれが担う
役割や目的は異なり、どちらも糖尿病治療には欠かせない大切な薬です。
今回は、①
マンジャロをはじめとするインクレチン製剤の副作用について、
気になる②
治療費用について解説していきます。
【マンジャロの副作用】
主なものは以下の通りです。
①消化器系
吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの症状がみられます。
マンジャロに含まれる「GLP-1」は、膵臓にインスリン分泌を促す働きをするほか、胃の運動をゆっくりにする作用があります。これにより血糖値の急上昇を防ぎ、満腹感を感じやすくなり、自然に食欲が抑えられます。
その一方で、
胃の動きが抑えられることで、吐き気やもたれ、便秘・下痢などの症状が出ることがあります。
副作用の発現頻度(臨床データ)
吐き気 約
10〜20% 嘔吐 約
5〜10%
下痢 約
5〜15% 便秘 約
5〜10%
多くの場合は
薬を注射した最初の数回でみられ、体が慣れる数日~数週間で軽くなることが多いです。症状が強い場合は無理せずに医師に相談してくださいね。
②低血糖のリスク
インクレチン製剤は、食事に反応して血糖を下げる仕組みのため、単独では
低血糖のリスクは少ないとされています。しかし、
インスリンやSU剤(アマリール)などと合わせて内服する時に低血糖が起こることがあります。
複数の薬で治療している場合は注意しましょう。
③気分の変化
まれに、気分が沈んだり元気が出にくく感じる方もいます。
体重や食欲の変化、薬の影響が重なることで、一時的に気分が落ち込みやすくなることがあります。
「もしかして薬の影響かも」と思ったら、無理せず医師やスタッフ、家族に相談してくださいね。薬の量を調整したり、サポートで改善できる場合があります。
どんな薬にも副作用はありますが、その症状が強い場合は調整や切り替えも可能です。
気になることは我慢せず、遠慮なくご相談ください。
【マンジャロの治療費について】
保険診療で扱われる薬の価格(薬価)は、国によって定められており、毎年4月に見直し(薬価改定)が行われています。
発売直後の新薬は、最初は少し高めに設定されますが、時間とともに調整されて
少しずつ下がる傾向です。
マンジャロは2023年に発売されたばかりなので、現在は少し高めです。
①マンジャロ1本あたりの薬価を用量別に表にまとめました。
製品名
|
薬価(円)
|
自己負担1割
|
自己負担2割
|
自己負担3割
|
マンジャロ皮下注 2.5mg
|
1,924
|
192
|
384
|
577
|
マンジャロ皮下注 5mg
|
3,848
|
385
|
770
|
1,154
|
マンジャロ皮下注 7.5mg
|
5,772
|
577
|
1,154
|
1,732
|
マンジャロ皮下注 10mg
|
7,696
|
770
|
1,539
|
2,309
|
マンジャロ皮下注 12.5mg
|
9,620
|
962
|
1,924
|
2,886
|
マンジャロ皮下注 15mg
|
11,544
|
1,154
|
2,309
|
3,463
|
※保険診療では薬価以外に、診察料・検査料・管理料などが加わります
上の表では用量が増えるほど薬価も少しずつ上がります。
保険負担の割合は患者さん自身の年齢や加入している健康保険によって1割・2割・3割に分かれます。
②次の表では
マンジャロと従来のインクレチン製剤であるビクトーザとトルリシティとの薬価、取り扱いの手間を比較してみましょう。
製剤
|
注射の
頻度
|
一本の薬価
|
4週分の
薬価
|
自己負担3割
|
自己負担1割
|
マンジャロ 2.5mg
|
週1回
|
1,924円
|
7,696円
|
2,308円
|
770円
|
マンジャロ 5mg
|
週1回
|
3,848円
|
15,392円
|
4,618円
|
1,539円
|
マンジャロ 7.5mg
|
週1回
|
5,772円
|
23,088円
|
6,926円
|
2,309円
|
ビクトーザ
|
毎日1回
|
8,434円
|
11,808円
|
3,542円
|
1,181円
|
トルリシティ0.75㎎
|
週1回
|
2,749円
|
10,966円
|
3,299円
|
1,097円
|
トルリシティ1.5㎎
|
週1回
|
5,498円
|
21,922円
|
6,598円
|
2,193円
|
※保険診療では薬価以外に、診察料・検査料・管理料などが定められています
上の表からわかるそれぞれの特徴を、①手間と②費用の2つの視点から見てみましょう
①注射薬には、
毎日打つタイプと
週に1回打つタイプがあります。
毎日タイプ(ビクトーザ)は注射の回数が多くて負担は大きいですが、
「毎日の習慣」にしやすく、続けやすいという方もいます。
一方で、週1回タイプ(マンジャロ、トルリシティ)は、
注射の手間が少なく、忙しい方にも続けやすいのが特徴です。ただし、「いつ打ったっけ?」と忘れてしまうこともあるので、
曜日を決めて固定するなどの工夫をすると安心です。
②値段の違い
また
薬の用量によって
薬価にも違いがあり、ざっくりと以下のようになっています。
ビクトーザ=トルリシティ0.75㎎<マンジャロ5㎎
トルリシティ1.5㎎=マンジャロ7.5㎎
マンジャロは「GLP1+GIP製剤」で従来のGLP1薬剤と比較して、
「血糖値を下げる作用」「体重を減らす作用」がより効果的と言われています。
それぞれの薬の効果には個人差があるため、血糖、体重のほかに血液データ、動脈硬化の検査を含めて医師が診断して最適なお薬をご案内していますのでお任せくださいね。
③ 医療費が高くなったときの対策(医療費控除)
糖尿病の治療では、薬代のほかにも定期検査や通院などで出費が重なることがあります。
もし1年間の医療費の合計が10万円(または所得の5%)を超えた場合は、
「医療費控除」という制度を利用できます。相談窓口は税務署・市町村です。
【まとめ】
マンジャロは、GLP-1とGIPの両方の作用をもつ新しい糖尿病薬で、血糖コントロールと体重減少の両方が期待できます。
一方で、吐き気や便秘などの副作用が出ることもありますが、多くは時間とともに落ち着きます。
週1回の注射で続けやすい反面、用量によって費用が変わるため、無理のない治療計画が大切です。
医療費控除などの制度も上手に利用して、治療を続けやすくしましょう。
2026-02-09 09:38:53
糖尿病シックディの対応
2026年1月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
ますます寒くなってきておりますが、みなさま体調はいかがお過ごしでしょうか。
今回は糖尿病の方が体調を崩してしまった時、どのように対応したらよいか
をまとめていきます。
【糖尿病のシックデイ対応】
糖尿病の方にとってインフルエンザや胃腸炎などで体調を崩す「シックデイ」は
血糖値や水分バランスが崩れやすく、
「高血糖」「低血糖」「脱水」「ケトーシス(ケトン体の増加)」のリスクが高まります。
「シックデイでは体にどんな変化が起きるのか?」
「日常では具体的にどうしたらいいのか?」
今回は日本糖尿病学会・主要国際ガイドラインの考え方に沿って、わかりやすく解説します。
【シックデイとは?】
インフルエンザや胃腸炎などの感染症で、発熱・下痢・嘔吐・食欲不振があると、体の中ではさまざまな変化が起こります。
まず、食事や水分がとれない状態が続くと、
血糖コントロールが難しくなり、脱水も進みやすくになります。
さらに感染により炎症反応が起きると、“
ストレスホルモン”(カテコールアミン・コルチゾール)が増え、血糖を上げる方向に働きます。この時、体はエネルギー源として脂肪を分解し、ケトン体が増えやすくなります。
つまり、
① 食べられずエネルギー不足になること
② 炎症によるストレスホルモンの増加
この2つが重なることでケトン体が増え、体は酸性に傾きやすくなります。
さらに水分がとれずにいると
脱水が進み、尿量も減ります。
尿として排泄されるはずのケトン体が体の中にたまってしまい、悪循環に入り、血糖コントロールはますます難しくなります。
こうした背景から、シックデイは
高血糖・低血糖・脱水のリスクが一気に上がる状態なのです。
【自宅でできる対応】
① 血糖値の測定と尿ケトンのチェック
食事がとれない時や体がだるい時は、指先で血糖値を測り、尿の試験紙でケトン体をチェックしてみましょう。
血糖値が350㎎/dl以上が続いていたり、尿ケトンが出ていたら早めに受診をおすすめします。
血糖測定器、尿の試験紙は、インターネットでも購入することができます。
(インスリンや注射薬を処方されている方は保険適応で院内貸出を行っています。)
② 水分をこまめに飲む
ガイドラインでは
「30分に100ml」が目安です。
コップ半分〜1杯を30分〜1時間かけてゆっくり飲みましょう。吐き気がある方はスプーン1杯ずつでOKです。
基本は
「湯冷まし・水・麦茶・ほうじ茶」。
脱水が強いときは
OS-1、
食事がとれず低血糖気味のときは
ポカリスエット・アクエリアスがおすすめです。
高血圧でも、短期のシックデイなら OS-1 の塩分はほぼ問題ありません。
飲み物を効果別に一覧にしてみました。
飲み物
|
糖分
|
塩分(電解質)
|
脱水改善
|
血糖への影響
|
OS-1
|
少なめ
|
多い
|
◎
|
上がりにくい
|
ポカリ
|
多い
|
中
|
○
|
上がりやすい
|
アクエリアス
|
ポカリより少なめ
|
中
|
○
|
やや上がる
|
水・湯冷まし
|
なし
|
なし
|
△
|
上がらない
|
麦茶・ほうじ茶
|
なし
|
ほんのわずか
|
△
|
上がらない
|
●迷ったらこうしましょう
血糖が高い(250〜300以上)場合は
→ おすすめはOS-1、水・湯ざまし・麦茶・ほうじ茶、
避けるべきはスポーツドリンクやジュース、炭酸飲料
血糖が普通(100〜)場合は
→ OS-1、水・湯ざまし・麦茶・ほうじ茶、食事少ない日はスポドリ少量
血糖が低い/食べられない時
→ ポカリ or アクエリアスを水や麦茶と交互に飲む
脱水の場合(尿がでていない時)
→ 迷わず OS-1(最優先)
③ 自分の薬で“中止すべきもの”を把握
以下は一般的な方針(ガイドライン準拠)です。
シックデイ時の血糖変動は個人差が大きいので、処方されているお薬は事前に主治医と調整の仕方を決めておくことをおすすめします。
自己判断で中断しないようにしましょう。
●インスリン
インスリンは種類によって対応が異なります。

トレシーバ、グラルギン、ランタスなどの
長時間効くタイプの基礎インスリンは中止せずにいつもの量を続けましょう。ただし、夜中、朝食前に低血糖が続いたら少しだけ下げましょう。
食事が食べられないときは、リスプロ、ノボラピット、アピドラなどの超速攻型のインスリンの量を減らして調節しましょう。
上の図を参考に「食後2時間の血糖値」をみて調節してくださいね。
●アマリールなどのSU薬、グルファスト
インスリンを出させるお薬なのでて食事がとれないときに内服すると低血糖のリスクが増えます。食事の量により調節しましょう。
前のページのインスリンのところで示している図と同じが目安です。
食事の量がいつも通り→いつもの量
食事4~7割→いつもの半分の量
全く取れない場合→中止
●メトホルミン
メトホルミンはとても良い薬で、多くの人に安全に使われていますが、
下痢や嘔吐などの消化器症状が中心であれば中止となることがあります。
重い脱水や、強い感染・高熱・吐き気で食べられない状態になると、体の中で薬が処理されにくくなることがあります。
そのような脱水の状態で続けて飲むと、ごくまれですが
“乳酸アシドーシス”の副作用が起こることがあります。
体調が悪いときだけ、一時的にお休みすることを推奨しています。

そのほかの糖尿病のお薬は基本的に継続して飲んで大丈夫です。
【まとめ】
・シックデイは高血糖・低血糖・脱水・ケトン体が体にたまりやすい状態です。
・自宅ではこまめな水分補給を心がけましょう。湯冷まし・水・麦茶・ほうじ茶を中心に症状に合わせてOS-1やスポーツドリンクを取り入れてください。
・血糖測定をいつもよりこまめに行いましょう。
・食事は無理せずにおかゆやうどんを食べて薬を調節しましょう。
・症状が強い場合は無理せずにすぐに受診してくださいね。
2026-02-09 09:31:47
今年のインフルエンザの流行
2025年12月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
はじめに
前回まで、糖尿病の新しい治療薬「マンジャロ」について連載してきましたが、今年はインフルエンザの流行が例年より大幅に早く、地域でも学級閉鎖が相次いでいます。そのため今月は臨時で「インフルエンザ特集」をお届けします。
糖尿病の方にとって、発熱や感染症は血糖値が上がりやすくなるだけでなく、食欲低下により低血糖を起こすこともあり、"いつもの通りではない状況=シックデイ" の対応が必要となることがあります。体調を崩したときに慌てないよう、この機会にしっかり予習しておきましょう。
次号では「糖尿病のシックデイ対応」について、2月号では元に戻って
「マンジャロ③ 副作用と薬価」について詳しく解説します。
【インフルエンザの流行状況】

上のグラフはインフルエンザの流行状況を表しています。
今年のインフルエンザは、例年より
1〜2か月早い流行 となっています。
通常は12月頃から増え始め、1月〜2月にピークを迎えますが、今年は秋から急激に感染が拡大しました。
特に関東では、東京で流行警報が出され、栃木県でも学校で学級閉鎖が相次いでいます。同じように、当院でも感染者が急増している印象です。
A型インフルエンザが落ち着いてくるとB型が流行する"二峰性の流行"がよく見られるため、まだ接種を受けていない方は早めのワクチン接種をおすすめします。
【宇都宮市のインフルエンザワクチン助成】
宇都宮市では以下の方を対象に補助があります。
① 宇都宮市在住の65歳以上の方
② 接種時に60〜64歳で、特定の障がい(心臓・じん臓・呼吸器の高度障害、またはHIVによる免疫障害)を有する方(身体障がい者手帳1級程度)
③ 満1歳児
助成額は①・②の方→
自己負担 1,500円、③の方→
1,000円の助成です。
※その他の市町村にお住いの方は、お住まいの自治体でご確認ください。
【感染症の流行】
栃木県ではインフルエンザ以外にもマイコプラズマ肺炎、溶連菌、RSウイルス感染症が流行しています。
特にマイコプラズマ肺炎は去年の2倍近く流行しています。
インフルエンザと症状は似ていますが、乾いた咳が長引くのが特徴です。
他にも県内の流行マップをみると、溶連菌、RSウイルスなども流行していますので、感染対策をしっかりとしましょう。
【感染対策の基本】
多くのウイルス感染症は、以下の2つの経路で広がります。
1. 飛沫感染
感染者の咳・くしゃみ・会話で飛んだ飛沫を吸い込んで感染します。学校や職場など人が集まる場所で広がりやすいのが特徴です。
●対策
・症状のある人は必ずマスクを着用
・咳エチケット(口元を袖で覆うなど)
・看病時は双方のマスク着用が望ましい
健康な人のマスク効果は限定的と言われますが、飛沫を浴びるリスクや手指からの接触リスクを減らす効果があります。
2. 接触感染
くしゃみや咳で手に付いたウイルスが、ドアノブ・つり革・スイッチなどに付着し、それを触れた人の手を介して口・鼻の粘膜から感染します。
●対策
・手洗い(石けんと流水で15秒以上)
・アルコール消毒(60%以上)
冬は乾燥でウイルスが長生きしやすくなるため、日頃からのこまめな手洗いがとても効果的です。
【自宅に感染者がいる場合】
家庭内での感染拡大を防ぐポイントは次の通りです。
●湿度管理
ウイルスは乾燥状態で空気中に漂いやすくなります。
・室内湿度
50〜60% を目安に保ちましょう。
・加湿器がない場合は濡れタオルの室内干しも有効です。
特に暖房を使用しているときは乾燥しやすいので、加湿器とセットで使用すると良いでしょう。
●タオルを分ける
手洗い後のタオルを共有すると接触感染しやすくなるため、必ず別々のタオルを使用しましょう。
●換気
冬は閉め切りになりやすいですが、ウイルス濃度を下げるために定期的な換気が重要です。
【発熱したと思ったら(受診の流れ)】
猪岡内科では院内感染を防ぐため、発熱のある方には以下の対応をお願いしています。
- 院内へ入らず、車内からお電話(028-664-3800)ください。
- 診察券をご準備のうえ、車内でマスクを着けて待機してください。
- 症状をお伺いするので、電話がかかってくるのをお待ちください。
- 医師・スタッフが車まで伺い、検査・診療を行います。
糖尿病の方は、体調不良の時には血糖値が大きく変動しやすいので、早めに相談してくださいね。
次回は
「糖尿病のシックディ」についてまとめたいと思います。
2025-12-09 10:06:09
新しい糖尿病薬 マンジャロ②
2025年11月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
前回は糖尿病の新薬「マンジャロ」について特集しました。
インクレチンである「GLP-1とGIP」という2つのホルモンの働きを活かした新しい注射糖尿病の治療薬で、血糖値の改善と体重減少の両方に効果が期待できるというお話でした。

それぞれのホルモンの特徴は、
・GLP1単体では胃の動きをゆっくりにして食欲を抑えるため体重が減る
・GIP単体では食欲が増えたり、脂肪をため込む側に働く
まるで、プラスとマイナスのような真逆の働きをしているように見えるホルモンですが、この2つが合わさって「マンジャロ」となると、
“プラスマイナスゼロ”とはならずに、
より強力に血糖値を下げて、体重も減らす作用が期待できるという不思議な特徴があります。
それはなぜか?というところはまだ解明されていませんが、とても興味深いですね。
今回は、同じ注射薬でも混同されやすい「インスリン」と「インクレチン製剤」の違いを解説します。
【インクレチンの振り返り】
インクレチンは
食事をとったときに小腸から分泌されるホルモンで、膵臓に「インスリンを出して!」と伝え、食後の血糖値の上昇を抑える大切な役割を持っています。
インスリンは自分の血糖値の状態に関係なく、注射をした瞬間から血糖を下げる動きをするため
常に低血糖の心配があります。
一方で、インクレチンは食事に反応して自動調節できるため、
低血糖の心配がありません。(SU剤、インスリンとの併用で低血糖の可能性はあります)

「食事」に合わせて自動調節できて低血糖の心配もないのなら、「インスリンの注射薬」ではなく全部「GLP1製剤」の方がいいのでは?と思う方もいると思います。
しかし、実はインスリンとインクレチンは“似ているようでまったく異なる役割を持っているため、その違いを解説します。
【インスリンについて】
インスリンは血糖値が高い時に刺激を受けて膵臓のβ細胞からでます。
そして、血液の中にある糖を細胞の中に取り込んで血糖値を下げるという働きをしています。

注射薬のインスリンでは、
①すぐに効き始めるタイプ(超即効型:リスプロ)
②1日かけてじっくり効くタイプ(持続型:グラルギン)
①②が混ざったもの、中間型など、種類ごとに決まった「
薬の作用時間」
があります。
薬の強さは
「インスリンを打つ単位の量」によって決まります。
お米、パンなど血糖値を上げやすい食べ物(GI値)はありますが、「インスリン1単位でどれくらい血糖値を下げる効果があるか?」というところでは個人の吸収度合い、薬を打つ位置によってもバラバラです。
それらを合わせ
た「日々の血糖コントロール」は医師の指示のもとに
普段の血糖値やその時の血糖値を頼りにしながら、低血糖にならないように
「今日はいつもより食事の量が少なそう」や「飲み会があるから血糖値が上がりそう」など
患者さん自身の経験や感覚にある程度ゆだねられます。
【インクレチンとインスリンの違い】
インスリンは
「今の血糖値が高い低い」という体側の事情には左右されずに、注射をしたインスリンの量の分だけ、血糖値を下げてくれる効果があります。
これと比べると、インクレチン製剤は週1の注射で済み、低血糖の心配もなく食事の刺激でオートマチックに反応してくれるので画期的に見えますね。
しかし、インスリン治療はとても大切な治療です。
【なぜインスリンが大切か?】
1型糖尿病や2型糖尿病の末期の患者さんでは、自分自身のインスリンがほとんど出ていません。
インスリンがでていない状態なので、GLP1製剤のように「インスリンを出してください」という指令だけでは血糖値を下げることはできず、不足しているインスリンを補う治療が大切になります。

糖尿病の方でご自身のインスリンがしっかりと出ているか?と気になる方は
血液検査の項目の
Cペプチドまたは
IRIで把握することができるので声をかけてくださいね。
【インクレチンとインスリンの併用】
とても大切な治療のインスリンですが、「インスリンの量が増えると体重が増えてしまう」という懸念点があります。
本来はエネルギーとして使われる糖分がインスリンを打つことでしっかりと細胞の中に取り込まれます。体はそれでエネルギーを利用することができますが、余ったエネルギーは脂肪としてたまりやすくなるためです。
体重が増えるとインスリンの量も増えてしまいますが、インスリンとインクレチン製剤の両方を併用すると、血糖値が下がる、体重が減るという面で効果が期待できます。
当院で効果のあった1例を紹介します。
使用した薬剤 マンジャロ 5㎎
前 4カ月後
HbA1c 7.8% → 6.9% (-0.9%)
体重 98.9㎏ → 87.9㎏ (-11㎏)
BMI 35 → 31
インスリンの使用量 140単位 → 95単位
これだけを見ると、体重が11㎏も減り、HbA1cも0.9%減り、インスリンの量も45単位減っているのでとても魅力的ですね。
この患者さんにはマンジャロがよく効果を示しているようにみえます。
しかし、個人によっては全く体重の変化が見られない場合、副作用が強く出てしまう場合もあります。
このように魅力的な薬剤でも作用・副作用のあらわれ方には個人差が大きい印象です。
副作用や費用については次回解説します。
2025-12-09 09:53:58
新しい糖尿病薬 マンジャロ
2025年10月
猪岡内科
糖尿病療養指導士 中村郁恵
糖尿病の治療は、この10年ほどで大きく進歩してきました。
たとえば、飲み薬の種類が増えたり、週に1回の注射薬(GLP-1製剤)が登場して、血糖値だけでなく体重や心臓・腎臓にも良い影響があることがわかってきています。
生活習慣の工夫は治療の基本ですが、それだけでは血糖値のコントロールがむずかしいこともあります。
そんなときに役立つ薬の選択肢が広がっており、その中でも最近「マンジャロ」という新しい薬が登場して注目されています。
今回は、このマンジャロについて、従来の薬との違いや働き方を、わかりやすくご紹介していきます。
【マンジャロとは】
マンジャロとは新しく発売された糖尿病の治療薬で、
週に1回、皮下に自己注射を行います。
インスリンの「ヒューマログ」でもおなじみのアメリカにあるイーライリリー社によって開発された「
インクレチン」といわれる
GIPとGLP-1が両方含まれている薬です。
日本国内では2型糖尿病に対する治療薬として2023年に承認された新しい薬剤ですが、特に肥満傾向があり、従来の薬で血糖管理が思わしくない方に適しています。

【従来の糖尿病薬との違い】
従来のGLP-1製剤といわれる糖尿病治療薬は「
GLP-1」のみに働きかけていました。
GLP-1受容体作動薬である「ビクトーザ」「オゼンピック」「リベルサス」は
血糖値を下げる薬としてスタートしましたが、今では血糖改善に加えて
心臓・腎臓の保護もあることから[
additional benefits 追加効果] が期待できる薬としての地位を確立しています。
そのため、2型糖尿病の患者さんの
長期的な健康にも役に立っています。

そして、新薬である「マンジャロ」は「
GLP-1」のみでなく「
GIP」にも作用することが特徴です。この2つの作用により、
より強力な体重減少と
血糖値の改善を見せて驚くほどの効果を見せています。
GLP-1と
GIPは合わせて
インクレチンと呼ばれています。
【インクレチンとは】
インクレチンは、
食べ物を消化する腸から出るホルモンです。
食事をしたり、糖分のある飲み物を口にすると腸からインクレチンが分泌されて、血糖値を下げる働きのあるインスリンを出す膵臓のβ細胞に「そろそろインスリン出して」と伝えます。
食べるサインによって体が自然に血糖をコントロールできるように助けてくれるような仕組みです。

インクレチンとして今認められているのは
「
GLP-1=グルカゴン様ペプチド
」と
「
GIP=グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
」の2つです。
【GLP-1とGIPって、なにが違うの?】
GLP-1とGIPは、どちらも「インクレチン」と呼ばれるホルモンです。
インクレチンは
食事をとったときに小腸から分泌されるホルモンで、膵臓に「インスリンを出して!」と伝え、食後の血糖値の上昇を抑える大切な役割を持っています。
● GLP-1の特徴
・膵臓のβ細胞に働き、
インスリン分泌を促す
・膵臓のα細胞に作用し、
グルカゴン(血糖を上げるホルモン)を抑える
・胃の動きをゆっくりにして、食後の血糖上昇を抑える
・脳の食欲中枢に働き、
食欲を抑える
そのため、ビクトーザ、オゼンピック、リベルサスなどのGLP-1製剤は、
血糖値を下げるだけでなく、体重減少効果も期待されています。
多くの臨床試験で、HbA1cを1〜1.5%ほど下げ、体重も3〜5kg減ることが確認されています。
●GIPの特徴
・同じく膵臓のβ細胞に作用して
インスリン分泌を促進
・脂肪細胞に働き、脂肪をためこむ
・骨や脳にも作用し、エネルギー代謝を調節する働きの可能性
・GIP
単体だと食欲を増進させるがGLPと合わさると食欲減退に働きかける
ただし、過去の研究では、2型糖尿病の人ではGIPのインスリン分泌促進効果が
かなり低下していることが分かっており、
「効果が弱い」「肥満を助長する可能性がある」として、長い間、
GLP-1ほどは研究されてきませんでした。
(参考:Nauck et al., Diabetologia. 1993; 36(8): 741–744)
【なぜGIPが今になって見直されているのか?】
近年の研究で、
GLP-1とGIPを組み合わせると、それぞれの効果が補い合い、より大きな効果が出ることがわかってきました。
GIP単体だと食欲増進させる働きがありますが、GLP1製剤と合わせることで食欲が抑えられます。
とくに、マンジャロの研究(SURPASSシリーズ)では、以下のような結果が報告されています
項目
|
GLP-1製剤
|
GLP-1+GIP薬
|
HbA1cの平均改善値
|
約 -1.9%
|
約 -2.6%
|
体重の平均減少量
|
約 -6kg
|
約 -11kg
|
吐き気などの副作用
|
ややあり
|
GIPの影響で軽減される傾向
|
・血糖値の改善
GLP-1製剤でもHbA1cは下がりますが、GLP-1+GIP薬ではさらに大きく、平均
約2.6%低下しました。(GLP-1製剤は
約1.9%)。
・体重減少効果
GLP-1製剤で
約6kg減少、GLP-1+GIP薬では
約11kg減少と効果が大きく示されました。
・副作用の違い
GLP-1製剤で多い吐き気は、GLP-1+GIP薬では GIPの作用で軽くなる傾向です。
このように、GIPはGLP-1と組み合わせることで、血糖値・体重・副作用の面でより良い効果を示すことがわかってきました。
かつてGIPは「効きにくい」「太りやすい」と思われていましたが、マンジャロの成果により “GLP-1と一緒なら有効” という新しい評価が広がっています。
【まとめ】
マンジャロは、GLP-1とGIPという2つのホルモンの働きを活かした新しい糖尿病治療薬で週1回の注射で、血糖値の改善と体重減少の両方に効果が期待できます。治療法は一人ひとりに合わせて選ぶことが大切ですので、気になる方は主治医にご相談ください。
2025-10-29 11:24:16